第19回後半部分です。
家康の入浴にお万は不可欠な存在となり、積極的に髪をすくようになって行った。そしてある日、家康の許に服部半蔵が呼ばれる。半蔵はお万の懐妊を知らせに来たのである。祝福されながらも、家康はどこか浮かない顔だった。瀬名はお万を認めていなかったのである。ひと悶着起きる可能性もあった。しかもお万は、かつては瀬名の侍女であり、このことも今後をややこしくしかねなかった。
半蔵は含み笑いをし、家康に咎められる。家康は半蔵に口止めをして下がらせるが、廊下に出た半蔵は笑いをこらえきれずにいたようで、家康を苛立たせる。そしてお万は段々とお腹が目立つようになって来た。しかもそんな折、瀬名が浜松にやって来ると数正が知らせる。信康の意を汲んで、浜松に移ると聞き、家康は平静を装うがどうも落ち着かなかった。その時数正、そしてやはり側に控えていた忠次の2人は、何かを見通したかのように、家康に向かってこう言う。
数正「言うなら今ですぞ」
忠次「楽になりなされ」
家康は大したことはないと2人を手招きし、このことを小声で打ち明ける。数正と忠次が笑ったのも束の間、数正は鬼のような形相になり、声を荒げる。
「何を考えておられるんじゃあ~」
また忠次も
「信長が敵を蹴散らしている時に、殿は風呂で何をしておられたのか!」
こう言って、瀬名に伝えるべく部屋を出て行こうとし、数正も子細漏れなく申し上げると怖い顔で睨む。
家康は慌てるがこのことは岡崎に知らされ、信康は父上を見損なったと書状を破る。また五徳は、だから早くお移りになられた方がよいと申し上げたのですと言う。しかしお万をよく知る瀬名は、にわかには信じ難かった。お万はおっとりした、慎ましい娘だったのである。そこへ亀姫がやって来て何を話しているのかを尋ねると、お義父上に虫がついたと五徳は平然として答える。
何の虫なのかを尋ねる亀姫に、信康はあっちへ行くように命じる。そして瀬名は浜松へ行き、家康に直に話すことにする。このことは浜松城内に知れ渡り、家臣たちは厨房で話し込んでいた。そこへ家康がやって来たため彼らは急に話題を変える。家康も彼らの仲間に入るが、瀬名が来たことを知り、その場から逃げ出そうとする。しかし忠勝に取り押さえられてしまい、瀬名にばつが悪そうに挨拶をする。
瀬名はあほたわけと言い、その場にあった物を家康めがけて投げつける。その後側室を持つなとは言わない、殿のお子が増えるのは喜ばしいが、自分のあずかり知らぬこととあっては、正室の立場がないと家康を責める。さらに相手構わず子を作れば、信康や亀の立場も危うくなりかねない、自分だけでなく信康や亀もないがしろにされたと言う瀬名に、家康は謝るしかなかった。瀬名は家康の頬をぶつ。
そして瀬名はお万に会いに行く。そのお万は城から出ようとしていたが、侍女仲間にあることを頼む。そして瀬名は、後ろ手に縛られたお万を目にする。お万は大変なことをしてしまった、申しわけないと言って懲らしめてくれと瀬名に哀願し、瀬名は棒を渡される。折檻してくれ、殺されても構わないと訴えるお万に瀬名は、腹の子に罪はないと瀬名。
しかしお万はこの子を産めばお家が乱れる、しかも家康の落胤とあらば恥ずかしくない躾をしなければならないと言う。悪いことに実家の神社は焼けて父は亡くなり、母は動けない状態だった。瀬名はもうよいとお万の縄をほどき、おっとりした慎ましい女子と見くびっていたが、何の才ある子じゃ、うちの殿はひとたまりもないと口にする。
見事じゃと瀬名はお万の肩に手をやり、殿から金子をふんだんに頂いて子を育て、社を建て直すように言う。それも女子の生きるすべ、私は嫌いではないと言う瀬名に、多くの家臣を失って疲れ切っていた殿をお慰めしたまで、恥じてはいないとお万。
さらにお万は、男は欲しい物を手に入れるために戦をし、人を殺して奪うが、女子は人に尽くし、癒しと安らぎを与えて欲しい物を手に入れると言い、女子の戦い方の方がよい、そして男に戦のない世など作れるはずがない、政も女子がやればいいとも言う。
お方様のようなお方ならきっととお万は言った後、お腹の子を殿のお役に立つ立派な子に育てると誓い、城を出て行く。瀬名は家康の居室へ向かう。すまなかったと詫びる家康に、それだけつらく苦しい時をお過ごしだったのでしょう、そばにいられず申し訳ないと頭を下げる瀬名。家康はそなたは悪くないと言いつつ、自分のそばにいてくれるように頼む。しかし瀬名は、信康や五徳のことがまだ気になっており、浜松への転居を先延ばしにする。
そこへ忠次と数正が現れ、家康を挟むようにして座る。忠次は気を緩める暇などない、遠江の民は殿をバカにして楽しんでいると伝える。実際例の団子屋の老婆が、家康が三方ヶ原から帰る時に団子をただ食いしたので、追いかけて銭を払わせただの、ある者は信玄が恐ろしくて馬上で糞を漏らしただの、好き勝手なことを話していた。それを虎松が耳にする。
信玄が身罷って半年。彼が息絶え、琵琶法師が生者必滅を語ったあの桜の下には、白骨死体があった。そしてその傍らには、武田の紋の刀が置かれていた。
数正は未だ武田は強大、失われた所領を取り戻すのは難しいと家康に言い、そして実際勝頼は千代に、信康と母の築山殿を狙うと明言する。無論2人ともそのことをまだ知る由はなかった。
さて、お万がかなり積極的になって行きます。こうなると家康との関係を持つのも、時間の問題でした。そして懐妊したことがわかりますが、それを伝えた服部半蔵は、嬉しそうにしつつも落ち着きがない家康を見て、何やらおかしそうにしています。そしてどうやら、忠次と数正もそのことを知っていたようです。そしてこの2人は、信長が戦をしている時に何をしていたのかと、家康を叱りつけます。
結局このことは瀬名にも知らされ、信康は呆れ、五徳は自分の預言が的中したのに満更でもないようです。ただもちろん、亀姫はその意味を理解していませんでした。瀬名は自分が知っているお万は、そのような女子ではないと浜松に乗り込みます。既にこのことは、城中の人々の知るところとなっていました。
お万も当初は家康をいたわりたいという気持ちではあったようです。しかしその内に、この殿の子をと思ってもそう不自然ではなかったはずで、さらに瀬名が認めていない子であると悟ったうえで、最後に大芝居を打ったものと考えられます。そして瀬名も、なかなか隙のない女であることを知り、見事じゃと声をかけます。
その瀬名、岡崎に一旦戻りますが、自分が武田の標的にされていることにはまだ気づいていません。どうやらこれが後々災いをもたらすことになるようです。
しかし柴田理恵さん演じる団子屋の老婆、結構何度も出て来ますね。遠江の民の代弁者的存在だからでしょう。そしてここにまた虎松が来ていますが、どうも彼にも思うところがあるようです。あと忠勝が、叔父の瓢箪を身に着けているのが何とも言えません。
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