久々に『相棒』です。
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かつてヤクザの男を殺した情婦の月本幸子は、模範囚として早期の出所を果たし、ハローワークで仕事を探していた。条件が悪くても構わないという彼女に、職員は清掃会社の仕事を紹介する。近況を特命係に手紙で知らせる幸子、杉下とヒマ課長角田はそれを覗き込むが、神戸は幸子と面識が無かった。しかしその後幸子から、誰かから尾行されているという連絡が入る。
幸子は清掃会社の仕事ぶりが認められ、会社の得意先である間宮家の担当となった。この間宮家は、大手外食チェーンを経営しており、その後社長の間宮から家政婦になるよう勧められた。しかも、作った料理をほめられ、会社のメニューとして採用された。その後もいくつか採用され、そのたびにボーナスが増額して行った。しかも住居は高級マンション。こんなにとんとん拍子にことが運んでいいものか、逆に不安がる幸子。しかも間宮から求婚までされてしまう。
神戸は考え過ぎだと言い、杉下は、能力が正当に評価されているだけだと言う。しかし幸子がそう考えるのには理由があった。まず服装に関しては、黒髪を後ろで束ねて、黒っぽい服装で香水無しという決まりがあった。また、間宮の書斎には立ち入らないように言われていた。幸子はそれが腑に落ちないらしいが、杉下が何も言わないのを見て、彼がすっかり変わってしまったと思い込んでしまう。また実際杉下は、最近何か気乗りがせず、調子がよくないと感じていた。
その後、幸子はクローゼットに隠してあったある写真を見つける、それは幸子の前任の家政婦、串田由紀と間宮の息子、瑞樹の写真だった。瑞樹はなかなか幸子に懐こうとしていなかった。そして由紀は、今は行方が分からなくなっているらしい。しかも額の裏には「たすけて」という文字が描かれていた、幸子は事件性を感じ取り、杉下に連絡する。そして3人が出て行こうとした時、マンションの隣人である大崎智美が荷物を受け取っていた。それは、千住信用金庫が上客に贈っている梅干しだった。しかし、そのマンションの近辺には千住信用金庫の支店は無かった。
間宮の家に着いた一行は、間宮の父清次郎の書斎に入り、畳が不自然に浮いているのを見つける。そこで床下を探すものの、結局何も見つからなかった。杉下は間宮家の飼い犬を見て、「タッキー」と声をかけるが、実はその犬の名はロッキーだった。瑞樹がいたずらをして、ロに線を書き加えて田の文字にしていたのだった。しかし有力な手掛かりは得られない。杉下と神戸は、その後間宮を会社に訪ね、串田由紀と幸子の服装について尋ねるが、由紀は行方を追っていること、そして黒っぽい服装は、由紀のそれに似せることで、瑞樹に親しみを持たせるためだと話した。しかもその日、幸子はまた尾行に気付く。
翌日幸子は、ロッキーが庭の土を掘り返しているのに気付く。その下には何やら箱のようなものがあり、中からは手紙や串田由紀の写真が見つかった。帰宅した瑞樹にこの箱について尋ねる幸子。瑞樹は、自分がいたずらしたから出て行ったのだと話す。幸子は自分で調べてみることにして、瑞樹に口止めし、箱の中の書類から「天体構造研究所」なる組織を知る。そこに体験入学のために赴き、エイブラハムと名乗る藤原の指導のもと、深呼吸をしたり体を動かしたりする。この研究所は、宇宙学と様々な宗教をミックスしたものを教義としていた。しかも、串田由紀はここの会員だった。
幸子は意を決して、捜査一課の伊丹に調査を依頼する。何か大きな事件が背後にあるに違いない、でも特命では当てにならないと彼女は信じていた。そしてそこでわかったのは、藤原はかつて様々な問題を起こしたカルト教団「太陽のしもべ」のメンバーだったのだ。念のためにと、所在位置を知らせるブザーを渡される幸子。その幸子は、ついに例の書斎に足を踏み入れる。そこには天体構造研究所のパンフレットや、女性失踪事件の切り抜きをまとめたスクラップブックがあった。間宮はなぜ、このようなことをしているのか。彼は天体構造研究所のメンバーなのか。
幸子は間宮に話があるといわれる。幸子自身も、この件で間宮に質問したいことがあった。差し向かいで座ってワインを勧められるが、何か薬でも混ぜられているのではないかと思い、その手には載らないといきなり果物ナイフを抜いて間宮に突き付ける、驚く間宮。ブザーを鳴らす幸子。すると、サングラス姿の恰幅のいい男が急に間宮に襲い掛かって来た。その一方で、杉下たちは清次郎に会い、なぜ60になるかならないかで社長を息子に譲ったかを問う。天の啓示と答える清次郎。また千住信用金庫を調べた杉下と神戸は、あるアパートを訪ね、そこの住人を連れ出す。
ブザーを聞きつけた捜査一課の3人は、間宮家に急ぐ。しかし被害を受けているのは幸子ではなく、間宮だった。捜一のおかげで何とか自由になれた間宮は、天体構造研究所のパンフレットがあったのは、由紀がそこの信者で、行方を探るために入会したと話す。そこへ杉下と神戸が由紀を連れて現れる。アパートの住人は由紀だったのだが、かつてと違って、やけにけばけばしい身なりでふてくされた印象になっていた。実は由紀は、この家から大金を盗んで逃走し、マンションの隣にいた大崎智美の名義で、千住信用金庫に預けていたのだった。大崎に梅干しが来たのも、清次郎の書斎の畳が不自然だったのもそのためだった。金は清次郎の書斎の床下に隠されていたのである。
しかし、なぜ清次郎は被害届を出さなかったのか。それは、この金が脱税した金だったからである。由紀が逮捕されることを考えて、社長職を息子に譲り、なおかつ由紀に関するものを隠したのは清次郎だった。またサングラスの男は、以前幸子が逮捕されるもととなった事件に関わっており、実は尾行するのではなく幸子を守っていたのだった。また、マンションの壁に「たすけて」と書いたのは、ロッキーを田ッキーにしてしまった瑞樹のしわざだった。またボーナスも、杉下が言うように幸子への評価によるもので、すべては彼女の思い込みに端を発していた。伊丹は吐き捨てるように言った。
「捜査一課に入って以来、こんなくだらない事件は初めてだ」 神戸は幸子を「おっちょこちょい」と評するが、杉下はそれをたしなめる。その幸子はその後、先の事件で逮捕された田村と面会する。出所したら一緒にやり直そうという田村だが、幸子はあっさり、それは無いと言ってのける。そして今度彼女が手に入れたのは、たまきが去った後の「花の里」の女将の座だった。そして、杉下の不調も、この花の里に足を運ばなかったのが原因だった。幸子は久々に店にやって来た杉下と神戸と雑談をし、それぞれの注文の料理を渡す。しかし、杉下に渡したのは神戸が、そして神戸に渡したのは杉下がそれぞれ注文した物だった。神戸は言う。
「 やはりおっちょこちょいですね」*************************
長くなりましたが、相棒第10シーズン14話「つきすぎている女」です。これを観て思うのは、ホームズの『ブナ屋敷』に似ているということです。幸子への細かい服装の規定、息子が懐いてくれない、そして、自分の部屋から思いがけないものを発見する点などはそっくりです。もちろん、事件そのものの結末は違いますし、その「事件」も、脱税した金が盗まれたことより、幸子が自分の思い込みで作り上げてしまったといった方がいい、架空の事件の方に重きが置かれています。ある意味、月本幸子という登場人物の、一風変わった紹介方法といえるかもしれません。
ところでこの中では名義貸しが登場します。これはもちろん違法行為です。特に最近では、テロ規制もあってかなりやかましくなっているようです。特に刑事ドラマの脚本は、新しい法律が施行されると、それに合わせなければならない部分もありますから、監修者がいるとはいえ、法律の知識もある程度必要なのではないでしょうか。
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