ちなみにこの第42回「世界に賭ける糸」では、阿久澤家の女中さんたちが、寿と美和を一斉に出迎えます。何だか奥女中編を思い出してしまいます。他にも、美和が飲めない酒を飲まされてしゃっくりが出るところとか、製糸場とか、木戸と伊藤が話し合うところとか、一応見せ場は割と作ってはいるのですが、ただ木戸のセリフが一言しかないのが悲しい。今までの幕末大河の中でも、最も木戸孝允=桂小五郎の出番が少ないように思えます。美和の身内故仕方がないともいえますが、敏三郎が死ぬ場面、少し割いてこの2人に使ってほしかったです。それと、新井領一郎の格好が、書生風というか、和服の下に台衿だけのシャツを着るスタイルですね。これを見ると、『八重の桜』の山川大蔵を思い出します。
『花燃ゆ』は恐らくは、『八重の桜』風にしたかったのではないかと思います。主人公の設定が、兄が幕末の著名な人物、そして最初の夫となる人物とは死に別れ(『八重の桜』では生き別れ)、2度目の夫となった人物と共に、新天地で教育事業に携わる。確かにこういう点は共通するのですが、主人公の置かれた環境があまりにも違いすぎます。そして主人公を取り巻く人物も違う。山本覚馬は吉田松陰とは違って実務家ですし、川崎尚之助も、八重に理解がある控えめな人物に描かれていて、久坂玄瑞とはかなり違います。もちろん新島襄と楫取素彦も違うわけです。
元々『花燃ゆ』の制作発表が2013年12月で、通常より4、5か月ほど遅れていたのに加え、『八重の桜』のパターンを当てはめるには無理があり、しかも史料が足りない。結局それやこれやで、創作、それも正直言ってあまり練られていないような脚本でスタートせざるをえなくなったのでしょう。ちなみに、チーフプロデューサーの土屋氏が、今後の展開を語ったものが公式サイトにあります。
知られざる群馬の魅力を盛り込んで かなり長いのですが、その中にこのような箇所があります。
明治に入ると、現在につながる部分も多く、史実に従うと作劇の幅を狭める場合もあります。それに実際には、楫取の政策には皆が協力を惜しまなかったようです。でも、それではドラマにならない(笑)! 「強力な敵」がいた方が、見ている方は「次はどうなる?」と期待が持てるのではと考え、あえて架空の人物としました。とはいえ、参考にさせていただいた実在の人物もいます。 ならばその「実在の人物」を描くべきではと思うのですが…。しかも「史実に従うと作劇の幅を狭める」云々、単に史実を脚本化できないのでは、とも思えてしまいます。これもかつてのラグビー代表の監督が、戦法を決めると自由に動けないから戦法は決めない、選手のアドリブ的プレイにまかせるという発言をしたのを思い出します。でも15人の選手がそれぞれで勝手に判断しては、勝てるわけがありませんね。あと、県庁所在地を決める上で、楫取に地元の反発があったというのは、このドラマには出て来ないのでしょうか。そして何よりも、今までチーフプロデューサーがこんなことをしていたでしょうか。
それと全く余談ではありますが、井上真央さん演じる美和の鹿鳴館のドレス姿のポスターが公開されています。男爵夫人らしく、なかなかゴージャスな雰囲気ではあるのですが、私個人としては、綾瀬はるかさんの八重の方がドレスが様になっていた印象があります。綾瀬さんの方が上背があり、ドレスの映える体型というのもありますが、どうもこれも、ドラマの印象が影を落としているのかもしれません。
スポンサーサイト