『武将ジャパン』大河コラム、第40回前半部分の記述に関する疑問点です。
鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第40回「罠と罠」 - BUSHOO!JAPAN
(武将ジャパン)
1.和田義重は平太(胤長)に誘われて聞きに行っただけだと弁解しますが……なんだか胡散臭い話ですね。
義盛の息子2人と甥(胤長)1人の名前があったわけです。そしてここで義重は
「俺たちは」
平太に誘われて泉殿の話を聞きに行ったと言っています。別に義重だけが聞いたわけではありません。
2.「俺は皆に頼まれて来てるんだ。いい返事がねえんだったら、こっちにも覚悟がある!」
(中略)
義時の気持ちもわかります。せめて武装解除とか、人質を差し出すとか、何らかの保証を持ってくるのが筋でしょう。
義盛はなおも続けます。
「相撲で決めようじゃねえか!」
相撲が駄目ならば戦しかねえ。戦か相撲か。結局、腕力じゃないですか。
ここの部分、「こっちにも覚悟がある」と「相撲で決めよう」はつながっていると思われます。そして武装解除とか人質という発想が、この時代どこまで周知されていたでしょうか。そもそも義盛が、自分は力で幕府をサポートすると考えている以上、武装解除などしないし、したらしたで大変なことになりそうです、
そして
「相撲で決めようじゃねえか」
武者さん=小檜山氏には、是非とも『ちむどんどん』で、登場人物が角力で、しかも怪我をしている相手に対して決着をつけようとしていたことに言及していただきたいものです。
3.確かに義盛は愛嬌たっぷりですが、もう少し深く真面目に事態の重さを考察すべきでしょう。それこそ眉剃りでなく、剃髪して出家しては? 岡崎美実という前例もあります。
自分の価値を本当に知っているのならば、そうして嘆願することもできたはず。
それこそ前回言われていた「数少なくなった、絵に描いたような坂東武者」であり、いわばその意味では絶滅危惧種とも呼べるものでした。そして何よりも、彼は自分の価値を知っていると言うよりは、自分の力を過信したがるところがあり、相手軍門に下るよりは、華々しく散る方を選んだとも言えます。方法は違えど、この点畠山重忠と似ています。
4.確かに上総介広常と状況は似ています。
広常も義盛も、圧倒的な軍事力を保有するだけでなく、人望とカリスマも備わっている。
それらをいかにして消すか……ということですが、かつて義時は眼の前で広常が殺されたとき、大いに動揺し、苦悩していた。
何よりも、この義時と義盛はかつて共に広常を訪問しています。ちなみに『吾妻鏡』には義盛が行ったとあるものの、義時の名はないため、主人公補正と見てもいいでしょう。この時眉剃りについて義盛が言い出したわけで、その回のことが出て来るかと思ったのに、ここでは引用されていませんね。
5.鎌倉殿に会いたいという訴えを時房が遮り、平太と呼ぶ声が虚しく響く。
和田一族が不憫でならない。感情面から考えればそうなりますが、そもそも訴え方がおかしいのも事実。もしもこんな要望が通ったら秩序も何もなくなってしまうでしょう。
秩序も何もないのに敢えてそれをするのが義盛だからでしょう。しかしこの時、時房もいくらか迷っているような表情ではあります。あの義盛がここまで頭を下げているのに、義時の命でそれができないので、いくらかの呵責はあるかも知れないし、この時代とはとどのつまりこういうものだったのでしょう。
6.源氏の嫡流は女好きのはずなのに、父親とは正反対。極端で間がないと実衣が嘆いています。彼女の夫・阿野全成も女性問題はありませんでしたね。
全成は僧でもありましたからね。それを言うなら蒲殿も、この中ではそう浮いた噂はありませんでした。
7.確かに義時は変わりました。
が、歳を重ねても何ら変わらず、幼稚なことばかりしている義盛にも問題はあるでしょう。
義盛は幼稚と言うより、自分が若い頃の坂東の秩序に染まっていて、それから抜けられなかった人物と取るべきでしょう。不幸にもというか、その当時の御家人たちの中でも長生きしたため、幕府としての秩序が求められる中で、一番大きな試練を受けることになり、その試練に耐えきれず滅んだ部分があります。
8.泰時の主張も、一見、理想主義者のたわごとのようで実は正しい。さすが堯舜(古代中国の聖王)のようだと言われただけのことはあります。
なぜ「実は正しい」のかも不明ですし、何よりもこの部分、後の方で「そして、この葛藤、悩みの一つ一つが彼の思考を深め、後に【御成敗式目】を定めるようになった」とありますが、今はまだその片鱗すら出て来ていません。それと、ドラマ中に出て来てもいない漢籍を引っ張り出すのもどうかと思います。こう書きたがるのが武者さんの癖と言えばそうですが。
あともうひとつ、「泰時には具体性があり、ただ単に、ええかっこしいをして平和への願いを叫ぶ、そういう空虚な大河ヒーローとは違います」などとありますが、泰時は大河ヒーローではありませんし、そもそもええかっこしいだけのヒーローなど存在しないはずですが。
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