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ベイカー寮221B/Baker House 221B

パペットホームズ、大河ドラマなどの好きなテレビ番組やラグビーについて書いています。アフィリエイトはやっていません。/Welcome to my blog. I write about some Japanese TV programmes including NHK puppetry and Taiga Drama, Sherlock Holmes and rugby. I don't do affiliate marketing.
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『風花帖』-63

新六は伊勢新九郎を斬った後、吉乃を菅屋敷に送り届けていた。母が戻ったのを見て千代太は喚声を上げた。新六に助けられたことを吉乃から聞かされた千代太は、改まった表情になり、大人びた口調で
「印南様、ありがとうございます」
と礼を述べた。

新六は戸惑った顔になり、
「いや、さほどのことではありませんから」
と答えたものの、千代太から尊敬のまなざしを向けられて嬉しかった。
新六はそのまま屋敷に留まり、追っ手を警戒したものの、時が経っても門前には誰一人現れなかった。

如何なることでしょうかと吉乃。新六は考えをめぐらしつつこう答えた。
「さて、わかりませぬが。今家中は、ふたつに割れた騒動の最中で、私のことなど構っている暇はないのでしょう」
「されど伊勢様を殺めたからには、このままにはすみますまい」

それを聞いて吉乃はため息をついた。
「それゆえ私は小宮様の一行を追って出国します。今後伊勢勘十郎のことで、吉乃様にお咎めがあった場合は、私が、吉乃様を無理矢理、伊勢屋敷から連れ出したと仰ってください」

「それではあまりに申し訳がございません。私は、新六殿に助けられたことをはっきり言おうと存じます」
新六はゆっくり頭を振り、こう言った。
「吉乃様のお気持ちは嬉しいのですが、それだとお助けしたことが却って仇になり、私は辛うございます。どうか、私が申し上げたようになさってください」

「それでも、私は新六殿にまた家中に戻っていただきたいと思います」
吉乃は思いを込め、新六を見つめた。

もちろん源太郎の妻である以上、新六への思いにこたえることはできないのだが、せめて身近なところから、新六の人生を見届けたいと吉乃は思っていた。
「さて、そうはなりますまい。小宮様たちは肥後の細川家を頼られるおつもりかと存じます。私も共に肥後へ向かい、その後は一介の浪人の身となるつもりです」

「では、本当にお家を離れられるおつもりですか」
「武士暮らしは窮屈で、自分の思うようにはとても生きられません。藩を離れたら新しい生き方もできるかも知れませんから」
新六は微笑んで言った。

「新六殿の新しい生き方…」
吉乃は思った、それが新六のためには最もよいのかもしれない。藩内の混乱はどこで収まるのかもわからず、あるいはこの先何年も、家中は憎悪に満ち、復讐や裏切りが繰り返されるかもしれない。

夢想願流の秀でた腕前を持つ新六が、そのような家中に留まった場合、必ずどちらかの派閥から利用され、予想もつかぬ修羅の道を行くことになるだろう。そんな生き方は、新六にはふさわしくなかった。

それを考えれば、新六が他国へ行き、浪人となることは寧ろ喜ぶべきことなのだ。吉乃はそのように考えつつも、最早新六と会うことはできなくなるのかと思うと、ひどく寂しく感じた。寂しさと言うよりは、いつも近くで自分をひそかに思い、守ってくれた人がいなくなるという、耐えがたいような切なさを感じたのである。

このまま新六と別れたら、二度と会うことはないだろう。吉乃は、自分は何か言わなければならないことがあるのではないかと思い、胸中に何かが湧き上がるのを感じた。そして千代太に、しばらく自分の部屋に行っているようにと促した。


新六は勘十郎を斬った後、吉乃を無事菅屋敷まで送り届け、その新六に千代太は大人びた口調で礼を言います。新六は千代太から尊敬の目を向けられ、満更でもなさそうです。その後追手が来るのを警戒して、しばらく屋敷に留まりますが、誰も現れることはなく、吉乃はそれを不審に思います。この混乱の中で、誰も自分のことなど構っていないが、勘十郎を斬っだ以上ただでは済まない、だから自分は小宮四郎左衛門たちを追って国を出ると新六は言い、そして吉乃には、勘十郎絡みで何か咎められたら、新六に無理矢理連れ出されたと言うように伝えます。

新六はこれまでもそうでしたが、自分が罪をかぶるつもりでいました。しかし吉乃は、その場合は新六に助けられたと打ち明けるつもりでおり、仮に出国してもまた戻って来てほしいと言います。常に自分を思い、守ってくれた新六がいないのは、吉乃に取って耐えきれませんでした。しかし小倉藩の前藩主でもあった細川家を四郎左衛門たちは頼ろうとしており、自分も肥後へ行き、浪人になると新六は言います。新六のためにはそれがいいかもしれないと思いつつ、やはり小倉にいてほしい吉乃の気持ちは複雑でした。

もう会えないかも知れないと思う、その気持ちが吉乃にあることを告白させようとします。そして玄関先にいた千代太を部屋に行かせます。千代太も、こういう時はきちんと礼を述べるほど大人になっていましたが、吉乃がこれから話したい内容は、まだ千代太の年齢では理解できないもののようです。しかし「新六にもう会えないかも知れない」という吉乃の思いは、今後新六が小倉を離れ、肥後へ行くことを前提としているものでした。ところが現実には四郎左衛門の一行は、福岡藩領黒崎で足止めを食らっている状態だったのです。


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[ 2024/04/16 00:30 ] その他 | TB(-) | CM(0)
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『西郷どん』復習の投稿をアップしている一方で、『鎌倉殿の13人』の感想も書いています。そしてパペットホームズの続編ですが、これも『鎌倉殿の13人』終了後に三谷氏にお願いしたいところです。

他にも国内外の文化や歴史、刑事ドラマについても、時々思い出したように書いています。ラグビー関連も週1またはそれ以上でアップしています。2019年、日本でのワールドカップで代表は見事ベスト8に進出し、2022年秋には強豪フランス代表、そしてイングランド代表との試合も予定されています。そして2023年は次のワールドカップ、今後さらに上を目指してほしいものです。

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