義経のキャラ設定に関して言えば、やはり「戦の天才」となるのでしょう。ただひとつ前で書いていますが、この「天才」という評価の意味合いがある言葉より、梶原景時の「己の信じた道を行くには手を選ばぬ」という、ややダーティーな印象を与える表現の方が、私としては納得できます。
そして異なる二人が己の信じた道を行くには、どちらかがどちらかを排除する必要にもまた迫られます。頼朝が政治的手腕を発揮できたのは、義経が表舞台から去ったことと関係しているでしょう。ブレーンにもそこそこ恵まれていましたし。ただこの人物に関しては、どちらかと言えば冷たくて神経質で、プライドが高かったのではないかと思われます。
話を義経に戻しますが、この大河では鎌倉へ向かう途中、狩りをしていた男を殺して獲物を奪ったり、富士山に登ってみようとはしゃいだりで、既にこの時二十歳を越えているにも関わらず、何やら幼い印象をも受けたものです。野性児キャラにしたかったのかもしれませんが、いささか無理があったようにも見えます。「まっすぐ」キャラであれ野性児キャラであれ、やたらに大きな声で騒いだり、傍若無人に振舞ったりするだけではないでしょうし、逆に鎌倉に着いてから、義高と会話をしている時の方が自然な感じでした。
ところで義高といえば大姫ですが、彼女の描かれ方にもやや違和感があります。義高逃亡の際、大姫は父に義高を殺さないでくれと誓紙を書かせ、部屋を出て行く時に、首桶を一瞬目にしていると思われます。ですからその次の第18回で、彼女がふさぎこんでいるシーンを観て、既に大姫は義高の死を知っているのだなと思ったわけです。実際ガイドブックにもそうありましたし、政子や実衣もそう話していました。セリフでそれとわからせるのは、どうかなとは思いましたが。
しかしどう考えても、義高の死から壇ノ浦まで1年近くあるわけで、ちょっと引っ張り過ぎではないでしょうか。何か脚本に変更でもあったのでしょうか。しかも第19回で、頼朝が八重に相談らしきことをしていて、義高を殺したことを口走ってしまい、そこに大姫が居合わせるという設定になっています。ここまで大姫をちょこちょこ出すよりも、せめて第18回の時点で彼女の心の内、例えば今も義高を慕っているとか、父を許していないといったことを描けばよかったのでは。
何よりも大姫が子供らしくなく、自分の感情を抑えているようにも見えます。特に義高が姿を消した直後は、どこに行ったのと周囲に訊いたり、殺されたのではないかと尋ねたりしてもよかったかと思います。無論そういう行動を大姫自身が起こすには、義高ともっと行動を共にしておく必要があり、今後頼朝と政子にも影響を与える人物であるのに、そういう部分が省かれたのは惜しいですね。
それと八重に関して。少し前に、『麒麟がくる』の駒を思わせると書いたことがあります。無論八重は実在の人物ベースで、その生涯もいくつかの説があることから、ああいう描写もないとは言い切れませんが、何かにつけて彼女を出してくる、意見させるといったシーンが多く、その都度彼女を絡めた創作を入れる必要があり、その点に関してはどうかと思っています。
今後八重はいつまで出て来るのでしょうか、そして、義時の正室の姫の前はいつ頃登場するのでしょう。頼朝の将軍就任の頃に2人は結婚し、姫の前は朝時と重時を出産します。この人も比企氏の出で、比企の乱後は離縁し、源具親と再婚します。
(2022年5月22日一部修正)
スポンサーサイト