『花燃ゆ』の高杉晋作の着物が白っぽいことに関しては、以前から何度かこのブログでも指摘していました。高杉晋作というのは基本、書生のまま生き、そのまま世を去ったようなところがあると思いますが、あの白い羽織は、ちょっと書生には見えない、何かそうそうたるお武家のイメージがあります。高杉が登場したころ、文(美和)の弟の敏三郎を遊郭に連れて行くところがありますが、その時は白っぽい格好でもそう違和感は感じませんでした。
ただ、松下村塾であの格好は、やはりちょっと違和感がありました。あの場面では、キャラ設定の上でも、書生らしく黒の羽織を着てほしかったなと、もう高杉が登場しなくなった今でも思います。できれば着物は絣か何かで。『龍馬伝』の伊勢谷友介さん演じる高杉晋作は着流しが中心でしたが、この時の高杉も、お城に上がる時には袴をつけて、しかも黒の羽織を着ていただけに、余計にそう思うのかもしれません。
一方で、『八重の桜』で八重の最初の夫である川崎尚之助も、白っぽい羽織を着ています。彼の場合は書生ではなく洋学者ですので、白っぽい羽織でも説得力があります-汚れるだろうなとは思いますが。まあ高杉役の高良健吾さんにしても、尚之助役の長谷川博己さんにしても、細身だから白の羽織が様になるのだろうとは思います。実際、がっちりした体格の人は、むしろ濃い色の方が様になる感じです。その意味では、高杉の痩身を印象付けるために、敢えてああいう色の羽織を着せたのかとも考えられますが。
ところで、先日もちょっと引用した『胡蝶の夢』ですが、この中に、長崎海軍伝習所の伝習生たちが、黒ラシャの羽織を着ているというくだりがあります。
もっとも、伝習生のあいだでは、 舶来の黒ラシャの生地で羽織をつくることがはやっていた。 ラシャは戦国期から日本が輸入しつづけていた生地で、かつては陣羽織に用いられた。この時代、長崎でそれを買えば、江戸・大坂よりも安くもあり、(松本)良順も勝麟太郎も、このラシャ羽織をはおっていた。このめだたぬ「洋化」は、「いわば陣羽織の心意気だ」という口実があったから、あまり攘夷感情を刺激せずに済んだ。 実はこの当時は、まだ攘夷感情が根強く、伝習所であっても洋式の軍服を着せることは、世論の反発を招きかねないところがありました。世間に洋式の軍服が認められるようになるには、それから10年近くを要しました。
スポンサーサイト