では、第11回「祝言」のあらすじに行きたいと思います。敢えてサブタイトルをつけるのであれば、
「真田昌幸になれなかった男、室賀正武」 でしょうか。祝言も描かれますが、その裏で繰り広げられる暗殺劇や、きりと梅の葛藤の方に重きが置かれています。
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室賀正武が浜松城に呼び出された。まず上田城の建設を請け負っている家康が証文を出し、海士淵の城(上田城)は昌幸だけのもので、国衆のためではないと焚きつけ、また本多正信は、早く信幸が家督を継いだという知らせを聞きたいものだと言って、遠回しに暗殺を命じる。それを密かに昌幸の弟信尹が見ていた。その頃信繁は、側室を迎える際は祝言を上げないことになっているものの、何とか梅とは祝言を執り行いたいと思い、その場にいた三十郎と佐助に力添えを頼む。
その後信繁は、昌幸と信幸に祝言のこと、そして梅が身ごもっていることを知らせた。信幸は口吸い(キス)はいつかと尋ね、更に子供までいることを知らされて、妙に感心してみせる。一方で高梨内記は、娘のきりが側室として迎えられないことに、驚きを隠せずにいた。また母の薫(山手殿)、祖母とりにも信繁は結婚のことを知らせ、とりは喜んでくれる。しかし信繁の嫁には、京からしかるべき家柄の女性をと考えていた薫には、相手が梅というのがどうにも不満だった。
信繁は薫を説得しようと、三十郎に花を取って来させ、また佐助を天井裏に潜ませて、南蛮の香油を焚かせる。しかし薫の気持ちがほぐれて来たところで、香油が垂れてしまい、すべてを見破られてかえって薫を怒らせてしまう。そんな薫に昌幸は、しかるべき家の娘は正室として迎えるように諭すが、薫は梅との祝言には出ないと主張し、祝言は取りやめとなった。そんな梅にきりは鯉を持ってくる。努めて平静を装っているきりだが、信繁から改めて結婚の言葉を聞かされ、たまらず外に出て号泣する。
そこで信幸がやって来て、祝言は取りやめになったと告げる。しかし梅は、ならば今夜ささやかな宴を開こうと提案し、鯉を料理して酒盛りが行われる。その後上田城も落成し、室賀が祝いに訪れる。しかし昌幸は、室賀が浜松城にいたことを信尹から知らされており、信幸は鰻の話を持ち出して、最近浜松に行ったかどうかを探る。室賀は向きになって否定するが、それを見た出浦昌相は、室賀の浜松行きを確信する。
その室賀は再び浜松に赴き、自分にはとてもできないと泣きつくが、本多正信は選りすぐりの者を2人つけるので、任務を遂行するように仕向ける。方や昌幸、出浦、そして内記たちは、室賀が訪れた真意を探る。出浦は室賀の狙いが昌幸暗殺にあると気づき、逆にこちらから室賀を暗殺して、他の国衆たちへの見せしめにすることを計画する。そのためには信繁に祝言を上げさせ、それに室賀がやって来る様におびき寄せるのが最良の策だった。しかし信幸は、祝言を暗殺に利用することに反対し、せめてことが終わるまでは、信繁には言わないように懇願する。
祝言の日取りが決まり、室賀にも招待状が送られた。薫はやはりその場に姿を見せようとはせず、またきりとこうは、梅の支度を手伝っていた。そこへ信繁がやって来たため、きりは例によってあれこれちょっかいを入れるが、梅はそんなきりに、2人だけにしてくれと頼み、更に、自分にはきりの気持ちはわかるからと言う。梅に痛いところを突かれたきりは、腹を立てながら部屋を去り、客のもてなしをする。また信幸の妻こうは夫から、宴が始まったら信繁を広間から出さないように言われる。
昌幸は酒席を立ち、自室での囲碁に室賀を誘う。また信幸、出浦、そして内記もその場から姿を消し、室賀暗殺に備えてそれぞれの持ち場についていた。酒席が盛り上がり、こうが信繁を出すまいと、病を推して雁金踊りを踊る中、きりはそこを抜け出して、信幸が控える近くの廊下に座り込んでいた。信幸はきりに、その場を離れるよう小声で促し、ついには手を取って連れて行こうとする。一方昌幸は碁を打ちつつ、室賀に徳川との密約について突っ込み、更に自分の下につけというが、室賀は人としても武士としてもお前には劣らないと返す。しかしその時には、随伴者2人は出浦が既に手に掛けていた。
室賀は短剣を碁盤の上に置き、昌幸の家来にはならないと囁いた後で、足元に仕込んだもう1つの凶器で昌幸を狙う。しかし出浦が素早く飛び出して、信幸共々室賀を殺害する。ひたすら碁盤のみを見る昌幸。そしてきりは目の前の修羅場に唖然とし、急いで信繁を連れ出してこの惨状を見せ、「それでいいの…」と口にする。昌幸は、これは自分の計画で、真田家のためには仕方ないと話す。信繁は、その父の計画を見抜けなかった自分に腹を立て、梅の手前怒れなかったことを信幸に告げるが、信之は、悩みつつも前に進むしかないと弟に答える。
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「黙れこわっぱ!」の室賀さん退場回です。やはり祝言を挙げていいの言葉に信繁は喜びますが、その裏に隠された策までは見抜けなかったようです。しかし息子の婚礼の場を、暗殺に利用する神経というのもまた相当なものです。一領主が大名になるまでに、乗り越えるべき様々な痛みの1つといえますが、しかしこれだけではまだ終わらないようです。
一方できりと梅のキャラの違いもはっきりして来ました。きりはどちらかといえばざっくばらんですが、梅は結構したたかな一面もあるようです。結局きりは、やはり高梨内記の娘ということもあるのでしょう。第3回「策略」の、隣村の農民との戦いの時のキャラの違いが、ここではっきりしたようにも見えます。そういえばあの時の相手は、室賀領の農民でした。きりがうるさいのは確かに事実なのですが、あるいはそう思わせることこそ三谷氏の策であり、なぜ彼女がうるさく振舞うのかも、同時に考えてみる必要があるのかもしれません。
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