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ベイカー寮221B/Baker House 221B

パペットホームズ、大河ドラマなどの好きなテレビ番組やラグビーについて書いています。アフィリエイトはやっていません。/Welcome to my blog. I write about some Japanese TV programmes including NHK puppetry and Taiga Drama, Sherlock Holmes and rugby. I don't do affiliate marketing.
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『風花帖』-48

新六が目を開け、ひととしての思いでござると言ってのけた時、方円斎は呆れたように「ひととしての思いだと」と言い、順太けたたましく笑った。新六は悲しそうにつぶやいた。
「やはり、おわかりいただけませぬか」

方円斎は真面目な顔つきになり、こう言った。
「印南、どのような事情があるのだ。何もかも話してみろ。わしにも武士としての覚悟はあるつもろだぞ」
「されば、申し上げる。わたしは菅源太郎様の奥方吉乃様を助けに参らねばならないのです」

新六は思い切ったように話し始め、方円斎と順太は顔を見合わせた。方円斎は驚きの表情をうかね、こう訊いた。
「印南、お主は正気で、藩が真っ二つに分かれて騒動となっている折に、他人の女房殿を助けに参ると言うのか。武士としての面目を投げ捨てることになるぞ」

新六は目を閉じ、そして深々とうなずいた。方円斎はまじまじと新六の顔を見ていたが、不意にからりと笑い、このように言い捨てた。
「呆れ果てた愚か者だ。さような願いを聞けるわけはなかろう」

そして方円斎は順太に顔を向け、
「最早かような戯言(たわごと)を聞くまでもない。間もなく小宮様を追って行かねばならぬが、わしはいささか疲れたようだ。まずは昼寝をいたしてから屋敷を出ることにしようか」

順太は驚いて目をみはった。
「今から昼寝をされるのですか」
「そうだ、お主も昼寝を付き合え」

方円斎はさりげなく順太に目配せしたが、順太は方円斎の意図を察して困った顔になり、腕を組んだ。
「さてさて方円斎殿は無理を申される」
「何が無理なものか、寝るだけのことだ」

方円斎は部屋の隅へ行き、新六に背を向けて横になると肘枕をした。その様子を見て順太も
「やむを得ませんな」
とつぶやくと、新六に一瞥をくれてから部屋の隅でj膝を立てて座り、刀を抱いて目を閉じた。

新六は手をつかえ、
「ありがたく存じます。必ず戻ります」
そう言って2人に頭を下げたが、方円斎は新六に背を向けたまま口を開いた。

「余計なことは言うな。わしらは昼寝を致しておるだけのことだ。それよりわしらが寝ている間にどこぞへ行ったのなら、もう戻ってくるな。藩の争いは底が知れぬし、お主はかような争いごとに巻き込まれるには馬鹿正直が過ぎる。争いはいずれ収まる、しかしその折には正直者が損をするぞ」

方円斎の言葉は温かみを帯びていた。
「かたじけない。されどそれがしは戻ります」
新六は頭を下げてそう言うと、すっと立ち上がり、音も立てずにそのまま座敷から縁側に出て行った。

方円斎は目を閉じたまま
「馬鹿者めーー」
とつぶやいた。新六は滑るような足取りで玄関に向かうと、刀掛部屋で自分の大刀を探し出し、腰に差した。


新六は方円斎と順太に、しばらくここを出たいと頼み、それは忠義ではなくひととしての思いであると言います。方円斎と順太は呆れますが、新六はここで一歩踏み込み、吉乃を助けに行きたいのだときっぱり言います。それでも方円斎と順太は、藩が真っ二つに分かれているこの時に、他人の女房を助けるのかと驚いているようです。方円斎はこの「呆れ果てた愚か者」に、そのようなたわごとを聞くまでもないとまで言います。

しかしその直後、方円斎はある策を用います。それは「昼寝」をすることでした。順太も付き合えと言われ、しかも目配せをされたことから、方円斎が何を考えているのか気づいたようです。方円斎はわざと新六から離れて肘枕をし、順太も部屋の隅に行って、刀を抱いて昼寝をします。これで新六は自由の身となり、吉乃を助けに、勘十郎の屋敷へ行くことができるようになりました。

礼を述べ、必ず戻りますと言う新六ですが、方円斎はもう戻らずともよいと言います。この男はこういう争いに加わるには正直過ぎ、ことが収まれば正直者が損をすると言いたいようで、言葉に温かみが籠っていたのは、これがせめてもの思いやりだったからでしょう。そして新六は、吉乃の救出に向かうべく部屋を出て、足音も立てすに玄関へ向かい、自分の刀を腰に帯びます。


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[ 2024/02/07 05:00 ] その他 | TB(-) | CM(0)
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Author:aK
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『西郷どん』復習の投稿をアップしている一方で、『鎌倉殿の13人』の感想も書いています。そしてパペットホームズの続編ですが、これも『鎌倉殿の13人』終了後に三谷氏にお願いしたいところです。

他にも国内外の文化や歴史、刑事ドラマについても、時々思い出したように書いています。ラグビー関連も週1またはそれ以上でアップしています。2019年、日本でのワールドカップで代表は見事ベスト8に進出し、2022年秋には強豪フランス代表、そしてイングランド代表との試合も予定されています。そして2023年は次のワールドカップ、今後さらに上を目指してほしいものです。

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