シャーロック・ホームズの原作では、ワトソンがラグビーをやっていたとう設定になっています。またパペットホームズのワトソンもラグビー経験者で、引退したものの、寮の部屋にボールを持ち込むほどのラグビー好きです。尤も、ラガーマンは引退しても生涯ラガーマンという意識が強いのも事実ですが。「まだらの紐の冒険」で、ホームズがロイロット先生と話しているのを、ボールを磨きながら、時にうなずきつつ聞いているワトソンが実にいいです。
ところで南アフリカのラグビーを語る上で、もう1人のワトソンを語る必要があります。彼の名前はダン・チーキー・ワトソンで、チーキーというのは「生意気小僧」という意味のニックネームです。かつて南アフリカではアパルトヘイトが存在し、ラグビークラブも白人用と非白人用との区別がありました。しかしこのダン・ワトソンは、白人なのに、たまたま家から近い非白人用のクラブに通っていたため、白人から嫌がらせを受け、実家に放火されるといった被害も受けました。後にこの人は、アパルトヘイト廃止を積極的に打ち出すようになっています。
アパルトヘイトが行われている間は、他国との交流もままならない状態でした。というか、ラグビーは結構オセアニア諸国と試合をしていたのですが、1982年に、ニュージーランドでの試合で、現地の人権団体がこれに反発し、試合中に上空から小麦粉や発煙筒までをも落とすという作戦に出ました。実際これは映像を観たことがありますが、よくこんな中で試合ができたものだと思います。流石にその後正式な交流はしばらく封印されましたが、代表チームのダミーチームを作って遠征したりはしていたようです。
アパルトヘイト廃止後も、ラグビーは白人のスポーツという印象がありました。代表チームの愛称「スプリングボクス」もそれに拍車をかけていました。この国でスプリングボクというのは、白人支配という意味が込められていたからです。しかし1995年のワールドカップで、マンデラ大統領が積極的に代表チーム支持をアピールし、国レベルで大会を盛り上げるように国民に訴えかけました。この時の様子は、映画『
インビクタス/負けざる者たち 』に詳しく描かれています。
その後紆余曲折を経ながらも、南アは非白人のチームへの加入を認め、しかも試合前のアトラクションでは、白人も混じった現地の踊りなども披露されるようになって行きました。一方で治安はあまりよくない状態が続き、他の強豪国が今まで複数回ワールドカップを開催しているにもかかわらず、まだ1回しか開催されていません。代表チーム自体は強いのですが、次の開催国を目指すに当たり、今後こういった問題をどう解決するのかが懸念されます。
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