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ベイカー寮221B/Baker House 221B

パペットホームズ、大河ドラマなどの好きなテレビ番組やラグビーについて書いています。アフィリエイトはやっていません。/Welcome to my blog. I write about some Japanese TV programmes including NHK puppetry and Taiga Drama, Sherlock Holmes and rugby. I don't do affiliate marketing.
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『風花帖』-62

馬廻り役4名は騎馬で城から出発した。既に夜が更けようとしており、黒崎宿に着いた時には、宿場の要る愚痴に篝火が焚かれていた。そして方円斎をはじめ十数人が、槍を手に警戒していた。篝火の灯りに、槍の白い穂先が光っていた。

4名の者は馬を下りると、方円斎たちの間を緊張した面持ちで通り抜けて行った。4名の内の1人、高田八兵衛は宝蔵院流の鎗の名手として名を馳せており、警固の者たちの槍に目を向けながら、顔見知りでもある方円斎に声を掛けた。

「さても殺気立っておるな。これで、一晩持つのか」
方円斎はにやりと笑い、そして言った。
「戦陣となれば、気合も入りましょう」

八兵衛はなるほどなと笑い、他の3名に続いた。そして4名が本陣に入ろうとすると、玄関先に与市がいて、こう声をかけた。
「何度話に来られても無駄でござる。小宮様たちにお戻りいただくなら、小笠原出雲の首を差し出されるしかございますまい」

八兵衛がゆっくり与市に近づき、口を開いた。
「儒者風情が荒々しいことを申すな。命のやり取りの場であれば、口舌など役に立たないのを知らぬか」
八兵衛に断言され、与市は青ざめて口を閉ざすと後戻りした。

奥座敷に通された4名は、一刻(約2時間)ほど説得工作を続けたが、四郎左衛門は首を縦に振ろうとはしなかった。
「そなたたちの言うことは尤もなようだが、それは出国までのことだ。一旦こうなったからには、我らも命を賭けておる。いくら説得されようとも、言葉だけではおめおめと戻るわけには行かぬ」

四郎左衛門は、あくまでも出雲の処分を求めて譲らす、深夜になって4名の馬廻り役は引き揚げることにした。
方円斎たちは宿場の入り口で、相変わらず槍を連ねて警戒を続けていた。

彼らに行き会った八兵衛は方円斎を見つけ、またも声を掛けた。
「小宮様たちは、なかなか折れてくださぬ。このまま行けば、我らが討手を引き受けることになるであろう、その折はその方らを、わしの槍の錆にしてくれよう」

八兵衛の言葉に、方円斎は喜びの笑みを洩らして言った。
「望むところでござる。存分におかかりください」

八兵衛はこの言葉に苦笑いし、馬の腹を蹴った。4名は暗闇の中を、馬蹄の音を響かせて去って行った。すると今度は、彼らと入れ替わるようにして徒歩の男が宿場の方へとやって来た。

篝火に照らされたその顔を見て、順太が声を上げた。
「印南、戻って来たのか」
新六は方円斎と順太に近づいて、頭を下げた。

「遅くなり申し訳ございません。印南新六、ただいま追いつきましてございます」
方円斎は一言も発せず、新六の顔を見つめた。空にはいつの間にか月が昇っていた。


別の説得役が、小倉から黒崎へ出発します。尚先日ご紹介した常盤橋ですが、ここから長崎街道を通って次が黒崎宿です。その黒崎宿の入り口では篝火が焚かれ、物々しい雰囲気が漂っていました。その中で、槍を手に警固の番に当たっていた方円斎に、説得役の1人八兵衛が声をかけます。「そこまで殺気立って一晩持つのか」の八兵衛の言葉に、これが戦陣なら気合も入ると方円斎は答えます。方円斎たちは、城から討手が来るのも覚悟のうえでした。

一方で与市は、四郎左衛門たちに戻ってほしいのなら、出雲の首を差し出すようにと言わんばかりで、これは八兵衛を怒らせます。
「儒者風情が荒々しいことを申すな。命のやり取りの場であれば、口舌など役に立たないのを知らぬか」
前回も方円斎と与市の違いが描かれていましたが、いざと言う時は、命を投げ出す覚悟をしなければならない武士と、儒者との違いであると言えるでしょう。

結局今回も説得工作はうまく行かず、八兵衛たちは小倉へ戻ります。このままでは自分たちが討手になるかも知れぬ、その場合はその方らを、わしの槍の錆にと言われた方円斎は笑みを浮かべ、望むところでござると答えます。これもまた武士ならではの言葉といえそうです。そして彼らと入れ替わるように、徒歩の男がやって来ます。篝火に照らされたその顔は新六で、「ただいま追いつきましてございます」と方円斎たちに挨拶をするのでした。


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[ 2024/04/11 02:30 ] その他 | TB(-) | CM(0)
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Author:aK
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『西郷どん』復習の投稿をアップしている一方で、『鎌倉殿の13人』の感想も書いています。そしてパペットホームズの続編ですが、これも『鎌倉殿の13人』終了後に三谷氏にお願いしたいところです。

他にも国内外の文化や歴史、刑事ドラマについても、時々思い出したように書いています。ラグビー関連も週1またはそれ以上でアップしています。2019年、日本でのワールドカップで代表は見事ベスト8に進出し、2022年秋には強豪フランス代表、そしてイングランド代表との試合も予定されています。そして2023年は次のワールドカップ、今後さらに上を目指してほしいものです。

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