『武将ジャパン』大河コラム後半部分への疑問点続き(その1)です。
鎌倉殿の13人感想あらすじレビュー第28回「名刀の主」 - BUSHOO!JAPAN
(武将ジャパン)
https://bushoojapan.com/taiga/kamakura13/2022/07/25/169845
1.「弱いな。それじゃあいつには響かねえよ」
人数を集めて訴状にする。そして鎌倉殿に訴える。
坂東武者が新たなフェーズに入りました。もっと前なら即座に殺し合いだった可能性もありましょう。
ここで肝心の実衣が何かを察知し、「胡散臭い」と義村にキッパリ言います。
そんな風に言い切る実衣にしても、そう言われて「あんたの頼みだろ」と怒らない義村も変わっていますね。
もっと前なら殺し合いというのは上総広常の件でしょうか。しかしこの場合、相手が先代頼朝の寵愛を受けていた梶原景時で、景時本人が聡い人物である以上、下手には動けないでしょう。相手が和田義盛ならわかりませんが。それと「あんたの頼みだろ」というセリフはないのですが…。「言うじゃねえか」とは言っていますが。
2.重忠も手伝うと言うと、義村は裏に回るには見栄えが良すぎると返します。
「そうですか……やはり見栄えが」
おっと、自覚はあるようだ。
と言うより、重忠の性格からして向かないであろうこと、そしてこれはあらすじと感想で書いてもいますが、こういう仕事は自分の領分と義村が思っているのも大きいのでは。
3.義時はあまり大事にしたくないから、4~5人でいいと釘を刺します。
いや小四郎さんよ、手加減するなら義村と義盛なんて飛び道具使っちゃダメでしょうよ。
クールな義村と熱い(というか暑苦しい)義盛のコンビは、性格が違う分説得しやすいと言えるかも知れません。それに4,5人程度ではあまり効果がないでしょう。寧ろこれは、御家人をまとめるための策でもあったでしょうし。
4.八田知家が飄々として、景時に話しかけてきます。
なんでも侍所が大変な騒ぎだとか。
「飄々」というのは「とらえどころがない」とか「マイペースである」という意味が強いのですが、この時の知家は、ちょっと違うような気がします。あまり慌てた様子ではないなと思いますが。
5.千葉常胤は戦になるのかとワクワクしています。誉ある戦をするなら乗らない手はないってよ。
こういうわけのわからない賛同者もおり、全部で67人になったとか。
「わけのわからない」と言うより、こういう昔気質の坂東武者をも取り込み、署名させることで意味を持たせようという作戦ではあるわけです。だから義村が、加わってくれたことへの礼を述べているわけですね。
6.「ようやく泰平の世が来たというのに、なぜいがみあう! かようなことをして頼朝様が喜ばれると思うか!」
彼はまともでした。土肥実平は本当に善良です。裏表がない。
善良と言うより、愚直と言うべきでしょうか。この人が13人に加われなかった理由がわかります。
7.腕っ節でどうこうすることが得意だった武士が、自分に逆らう者を黙らせる手段を知りました。しかも知恵はない。極めて危険な兆候です。
義盛のことですが、手段を知ると言うよりは、彼もまた義村に利用されている感もあります。まあ最終的には、この義村に裏切られて和田一族は滅亡しますが。
8.善く行くものは轍迹(てっせき)なし。『老子』
うまく進行するものはかえってあとを残さない。
そういう手段に思えます。
りくが時政の署名を切り取ったという記述の後に、この、武者さんが好きな漢籍が引用されています。
しかしこの言葉は、立派な仕事を成し遂げた人ほど、自分の功績だと自慢しないという意味です。ここでりくは、頼家と景時が同盟した場合、御家人たちを危うくさせないために夫の署名を切り取ったわけですが、寧ろこの場合は時政にババを引かせないように、りくが策を練ったと考えるべきかと。
9.また昨年の大河を持ち出して申し訳ありませんが、あの主人公、特に幕臣時代は何が凄いのか理解できませんでした。
俺が! 俺が! 俺が! 胸がぐるぐるする、おかしれぇ!
そういったアピールを繰り返すだけで、肝心の言動に中身がない。到底、賢いとは思えない、押し付けがましさが目立ち、まるで歩く騒音みたいな人物像でした。
もう1度言わせていただきます。今年の朝ドラを持ち出して申し訳ありませんが、あの主人公、上京してからは何がやりたいのか理解できません。
「うちが!うちが!うちが!まさかやー、わじわじ、アキサミヨーを繰り返す一方で、肝心の料理はうまくならない。到底、相手の気持ちを読めるとは思えない。押しつけがましさが目立ち、視聴者を苛立たせる見本のような人物像です」
10.ここで比奈への答えでも。
景時は、一気に増えた訴訟の影響もあると思います。
自分の訴えが通らない御家人が「梶原が余計なことを鎌倉殿に吹き込んだんじゃねえか!」と憤った可能性があるなぁと。
そうなると単純に景時の性格が悪いとかそうは言い切れない。
ただ、諜報のようなことをして、いちいち御家人の言動監視をすれば嫌われて当然ですよね。
訴訟の影響がないわけではないでしょうが、その前から景時は距離を置かれていたのではないでしょうか。元々坂東の御家人とは肌が合わなさそうですし、煙たがられていたのは確かでしょう。故に御家人たちも、景時を色眼鏡で見ていたとも言えるでしょうが。
11.広元が学んだ中国の政治では、文武両方がいれば文官の判断が重視されます。
武力で解決することはよろしくない。そういうルールが徹底していて、こんな風に義盛みたいな武官がゴリ押ししてきても、止める仕組みが整備されています。
鎌倉時代と同時期の中国は、南宋から元。
宋は文弱過ぎて元に滅ぼされたと指摘されますが、宋代こそ朱子学はじめ、国家を安定させる思想や仕組みが極まった時代といえるのです。
広元ならきっとそんなことをぐるぐる頭の中で回しながら、こんな武官のゴリ押しが通る仕組みを変える手段を見出そうとしているのではないでしょうか。
広元にしてみればそうでしょうが、生憎ここは日本です。儒教国家ではありません。
何と言っても、鎌倉幕府も、この後勃発する承久の乱も、武士が台頭したがゆえの出来事であり、広元は寧ろそういう武家の政権作りを手伝っているわけです。この辺が皮肉と言えばそうですが、逆に下級貴族が出世の糸口をつかんだとも言えます。無論武士の暴走をセーブする手段は必要ですが、武家政権ですから、中国的な文官指導の国家にはどう考えてもならないでしょう。
尚義盛は武士ではありますが武官ではありません。これが律令体制下であれば、武官となるかも知れませんが。
12.ここで頼家は、またしても父の悪いところを真似ます。
景時を許せば66人の御家人が黙っていない。御家人をまとめるために上総広常を斬ったことを踏まえ、景時を解任し、謹慎処分としたのです。
悪いところを真似たかどうかはともかく、鎌倉殿に取っては、御家人をまとめることもまた重要であったのではないでしょうか。「泣いて馬謖を斬る」に近いものがありますね。と言うか、頼家に取って景時は馬謖的な存在であったかどうかはわかりませんが。
13.そう花瓶に活ける枝を切っていた鋏を置く景時。洟をすすり、涙ぐんでいるのでした。
「花瓶に活ける」のではなく、盆栽を剪定していたのではないでしょうか。
14.悪の境地かもしれないけれど、感動しました。タランティーノのことも思い出します。
今ではもう大御所のタランティーノは、ブレイクした時、世間にショックを与えました。
彼の映画に出てくる悪党ともは、いとも簡単にさらっと残酷なことをして、しかも楽しそうにしている。心にひっかかりもしないし、殺したことなんて明日には忘れちまう。
そういう軽妙さやユーモアとともに残酷なことが起きていく。そこが斬新だった。
タランティーノが斬新なんて2020年代に言うべきことでもないだろうけど、大河にもそういう流れはちゃんと来ているんですね。
義村の陰謀家ぶりを、タランティーノの悪党になぞらえているのでしょうが、武者さんは以前もタランティーノを持ち出していましたね。でもこれ、大河コラムですよね。それも
「義村の策士ぶりとタランティーノの悪党の清々しさ、どこか共通するものがあります」
程度に一行で書くのならまだしも、ちょっと書き方がくどい。大河にそういう流れが来ているというのも、武者さんがそうあってほしいと思っているだけではないでしょうか。 こういうのこそ個人のサイトとかブログでやってほしいです。
15.正治2年(1200年)正月――景時が竹を斬っています。
中村獅童さんですから、そりゃもう圧倒的に美しい。
こんなに武勇に長けた者が滅びてしまうのか? 見ているだけで胸が苦しくなるような武者ぶり。
このシーンですが、刀身がクローズアップされています。 つまり、後で景時自身が言う、名刀となまくらの伏線になっているのではないかと思われます。
この続きはまた改めて。
それから先日そして今回と、武者さんが『青天を衝け』を叩く(もう止めてはどうでしょうか)のに合わせ、こちらも『ちむどんどん』を批判させていただきました。こういうことをやるべきかとも思いましたが、そしてあの朝ドラ、武者さん、もとい小檜山氏は擁護してはいますが、やはりあまりにもおかしな点が多いです。
景時ではありませんが、この朝ドラは「無駄な時でござった」と思っている人もいるのでは。
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