さて真田丸とパペットホームズの関連性、第15回「秀吉」は、さほどこれといったものは見つからなかったのですが、しいて言えば、信繁が手紙を書いていて、きりに「ほっといてくれ」というのがホームズ的でしょうか。しかしきりはよくお菓子とか餅を食べていますね。彼女にしてみれば、信繁のそばにいられる今が嬉しくて仕方ないというところでしょうか。やはりきりは、パペホでいえばアガサなのかも。
ところでこの回はパペットホームズのみならず、原作ホームズや他のミステリーにも共通するシーンが登場します。それはずばり
「茶室の心理戦」 です。上杉景勝と信繁を茶室に呼ぼうといった秀吉ですが、何か魂胆があるなと思っていたら、果たせるかな、これは景勝の覚悟の度合いを見るためのものでした。
ミステリーに「
クローズド・サークル 」という言葉があります。何らかの理由のために、外界から隔絶された空間のことで、その中で事件や殺人が起こるという展開になるわけで、ある種「密室殺人」にも通じるものがあります。『そして誰もいなくなった』などはその典型でしょう。ホームズ物でも『まだらの紐』や『恐怖の谷』は密室物といえそうです。無論『真田丸』はミステリーではありませんが、茶室の中のそれぞれの位置、他者からの視線の意識という点において、かなりその描かれ方がユニークです。
この中の茶室(三畳間)のシーンでは、一方の端に宗匠(千利休)、真ん中に秀吉、もう一方の端に景勝と信繁が座っています。狭いこともあり、信繁は入り口近くに身を縮めるようにして座っています。宗匠と景勝、信繁は向かい合っており、その間の秀吉は、垂直方向というか、双方を視野に入れる格好になっています。つまり景勝は、宗匠、秀吉、そして信繁の視線を三方向から受ける格好になっているわけで、これはなかなかのプレッシャーではないでしょうか。恐らく景勝は、この茶室に入る時までは、上杉家のためと兼続に進言されたものの、まだ秀吉に臣従するかどうかを決めかねており、結局茶室の中の、プレッシャーに晒された短い時間で意を決したとも取れそうです。
今までの戦国大河でも、秀吉あるいは利休の茶室は数多く登場しましたし、風流人たらんとする秀吉の姿勢や、茶器の趣味などを現してはいましたが、こういった形で茶室が描かれるのは、今回が初めてではないかと思われます。三谷さんは、恐らくは舞台が多いせいもあって、こういう表現を持ち込んだのでしょう。あるいは舞台のみならず、『古畑任三郎』でもこのような描写があったかもしれません。
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