第4回前半部分です。
元康は伯父水野信元から誘われ、織田との盟約を結ぶべく清須城に乗り込むことになる。交渉時の心得を鳥居忠吉に手ほどきされ、信長の面をつけた平岩親吉を相手に予行演習をおこなうが、内心清須に行けば殺されると思っていた。かつての自分を子兎に見立てた信長が、食ってやろうかと迫ってくるのが脳裏によみがえっていた。
しかし行くしかござらぬと本多忠次。不穏な動きがあれば一戦交える覚悟と石川数正。鳥居元忠に至っては、信長の首を取り清須を奪い取ってしまえばようござると、面を付けた親吉に手をかけ、その親吉もそうじゃ、信長など桶狭間でたまたま勝っただけと言い出す。しかも忠吉まで大高城では我らが勝っていたなどと言い、元康は悩みを抱えたまま清須城に赴く。
元康一行は清須城の大きさに驚く。織田の家来はひざますき、信元は安心せい、俺と信長様は兄弟のようなもんだ、うまく取り持ってやると大口を叩く。先に頭を下げても名乗ってもいけないと、忠吉から言われたことを元康に繰り返し言う数正。信元は怖気づいたのか一行の後ろに隠れており、声をかけられて、織田家の家臣柴田勝家のそばに立つ。やがて簾が巻き上げられ、元康は信長の前の廊下に座る。
勝家にもそっと近くへと促され、部屋の中へ足を踏み入れた元康は、忠吉や数正の忠告も空しく、頭を下げて自己紹介をしてしまい、信長も名を名乗る。その後信元は先に帰り、元康と家来たちには宿が与えられる。一方信長は、妹の市にあることを命じていた。元康たちを宿に連れて来た勝家は、この男が身の回りのお世話をすると言って、「猿」と呼ばれている変わった男を紹介する。
「猿」の本名は木下藤吉郎と言い、早速一行にみかんを配って回る。そして勝家は去り際に藤吉郎の尻を蹴飛ばし、藤吉郎はそれに礼を言う。元康たちは驚くが、蹴飛ばしたい時に蹴飛ばしていただくのも、猿めの喜びでごぜ~ますと平気で言う藤吉郎は、おめえ様方もよければと尻を向ける。ここはどうかしていると本多忠勝。
元康はみかんが妻子の好物であることを思い出す。家臣たちは駿府の様子を探らせており、瀬名も子供たちも無事らしい。そこへ藤吉郎が烏帽子をつけて、扇を持って現れる。信長が元康と相撲を取ろうとしており、藤吉郎は行司を務めるのである。しかし信長の相撲は、何でもありの格闘技のようなものだった。しかも土俵ではなく、織田家の家臣たちが格子の柵で垣を作り、その中で相撲を取るのである。
元康も信長を投げたりと奮戦するが、最終的には信長に抑え込まれてしまう。それでよいと信長。しかしこれで終わりではなく、元康はまた別の相手と対戦することになる。その相手は蓬髪に面をつけており、薙刀を持って入って来た。元康はたんぽ槍で応戦する。相手はなかなか手ごわく、それなのに元康のたんぽ槍を伝って頭上を踏み、向こうに飛び降りると言う身軽さを持ち合わせていた。
元康は何とか相手を垣に押さえつけるが、その相手がせき込み、面が外れる。その相手は女だった。信長は
「いつも俺の後をくっつき回っておった、俺の妹市じゃ」
と紹介する。市はお久しゅうございます、竹殿と挨拶をする。清須を案内しろと兄に言われた市は、元康と山の方へ馬を走らせ、元忠と忠勝が同行した。市は清須城下が一望できる場所へ元康を連れて行く。
信長がこの数年で城下を作り変えており、特に桶狭間後は、人も富も勝手に集まって来ていた。小牧山城から美濃を攻め、その後は西へ向かうと言う市は、乱世とはまことに愉快な世であることよと口にする。乱世が愉快ですとと訊き返す元康に、市は、力さえあれば何でも手に入る、どんなに大きな夢も描ける、愉快この飢えないと言いつつ、ただし男であればなとつぶやく。
そしてつい童のような物言いに戻ってしまったことを詫びるが、元康は15年前のことを思い出していた。元康、当時の竹千代は信長とその家臣の相撲の相手にされていた。まだ少女だった市は仲間に入りたがったが、女が相撲を取るものではないと兄に言われてしまう。次は水練で、尚も市はついて行こうとするが信長は無視し、竹千代に鎧を与える。甲冑を着たまま泳ぐ訓練だった。
女であってもお主よりは強うございますと言う市は、鎧をつけたまま飛び込むことができず、戦で敵は待ってくれんぞと言われながらも逃げ出そうとする竹千代を見て、情なやとつぶやく。一方駿府では、瀬名は父氏純と共に今川氏真の前に引き出されていた。父の恩を忘れ妻も子も捨て、仇敵に尻尾を振るお前の夫は、犬より劣ると氏真。関口の縁者は1人残らず打ち首と言わねばならぬところだがと氏真は言うものの、瀬名に近寄り、幼なじみだから余が情をかけてやろうと言い出す。
同じ頃清須城では、織田と松平の間の盟約が取り交わされようとしていた。織田と松平、何があってもどちらかがもう一方を助けることになるが、国境をはっきりさせておく必要があった。国境は元康が言う通り境川で決まったが、問題は今川への処し方だった。今川は未だ大国、滅ぼすより和議を結んで共に利を得るが上策と言う元康に、信長は平手打ちを食わせ、情で自らを滅ぼすか、未だ白兎かと尋ね、不敵な笑みを漏らしたあと今川は滅ぼせと言う。
元康は尾張へ向かいますが、実際のところまだ決めかねているふしもあるようです。この場合伯父信元の顔を立ててと言う方が正しいかも知れません。その尾張の清須城でまた信長と相撲を取らされ、しかも信長の妹市まで相手にすることになります。この市は子供の頃、相撲を取りたいと兄にくっついて回り、竹千代にお主より強いと言った少女でもありました。
実際今もそれは変わらないようです。市は清須城下を元康に見せ、乱世は力がものを言うから面白いと言いつつ、男であればなとも言います。その市と柴田勝家、そして木下藤吉郎が今回登場しますが、この3人が後年賤ケ岳の戦いに絡むことになるとは、無論誰も思っていなかったでしょう。しかしこの藤吉郎もなかなか不思議な人物ですが、あの信長とは馬が合いそうです。
それから元康の回想ですが、もうあれから15年経つのですね。確かこの清須城行きは1562年、永禄5年だから確かにそうなのですが。あとこの当時のみかんは、橘でしょうか。
一方で駿府。確かに瀬名も子供たちも、瀬名の両親も一応無事でしたが、氏真は元康の裏切りにより、関口一族を処刑しようとします。しかし氏真は、どことなく瀬名にご執心のようです。かつては側室にほしいと思ったこともあり、元康がいない今、自分のものにしようと思っているのでしょう。
それにしても水野信元、威勢のいいことを言いながらどうも信長が怖いように見えますね。しかしここまで来れば、もう今川に刃を向ける一方で、如何に瀬名たちを助け出すかを模索するしかなさそうです。信長は今川絶対殺すマンと言っていいわけですから。
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