元々イエス・キリストの誕生日は夏であって、今のクリスマスの時期ではないということは前にも触れています。では、なぜクリスマスが 12月となったのか、それはやはり冬至の祭りと結びつけたからだといわれています。特に北欧では、この冬至の時期は、オーディンが祖霊を引き連れてやって来るという言い伝えがあり、そのために人々はご馳走を作り、馬の手綱を解いて、亡くなった人々の霊が自由に乗れるようにししておきました。ちょっとお盆に似ています。また日本も中世ごろまでは、冬至の祖霊迎えの習慣がありました。
そして、8本脚のスレイプニルを駆ってやって来るオーディンのために、ブーツに海馬を入れて置いておき、翌朝、そのブーツの中には贈り物が入っているわけです。つまりオーディンは後のサンタクロースとなり、8本脚のスレイプニルにちなんで、サンタクロースのそりを曳くトナカイは8頭となりました。また北欧でなくドイツには、日本のなまはげを思わせる怖いサンタクロースもいます。
この祖霊祭りはユールと呼ばれ、今も北欧ではクリスマスをユール(ヨール)といいます。この時期は藁でできたユールボックというヤギが飾られます。日本でも、イケアなどで小型のユールボックを目にすることがあります。これがヤギというのは、恐らくキリスト教伝来前の異教の神のイメージがあったからではないでしょうか。他にも北欧はトムテなどの妖精もいて、クリスマスにはお粥を上げる習慣があります。
そしてこのユールにやってくるオーディンも、キリスト教伝来と共に異教の神となり、ひいてはワイルドハントの頭領となります。このワイルドハントは、ゲームなどにもなっているのでご存知の方も多いと思いますが、ヨーロッパにおける一種の伝承であり妖怪で、日本の百鬼夜行に似ています。特にキリスト教の祝日や夏至などに現れるといわれ、そのような日は夜に出歩いてはいけないとされました。百鬼夜行も、確か出現する日が決まっているため、その日は外出を避けるという言い伝えがあります。『真夏の夜の夢』に出て来る妖精たちも、この一環とされています。
ところで欧米では、クリスマスが過ぎてもツリーを飾っておくといわれますが、元々クリスマスは1月6日の公現節まで続くこと、従ってお正月がクリスマスの延長線上にあるからこうなっています。日本の場合、お正月はお正月で別に祝いますから、クリスマスは一旦リセットして、改めて新年を迎える準備に取り掛かるわけですね。ところでこれもちょっと触れていますが、スコットランドでは、国教の長老派が聖書を重んじるため、聖書に明記されていないクリスマスを重視せず、ホグマネイという大みそかを祝います。一般に長老派のような改革派の教派は、クリスマスは控えめのようです。
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