第5回後半部分です。
氏次と氏長の勝負の後、氏真は長照を呼び、松平との戦にはそなたの存在が肝要と告げる。長照の息子たちも早く戦場に出て、手柄を挙げたがっていた。そして長照の妹、田鶴は氏真の「お役目」に取り掛かっていた。一方瀬名たちは今川の監視のもとに置かれ、関口氏純は最早重臣扱いもされていなかった。その瀬名や巴、子供たちに田鶴が菓子を差し入れる。菓子など久しぶりに食べたと巴。
田鶴は関口家に同情し、氏真と兄の長照がきっと松平を討って関口家への仕打ちは終わる、困ったことがあれば何でも申し付けてくれと言う。そして伊賀者の大鼠は駿府に干物売りに変装して忍び込み、関口家の侍女、たねの小袖の袂に密書を入れる。戻って来たたねは、厨房にいた瀬名に密書を握らせ、瀬名は見張りに悟られないように密書に目を通す。
今川領の大崩海岸には半蔵と正信、そして服部党の伊賀者たちがいた。伊賀者たちは酒を飲んで騒いでおり、ケダモノのようじゃなと正信。その正信はことの成り行きを気にしていた。半蔵に呼ばれた伊賀者大鼠は、栄えた街はよそ者が入り込んでも、誰も気にしないのでやりやすいと答え、また穴熊によれば、関口家の守りは大したものではなかった。外敵に備えたものではないと言う大鼠。しかも馬を3頭も飼っており、あれを奪えばたやすいと穴熊は言う。
ではやれるんだなと正信が言ったところで、伊賀者たちの喧嘩が始まる。わしもこいつら嫌いじゃと正信は言い、半蔵は「だろ?」と返す。そして駿府では、夜更けに瀬名が氏純と巴に密書を見せる。氏純は小さな字が読みづらそうで、瀬名は、私と子供たちを忍びが助けに来ると書いてあると教える。しかもそれは翌日の丑の刻となっており、急すぎると巴は言い、岡崎へ行くつもりの瀬名を思いとどまらせようとする。
しかし瀬名は両親にも同行を進め、ここにいても関口家に先はないとまで言う。また氏純は瀬名の言う通りかも知れぬ、このままでは瀬名と竹たちはいつまでも政略の道具にされると口にする。今川様を見限ると申されるのかと尋ねる巴に、わしらが今川様に見限られておるのじゃと答え、今川家がかつてのように立ち直ることはもうないと思うておると言う。元康に仕え、見知らぬ土地で暮らす瀬名と孫たちを助けようと言う氏純に、三河のみそは好きじゃと巴。
密書は灰にされ、返書が半蔵に届くが、関口家もろとも三河に逃れるとあったため、当初の計画より5人増えることになった。正信は今川の一門衆である関口家をお連れすれば、殿の褒美も弾むと言い、多すぎると顔をしかめる半蔵を、武士である関口様とご家来衆が、味方に加わったと考えればよいと諭す。半蔵は大鼠と穴熊にできるかと問いかけ、大鼠はできるかできないかは考えない、やれと言われたことをやるだけと答え、穴熊は銭さえ貰えればと言う。
穴熊は近くの木に棒手裏剣を打ち込み、半蔵もやってみせるがうまく行かなかった。服部党がばらばらになっている間、彼らはどうやって食っていたと正信は尋ねる。戦場となった城や村に入り込み、どさくさまぎれに物を奪っていたのだろうと半蔵。ひでえやつらだと正信は言い、そして悲しきやつらだと半蔵は付け加える。駿府では思いつめた表情の瀬名に、田鶴が憂い事でもおありかと尋ねる。誰かに打ち明ければ軽くなる、田鶴はお瀬名のお味方と言う田鶴に、歯が痛くてたまらぬと瀬名は嘘をつく。
元康は文書を作らせている最中、何か食ってくると外に出る。囲炉裏端で親吉と元忠が、食物を口にしながら正信の悪口を言っているのを目にした元康は、わしはやつらにかけたんじゃ、やつらなら必ずやり遂げる、命がけで働いておる者を笑うなと叱る。その正信はなおも海岸にいて、伊賀者たちと関口家の人々を待っており、かたや氏純、巴そして瀬名は逃げる準備をして忍びたちを待っていた。外では見張りが交代するのを見計らって、伊賀者たちが関口屋敷に近づく。
しかしその時今川の兵が彼方から矢を放ち、逃げ出そうとした彼らの前に、武装した長照が現れる。伊賀者たちは総崩れとなり、穴熊は長照から殺される。大鼠は何本もの矢を受けており、ここを死に場所と定めるが、自分も戦うと言う半蔵を説得し、自分の子や孫が服部党を継ぐから、銭をたんとやって下せえと言って敵の前へと出て行く。半蔵は海岸に戻り、船を出すように言う。
駿府では関口屋敷での捜索が続いていた。長照は曲者どもは退治したと言い、そこへ走り込んで来た田鶴は、開口一番、打ち明けてくださって本当によかったと叫ぶ。実は巴が田鶴には別れを言いたいと思って、駿府を去ることを話していたのである。長照は皆様は松平にたぶらかされただけ、これでよかったのでござると言うが、巴は声を上げて泣き、瀬名はふさぎ込んでいた。そして半蔵も、今後のことを定めかねているように見えた。
氏真は長照と田鶴の働きをねぎらう。そして長照には上ノ郷へ戻り、松平との戦に備えよと言いわたす。田鶴は、関口家はひとときの気の迷いゆえの過ちと言い、寛大な処分を求めるが、氏真は家臣や国衆たちへの示しと言うものがあると、関口家の人々を死罪とすることに決める。
元康は頭を抱える。正信は如何なる責めも負うと言い、数正は腹を切らせるべきと元康に進言する。しかし正信はその前に今一度働きたいと言い、未練がましいと数正に言われつつも、策があると主張する。じきに始まる上ノ郷城攻めに加えてほしいと言うのである。服部党は皆殺しにされたのではないかと訊かれ、まだおりますと答える半蔵。そして策とは、戦のどさくさにまぎれて上ノ郷城に忍び入り、長照と息子たちを生け捕りにすることだった。
関口一家を服部党が「盗み」、岡崎に連れて行く手はずだったにもかかわらず、巴がうっかり田鶴に別れを告げたことから、長照の知るところとなってしまいます。しかしこの野間口徹さん演じるポーカーフェースの長照、私情を表さずに氏真の手足となる人物にふさわしいです。しかし巴はなぜ田鶴に別れなど告げたものやら。瀬名でさえ自分の気持ちを気取られまいと、歯が痛むと嘘をついていたのですが…。ただ巴は赤みそは好きなようですね。
その服部党。こういう時は頼りになる面々でしょうが、普段は酒を飲んでは喧嘩するといった具合で、正信もこいつらは嫌いじゃなどと言います。そしてその首領の半蔵も、彼らを束ねるには一筋縄で行かないことは分かっているようです。ただ服部党が活動しておらず、恐らく彼らが盗みなどで生計を立てている間は、手裏剣を投げるなどということもやっていなかったのでしょう。かなり腕が鈍っているようです。
さて正信。やはり松平家での評価は芳しくないようですが、元康は親吉や元忠が彼を悪く言っているのを聞き、血相を変えて彼らを戒めようとします。正信が誹謗中傷されるということは、その正信を起用した彼自身もまた、誹謗中傷されているに等しいと考えたせいかも知れませんが、意外にこの人物を買っているようです。忠義者で頑固な三河侍とはまた違った、妙に頭の回転がよさそうなところが新鮮に映るのでしょうか。
そしていよいよ上ノ郷城攻めが始まろうとしています。実際この時長照と氏長、氏次の兄弟は捕らえられ、人質交換ということで、やっと瀬名たちが釈放されるに至ります。ところでこの大河で氏次を演じている石田星空さん、『真田丸』で豊臣秀頼の少年時代を演じていたかと思います。
あと氏真の
「家臣や国衆たちへの示しと言うものがある」
だから死罪にすると言うシーン、昨年の大河でも似たようなシーンがありました。武士の世の中、しかも乱世という時代には、将来に禍根を残さないためにもこうなりがちではありますが、その意味でも長照と子供たちが捕らわれたことは、氏真の誤算だったと言えるでしょう。
スポンサーサイト