『風林火山』と『武田信玄』の(第四次)川中島の戦いを観較べてみて思ったことですが、やはり前者は山本勘助が主人公であるだけに、彼が命を落とす川中島は正にクライマックスであり、かなり重きが置かれています。一方後者も確かに重きは置かれていますが、こちらは武田信玄の生涯を描いた作品であるため、川中島はその信玄に取って重要な戦いの一つという描かれ方です。
もちろん原作の違いもあります。『風林火山』は井上靖氏ですが、『武田信玄』は新田次郎氏です。また、隻眼で片脚が不自由な山本勘助は『風林火山』のもので、『武田信玄』の勘助は隻眼でも脚が不自由でもなく、しかも剃髪もしていません。しかも『武田信玄』で勘助を演じているのは西田敏行さんですから、『風林火山』の内野聖陽さんとはかなりイメージが違って見えます。
ところで
『真田丸』の歴史解説 では、正に『風林火山』にも登場する戸(砥)石城と真田幸隆について、わずかではありますが触れられています。恐らく冒頭で、文中の「劣勢の武田」が描かれるのでしょう。ちなみに武田信玄の生涯における唯二の敗戦というべきものが、この戸石城を巡る
戸石崩れ と
上田原の戦い です。信玄は上田原の戦いで、宿敵村上義清を討とうとしますが果たせず、家臣の板垣信方と甘利虎泰を相次いで失います。この時の雪辱の意味合いがあったのが戸石崩れです。村上の城である戸石城の攻防戦ですが、武田方が敗北を喫したことからこのように呼ばれています。
しかし後に真田幸隆がこの城を攻め、村上は越後の長尾景虎を頼ることになって、これが川中島の戦いの遠因となります。井上氏の『風林火山』では、時系列に誤りがあり、戸石崩れの方が先になっていますが、大河ドラマでは修正され、上田原の戦いの方が先に描かれています。また、いずれの山本勘助も川中島を前に天候絡みの情報収集を行いますが、『武田信玄』の勘助が農夫に訊くのに対し、『風林火山』の方では、原虎胤が匿われている小屋の老婆に訊くという設定になっています。
ちょっと「砂かけ婆」を連想する、緑魔子さん演じるこの老婆は、何やら怪しげな汁を煮込んだり、小屋の中にムカデでできた薬?があったりと、いささか不気味で、それゆえに意外な能力がありそうな雰囲気を漂わせています。しかしその反面、情報に対して報酬をしっかり受け取り、しかも勘助のみならず、上杉方の宇佐美定満からも報酬を受け取っている、結構ちゃっかりした人物でもあります。
ところでこの『風林火山』、当初は49回予定だったそうですが、視聴者の要望により、1回分追加されて50回になったといわれています。今まで大河の短縮や打ち切りはまだありませんが、追加というのも、また 珍しいものです。
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