『武将ジャパン』第45回関連記述への疑問点、続きです・
1.今週の八幡宮の階段は、まるで儀式の祭壇のようでした。
そこに二人が置かれ、殺し合う。
何か台本でもあるような、運命に吸い取られていくような。
二人とも美しい。神が選んだ最も美しい生贄のようで、見ているだけでも胸がいっぱいになりました。
無惨なはずが、荘厳で、圧倒されて何がなにやらわからない。
実際八幡宮で儀式は行われていましたね。
そして武者さんが
「荘厳で、圧倒されて何がなにやらわからない」
と評価するこの光景を作り出した一因が、義時が泰時を「聖なる儀式の邪魔をするな」と止めたこともまた関連しているのなら、何やら皮肉な話でもあります。これを作り出したのは、義時と義村と言ってもいいでしょう。
2.天命が選んだMVP:“厳寒三友”の梅こと北条泰時
「厳寒三友」があります。
松竹梅です。今では酒か、弁当の等級のように思えますが、由来は風流です。
松と竹と梅は、寒い冬でも生きる姿を見せてくれます。そのことが、逆境でも生きる己を励ますようだということで、宋代以降の文人に愛されてきました。
「天命が…」は小見出しです。で厳寒三友はいいのですが、
「今では酒か、弁当の等級のように思えますが」
はないのではないでしょうか。やはり慶事には欠かせないし、もうすぐお正月ですが、その飾りつけにも当然用いられます。 またこの厳寒三友ですが、梅、水仙、竹のことをもこう呼ぶようです。
で、梅は他の季節に先駆けて裂くという意味があり、それから女子教育の先駆者である津田梅子の話になり、また北条家の梅は泰時だとなっています。
3.御成敗式目を制定し、撫民政治を行なおうとした。時代の先駆者なのです。
義時がドス黒い顔で「北条の思うままの鎌倉にする」というと悪どく聞こえるけれども、このあとに泰時という梅が咲くのだと思えばよいことにすら感じられる。
この場合梅、先駆者はどう考えても頼朝か義時ではないかと思うのですが…。
しかも
4.一方、このドラマの小栗旬さん、山本耕史さん、生田斗真さんはそうではない。
ドクゼリ、ドクウツギ、トリカブトだと思いますね。
義時は松だと書いたけれども、毒があるからそれでもよいかなと。
そうそう、「寒い」と言いながら死んでいった仲章は冬になると枯れる草花ですね。
新時代を担う人材ではありません。残念でした。
「生田斗真さん」と「仲章」は同じだと思います。 で、それぞれトリカブトと一年草に例えられていますが、非常に興味深いことがあります。このトリカブトは1年で枯れる一年草とされていますが、実は疑似一年草に分類されます。これが何かと言うと、本来は1年で枯れるにも関わらず、元々の根から別の根が分離して、翌年また花を咲かせるという植物のことです。まあ仲章のような人物はこの後の時代も出て来ると思われるので、こういう妙にしぶとい植物にふさわしいのかも知れませんね。
しかもずべて毒のある植物に例えるのもなんだかなあ…と思いますね。毒がなくても棘がある花に例えられることもできるでしょう。
そしてこの回に関して、
5.『麒麟がくる』の最終盤もそうでした。
このゾクゾクするような奇妙さがある回でした。
『麒麟がくる』の終わりの方は、結局山崎の合戦がなく、何やら光秀と思しき人物が馬で駆けて行き、駒がそれを見ているといった印象で、私としてはそこまでぞくぞくする感じではありませんでした。一方同じ本能寺後を描いた、『国盗り物語』総集編の終わりの方は、ぞくぞくするものがありました。
で、その後
「歩き巫女の言うことは正しい。あの八幡宮のそばにいたものたちは個人差があれど、天命に呑まれています。
巫女はわかっているから警告する。主人の命令と、親の仇討ちが完了していて、空洞であるトウにも入り込んでくる」
「義時の心には穴が空いている。まずそこを塞がないと何を入れても満たされないのに、それができない。天命がどんどん流れ込んでいっておかしくなっている。その箱の中で、かつての義時は沈んでしまった」
などと書かれていますが、何とも具体性に欠ける文章のように見えます。こういうコラムでは、わかりやすく書いてこそのものだと思うのですが。
6.そんな義時が、己を模した仏像を運慶に依頼するところで、もう頭をぶん殴られたような衝撃がありましたね。
君主というものは、往々にして神に挑むことがあります。
義時は君主ではないでしょう。君主は帝のはずです。
そして宗教の権威と権力者の話になり、キリスト教圏だと、破門されたら皇帝と言えども謝らなければならないと、『カノッサの屈辱』を引き合いに出し、それが近世へ向かう中、教皇を無視してよい仕組みを考える王が出てくる、国王が宗教の頂点を兼任する、イングランド国教会ですなどとあるのですが、まずその王の名前を書きましょう。ヘンリー8世ですね。そしてこの場合は、キャサリンと離婚して、アン・ブーリンと結婚するという理由があったはずなのですが。
7.朝敵になるということは、日本人の価値観では最低最悪のはずだった。それを義時は軽やかに楽しんでそうしているようだ。
朝敵会津の弁明を聞くのか!と、一部で文句をつけられた『八重の桜』どころの話じゃない。
あのドラマで吉田松陰を演じた小栗旬さんが、狙い澄まして神との戦いに挑む様をこの作品ではやっている。
恐ろしいことです。さすが新選組を大河の主役にして描いた三谷さんはものがちがうと改めて思います 。
幕末はどちらが朝廷を担ぐかで2つの敵対する勢力があったわけで、この時代とはその意味で違うと思いますが。そしてあの大河の吉田松陰ですが、彼は元々兵学者で、しかも幕府に対抗した人物ですが、それが義時とどうつながるのでしょうか。
で、小島毅氏のことについても書いていて、
「イデオロギーに敏感な小島先生は、2021年の徳川慶喜にむしろ不満があったと推察(そもそもあの儒教解釈があまりに雑なドラマを好きになる理由がないとみた)」
何かにつけて昨年のを叩きますね。本当に雑でしたか?それに希望的観測では。
それから。
8.日本人は無宗教なのではありません。
日本だけでなく中国もあてはまりますが、複数の宗教を同時に信仰できる。
日本は儒教・仏教・神道。
中国は儒教・仏教・道教。
中国はともかく、日本は神道という土台があり、その上で様々な宗教が共存しているとこの場合考えるべきかと思います。
9.神道の頂に立つ後鳥羽院を、仏教をかざした武士が倒す。
それこそ日本史だろうが、我々の歴史だろうが、そうして成立した武士に日本人は畏敬の念を感じているから、サッカー代表をサムライと呼ぶのではないか?
別に神道は帝のものだけではないし、仏教は武士だけのものではありません。仏教は寧ろ朝廷が庇護して来たところもあります。 そして
「そうして成立した武士に日本人は畏敬の念を感じているから、サッカー代表をサムライと呼ぶのではないか」
野球も侍ジャパンですし、またこれは日本のチームではありませんが、今年トンガで起きた津波災害のチャリティ・マッチとして、6月に行われたラグビーの試合でも、在日トンガ人選手によるチームは、トンガサムライXV(フィフティーン)でした。 ちなみに相手は日本の、若手中心チーム、エマージング・ブロッサムズです。
最後に視聴率です。
10.視聴率については私なりの意見を記しておきたいと思います。
(中略)
ネット配信が普及した現在は、記録も容易なことから、特にその傾向が強く、海外ドラマの宣伝を見ていると「驚異的な視聴回数を記録!」といったコピーがついています。
ではなぜ日本では、未だ古めかしい基準に頼っているのか?
メディアや読者の感覚がアップデートされてないというのが大きな理由の一つ。
もう一つ、視聴者数と視聴回数が公表されていないことも確かですが、例えば大河についてNHK側が把握していないわけがありません。
(中略)
例えばNHK朝の連続テレビ小説『おかえりモネ』は、視聴率は低いものの、NHKプラスの視聴回数がかなり高かったため、NHKとしては成功とされているようです。
『鎌倉殿の13人』も、視聴回数は公開されておりませんが、かなり高いとか。
自分が好きな作品ばかりですね。ちなみにNHKプラスで鎌倉殿を観たことがありますが、途中まで観て繰り返しで都合5回ほど観ています。こういうのは5回としてカウントされるのでしょうか。ならば回数が増えてもおかしくないと思います。
それに武者さんは今回はこう書いていますが、『青天を衝け』について、確か世帯視聴率を基準にしていた記述があったと思われます。もしそうだった場合、なぜこちらはNHKプラスの再生回数でカウントしないのでしょうか。
それと
「メディアや読者の感覚がアップデートされてないというのが大きな理由の一つ」
何だか失礼な言い方のようにも取れるのですが…。
11.作品が高評価かどうだったかについては、雑誌の広告なり、書店を歩けばわかります。
歴史雑誌が秋以降も特集を組んでいるか。
歴史雑誌以外でも、記事が掲載されているかどうか。
この点で、2021年と2022年の大河ドラマではかなりの差がついています。
それを言うのであれば、昨年とある大手書店で、渋沢栄一関連の本が11月頃になっても並んでいるのを目にしたことがあるのですが。
そして
「ネット記事と異なり、確実に利益が出そうでなければ紙媒体は掲載しません。ゆえにそこから判断できる。
今年は成功でしょう」
ネット記事が全く採算度外視をしているとは思えないのですが。
それと、「今年は成功」と言うのは最早お約束のようになっていますね。また紙媒体が後々まで特集を組んでいたら「成功」なのでしょうか。紙媒体を買う層は大河視聴層とかなり被ると思われますが、ドラマとしての成功は紙媒体が売れる入れないで決まるのでしょうか。
スポンサーサイト