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ベイカー寮221B/Baker House 221B

パペットホームズ、大河ドラマなどの好きなテレビ番組やラグビーについて書いています。アフィリエイトはやっていません。/Welcome to my blog. I write about some Japanese TV programmes including NHK puppetry and Taiga Drama, Sherlock Holmes and rugby. I don't do affiliate marketing.
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『風花帖』-53

新六は小声で
ーー吉乃様
と声を掛け、吉乃ははっとして天井を見上げた。新六は天井板を動かし、ふわりと畳に降り立った。

その様子は、かつて新六が吉乃を救った時に見せた、あの蝙蝠のような動きだった。
「新六殿ーー」
吉乃は声を詰まらせた。

吉乃は勘十郎に囚われて以来、新六が助けに来てくれることを願っていた。しかし、いざこうして新六が来てくれると、それが信じられないような思いで、目に涙があふれた。

兄の秀五郎は吉乃に、むごいことをしていると言った。最早新六に助けを求めるべきではないと吉乃は思っていた。だが勘十郎の屋敷に囚われてしまい、無意識のうちに、胸の中で新六に助けを求めていたのである。その願いが通じたかのように、新六はこの場に姿を見せてくれた。

しかしそのために新六は、大きな苦難を背負うことになったことは吉乃もわかっており、申し訳なさで胸がいっぱいになった。
「新六殿、ありがとう存じます。されど私に関わっては、新六殿の身が危のうございます。最早私は放っておいてお立ち退きください」

吉乃が涙ながらにこういうと、新六は微笑んで言った。
「何を言われますか。せっかく吉乃様のもとへ参ることができたのです。お助けしないわけには参りません」

「そうおっしゃいましても…」
吉乃は尚も訴えようとしたが、新六はゆっくり頭を横に振った。
「我が藩は、既に真っ二つに割れて争っております。この先無傷でいられる者はおりますまい。ならば、私は吉乃様を助けて傷を負う方が嬉しゅうござる」

「ですが、私は伊勢様の家士に監視されております。ここから逃げるのは難しいかと存じます」
吉乃は、眉をひそめてこう言った。

「いや、家士が何人いようとも、斬り払って吉乃様をお助けいたす、それは私に取ってたやすいことです。しかし今しばらくここで待とうと思っています」
「何を待たれるのでしょうか」

吉乃は目を見張って尋ねた。新六は座敷の片隅に吉乃を誘うと、畳に座った。その新六の傍らに、吉乃は身を寄せて座った。新六は声をひそめ、こう話した。

「私が小宮屋敷を脱け出たことは、既に城中の伊勢勘十郎の耳に達しているでしょう。あの男は、私が吉乃様を助けようとしていることを察し、慌てて屋敷に戻ってくると思われます。それを待つのです」
「待って、どうなさるのですか」
新六は冷ややかな笑みを浮かべた。

「斬ります」
「伊勢様を斬ると言われるのでしょうか」
吉乃は息を呑んだ。


伊勢屋敷へ向かった新六は、忍びのように天井裏に入り、吉乃が捕らえられている部屋へと忍び込みます。吉乃は、心のどこかで新六が助けに来てくれたらと思ってはいたものの、実際に来てくれたのが信じられず、涙を流します。しかし同時に、新六がこのような状況に身を置いているのは危険きわまりなく、吉乃は自分のことは構うなと言うのですが、新六にしてみれば、吉乃を助け出すことが大きな使命でした。

小倉藩士でありながら、藩を二分する騒動には加わらず、ただ吉乃を救いたいという気持ちゆえに、身の危険を冒してまでやって来たのが、この人物らしいと言えるでしょうか。しかも自分が小宮屋敷を脱け出した、より正確に言えば、方円斎や順太が昼寝をしてくれたため脱け出すことができたわけですが、その事実を勘十郎が聞きつけ、急いで戻って来るであろうことも計算済みでした。

元々この新六の最大の目的は、伊勢勘十郎への復讐と言えそうです。吉乃、そして夫の源太郎を煩わす者を処罰することが、彼に取っての正義でもありました。しかしながら普段は地味な人物であり、そういう人物が、特定の存在を貶められた時に採る手段というのは、実はなかなか過激なものであったりもするのですが、勘十郎にそのことがどこまでわかっているでしょうか。

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[ 2024/02/27 03:00 ] その他 | TB(-) | CM(0)
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Author:aK
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『西郷どん』復習の投稿をアップしている一方で、『鎌倉殿の13人』の感想も書いています。そしてパペットホームズの続編ですが、これも『鎌倉殿の13人』終了後に三谷氏にお願いしたいところです。

他にも国内外の文化や歴史、刑事ドラマについても、時々思い出したように書いています。ラグビー関連も週1またはそれ以上でアップしています。2019年、日本でのワールドカップで代表は見事ベスト8に進出し、2022年秋には強豪フランス代表、そしてイングランド代表との試合も予定されています。そして2023年は次のワールドカップ、今後さらに上を目指してほしいものです。

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