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ベイカー寮221B/Baker House 221B

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『風花帖』-20

藩主忠固が出雲派を遠ざけたことで、与市たちはこれで藩政改革が成ったと喜んだ。しかし源太郎は主膳が殺された日以来、病と称して登城することもなく、屋敷にいた。源太郎は犬甘派との接触も断ち、何事かを考えているようだったが、ある日吉乃にこう話して聞かせた。

「わたしは印南殿に助けられて、渋田見様への刺客となることを免れた。僥倖と言っていいが、上原(与市)殿のやり方は過激なので、旧犬甘派から身を引こうと思う」源太郎の、憑き物が落ちたような言葉を聞いて吉乃は嬉しく思う。吉乃もこれ以上、源太郎に争いの渦の中にいてほしくなかったのである。

これもそなたが印南殿に頼んでくれたおかげだ、ありがたく思うと言う源太郎だが、吉乃は新六のことが気になった。源太郎に代わって主膳を殺めたことを、罪に問われそうな気がしたのである。新六に難儀がかかるのではないかと案ずる吉乃に、源太郎はこう言う。

「印南殿があの場にいたことを知る者はわたしと早水(順太)殿、直’(方円斎)殿だけだ。誰もあの一件を口にする恐れはないし、印南殿は刀ではなく手槍を使われた。斬り口から印南殿とわかることもあるまい」

源太郎は確信ありげに言ったが、人ひとりの命を奪っておいて、そのままで済むとは吉乃には思えなかった。しかも新六が刺客を引き受けたのは、自分の頼みを聞いたからであり、吉乃は申し訳なさが募った。自分が新六に甘えすぎていると思った吉乃は、新六に詫びなければと思う。

10月に入って、新六の非番の日を確かめると屋敷を訪ねた。新六の屋敷には、相変わらず年寄りの家僕しかおらず、吉乃が案内されて屋敷に上がると、新六は、わずかな庭木があるだけの庭を、縁側でぼんやり眺めていた。吉乃が挨拶すると、新六は慌てて膝を正した。

何をしておられましたかと尋ねる吉乃に、新六は苦笑し、庭を眺めていただけですと答える。吉乃は微笑んで、庭は面白うございますかと訊いた。こんな形で新六と語るのは、これが初めてだった。新六は言う。面白うはございませんか、四季折々で変わるからと。

それを眺めて楽しまれるのですねと言う吉乃に新六は、四季があることは時が流れることであり、命というものを何となく感じると答える。命を感じるという新六の言葉に、吉乃は眉をひそめた。源太郎を助けるため、刺客になったのを後悔しているのではと思ったのである。

新六は再び庭に目をやった。その新六に吉乃は声をかけた。「やはり、わたくしは申し訳のないことをしてしまったようです」新六は怪訝な顔で、何のことであるのかを尋ねた。

吉乃は、自分が頼んだために、新六が意に添わぬことをしたのだと思ったこと、今日はそのお詫びに来たことを伝え、頭を下げる。新六は手を振って言った。武士であれば常に生死の覚悟はしていること、渋田見主膳も同じ思いであったであろうこと、武士はいつ何時、首を失うことになろうとも、悔いる心は持っていないと。

しかし吉乃はこう尋ねた。
「されど、新六殿は浮かぬ顔をされておられました。生死の覚悟を定められておられるはずなのに、なぜでございましょうか」

吉乃に重ねて訊かれ、新六は思いがけず真面目な表情になって答えた。
「上原殿たちは、殿が怒りをお見せになられぬゆえ、諫言を受け入れられたと思われているようですが、さようなことはありますまい」


渋田見主膳の暗殺後、源太郎はいわば引きこもってしまいます。新六が刺客を自ら代わってくれたことは幸いであったものの、上原与市の過激なやり方とは、一線を画したいと考えているようです。そして吉乃も、夫が争いのただ中から身を引くことに賛成でした。しかし一方で吉乃は、暗殺者が新六であることが発覚するのではないかと案じます。それに関しては、手槍で主膳を殺めており、主膳の刀傷から犯人が割り出されることはないと、源太郎は確信したように答えます。

しかし吉乃は、人命を奪っておいてそのままで済むとは思えず、しかも自分が頼んで刺客を引き受けさせたことを申し訳なく思い、新六の非番の日に屋敷を訪ねます。新六は庭を見ていました。四季折々の移ろいに命を感じると言う新六に、吉乃は、刺客を引き受けたことを後悔しているのではないかと思い、そのことを詫びますが、新六は、武士とは常に生死を覚悟しているものと答えます。

ただ新六は、生死を覚悟しているとは言うものの浮かぬ顔でした。どうも与市たちが、藩主忠固が怒りをあらわにしないため、藩政改革が成されたと喜んでいるものの、実はそうではないことを見抜いているようです。嵐の前の静けさのようなものかも知れません。

飲み物-白いカップの紅茶
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[ 2023/10/02 23:15 ] その他 | TB(-) | CM(0)
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『西郷どん』復習の投稿をアップしている一方で、『鎌倉殿の13人』の感想も書いています。そしてパペットホームズの続編ですが、これも『鎌倉殿の13人』終了後に三谷氏にお願いしたいところです。

他にも国内外の文化や歴史、刑事ドラマについても、時々思い出したように書いています。ラグビー関連も週1またはそれ以上でアップしています。2019年、日本でのワールドカップで代表は見事ベスト8に進出し、2022年秋には強豪フランス代表、そしてイングランド代表との試合も予定されています。そして2023年は次のワールドカップ、今後さらに上を目指してほしいものです。

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