第21回「仏の眼差し」後半部分です。
時政とりくの間に男児が生まれ、一族が祝福にやって来る。しかし大姫は祖父である時政に元気がない、赤ん坊に命を吸い取られている、親の命は子の命と考えれば気が楽などと不思議なことを言い出す。りくはそっと赤ん坊を侍女に預ける。さらに大姫は元気になると言って「おんたらくそわか」なる呪いを教えると言い、自らを葵と名乗る。
全成は如意宝珠の呪文だろうと言う。場の雰囲気を察した義時は、金剛を外へ出す。取りあえず成り行きを見守ることにした政子だが、今度は畠山重忠が妻の懐妊を時政に伝える。重忠の妻は時政の娘ちえだった。また稲毛重成も、時政の末娘あきを娶っていた。そして八重は、手作りの草履を時政に差し出す。りくは、まるで自分がいつも古い草履を履かせているみたいだと言い、その後すぐ嘘ですよと言い繕う。
政子も八重を褒め、打ち解けたところで子供たちのことを聞こうとするが、その時大姫が時政と、体の弱い叔母のあきに呪文を渡す。その場へ時連が遅れて現れる。大姫に頼まれてイワシを調達していて遅くなったのだった。しかし大姫は食べるのではなく、鬼除けのためだと言い、自分が頭を取って皆に配ると言う。
一同は生臭さをこらえ、改めて政子は子供たちのことを尋ねる。既に子供たちは15人になっていた。しかしりくは不満そうだった。政子が理由を尋ねると、りくは、金剛と孤児たちを一緒にして大丈夫なのかと聞く。孤児たちと金剛とは立場が違うと言うのがりくの言い分だった。
そして北条をもっと盛り立てて行くように一同を促し、ついでに言いたいことがあると言って、万寿の乳母である比企がひいきされているとか、範頼の妻も比企の出身であり、どんどん源氏との関係が深くなっていると不満を洩らし、さらには北条の婿である重忠にはっぱをかける。
時政は伊豆へ行くからと義時を誘う。願成就院の本堂ができ、頼んでおいた仏像をやっと安置できるのだった。その仏像を作ったのは奈良の運慶だった。しかしりくは話をそらすなと言い。大姫はイワシがちぎれないと大声を出す。気を利かせた八重が手伝うことになるが、実衣は大姫が気になっていた。
若い娘はまじないや魔除けが好きだと政子は言うが、実衣は葵というのも気になっていた。全成によれば、それは源氏物語から取ったようだった。葵は恨みを持った霊のせいで早世するが、義時は、義高をあのようにしたは自分のせいだと言う。そして家に戻った八重は、金剛が鶴丸と喧嘩をしているのを目にする。
鶴丸には両親がいなくて寂しいのだと八重は諭すが、しかし金剛は鶴丸には両親がいて、修行に出ていると答える。寂しいからそう言ったのだと八重は取り繕い、色々な所で嫌な思いをしたため嫌がらせをするのだと教える。鶴丸の気持ちを理解するように言う八重に、金剛は、母上は私の母上だけではだめなのかと問い、八重はつらい思いをしている子を助けたい、しかしあなたが一番大事だと金剛の手を取る。
そして三浦義村は、川辺で子供たちを遊ばせている八重に会い、自分の娘と金剛を夫婦にしてはどうかと言い出す。八重は義村に、この先戦はもうないのかと尋ね、義村は戦う相手がいない、御家人同士の戦いがない限りはと答える。八重は義時が、奥州から帰って来て元気がないのを案じていたが、義村は知らんとだけ答え、小用を足しに行ってしまう。
その頃時政と義時、時連は願成就院を訪れていた。奈良からよく運慶が来たものだと言う息子たちに、たんまりはずんだからだと言う。一方願成就院では、覆いをかけた像を除こうとした時連に、当の運慶が触るなと言う。運慶はまだ呼ぶのは早いと、住職に親し気に口を利き、他の像も仕上げをしている最中だと言った。
仏像は薄明りでこそ引き立つと言う運慶。薄暗い室内の、覆いをかけた阿弥陀如来を見たいかと時政に尋ねる。そして自分は受けた寄進に見合った像を掘るだけ、その上へつらうことはないと言いつつ、覆いを取る。 運慶は、阿弥陀仏は生ある者をすべてお救いになると言い、どことなく顔立ちがある人に似てしまったと言うが、誰であるかは教えなかった。時政は気をよくし、ここで一献どうかと誘う。運慶も断る理由はなく、阿弥陀様も一緒に飲みたいってさと上機嫌だった。
一方八重が連れて来た子供たちのうち、鶴丸が川に流されてしまい、奥の岩にしがみついて泣いていた。八重は千鶴と言いながら、川へ入って行き、鶴丸を抱いて戻ろうとする。そこへ用を足しに行った義村が戻り、鶴丸を八重から受け取って岸まで戻るが、その時八重がいないのに気づく。
政子は知らせを受け、表に出ると義村がいた。三浦の家人が川下を探していると言う。きっと助かると言う政子だが、大姫はもう亡くなっていると素っ気なく言う。馬鹿なことを言わないでと政子は叱り、全成に祈祷をさせようとする。義村に声をかける足立遠元だが、義村は助かる見込みは百に一つもない、小四郎もほとほと運のないやつだと言って去って行く。
頼朝もこれを聞き、御家人総出で探すことになる。実衣は頼朝の態度をよく思っていなかったが、政子は夫が真剣であると信じていた。そこへ範頼が来て、無事に戻ってくると言うが、祈祷中の全成の燈明皿の火が急に消える。そして伊豆では時政が酔いつぶれていた。運慶は平気な顔をしていたが、仏前ということで酒を飲んでいなかったのである。
御所では政子が八重の情報を待っていた。そこへ仁田忠常が現れ、八重の死を告げる。同じ頃、伊豆では義時が阿弥陀如来像を見上げ、息子の寝顔を見ている妻の顔に似ていると言う。運慶自身は、自分の母に似せてこの像を作っていた。
八重退場回となりました。しかし大姫がちょっと不思議な子になっています。あの「おんたらくそわか」は真言で虚空蔵菩薩ではなかったでしょうか。虚空蔵菩薩といえば、『真田丸』で虚空蔵山城が出て来ましたね。それとイワシの頭云々、いくら何でもあれではかなり生臭いと思われます。それと、時政の娘たちがここで出て来るのは、ちょっと今更感があります。彼女たちの婚姻についても、今までの回で触れられてもよかったのではないでしょうか。
それと「葵」。葵の前のことかなと思ったのですが、やはりそのようです。結構大姫は源氏物語などは読んでいるのですね。ただこの大姫、言っては何ですがあまりお姫様らしい印象は受けません。 一方りく、比企が羽振りをきかせているのが面白くないようです。長男が生まれたことで、余計その思いが強くなっているのかも知れません。
そして鶴丸の件ですが、金剛の言葉が本当なら、やはり両親が飢饉で死んだというのは事実ではなさそうです。こういう施設があると聞いて、妻以外の女性の間にできた子を、孤児と偽って預けるような人もいたでしょうし。三浦義村しかり。その義村を演じる山本耕史さん、『真田丸』同様上半身裸になって、今度は川に飛び込みますが、個人的に『きのう何食べた?』の、小日向大策のタンクトップ姿も同時に思い出します。
タメ口の運慶と時政、何となく気が合いそうです。ところでこの願成就院、本当はもう少し取り上げられてもいいかと思います。それから鶴岡八幡宮の三重塔や五重塔も作られているのですが、あまりそういうのが登場しませんね。個人的には女性たちのシーンを少しでも割いて、こういうのに回してほしいです。
それとこれは三谷さんのこだわりなのでしょうが、呪術的なシーン、たとえば冒頭の道を直すなとか、重忠が、天狗に稽古をつけて貰った義経を殺したから神罰なのだと言うシーン、それはわかりますが、他にも史実、少なくとも吾妻鏡に載っている部分をもう少し出してほしいものです。
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