第13回後半です。尚常と里、先日比企能員の娘のように書いていましたが、正しくは、一族の娘ですね。
範頼と義経は比企館に呼ばれる。義経は嬉しそうに信濃行きの件を範頼に話すが、頼朝には秘密だった。やがて道が血縁関係にある常と里の2人を連れて来る。義経は一目で里が気に入ったようだった。そしてその翌日、範頼と義時、そして三浦義村が信濃に発つ時刻になっても、義経は現れず結局3人で行くことになる。義経は里と浜辺の小屋で一夜を過ごし、目を覚ました時は既に日が高かった。
3人は信濃に着くが、義仲は釣りに出かけていた。すると行家が現れ、義仲はどこぞの誰かと違って自分を大事にする、逃がした魚は大きいと不敵に笑う。魚が自分で言うかと義村は苦々しげだが、範頼は実の叔父であるため挨拶をしに行く。義村は義時に、時政がいなくなって家督を継ぐのかと尋ね、何が起こるかわからない人生が羨ましいと言う。しかし義時も今の状況を予想すらしておらず、すべては頼朝が来たことによって変わったのだった。
そこへ義仲が戻って来る。客をもてなすために川魚を釣っていたのである。焚火を囲みながらの酒宴で、義仲は源治が一つになって平家を倒すのが望みだと言うが、義村は口先だけなら何とでも言えるとそっけない。義時は平家に通じているという噂について尋ねるが、義仲は言う。
「うわさとは流す者に都合よくできている。惑わされてはならん」
そして北陸に兵を進めたのは、東海道で頼朝や信義と鉢合わせをしないためだった。
ところでこの宴席での魚は生焼けだった。そのため範頼が、人質のことを言いかけたところで腹具合を悪くし、厠に立ったため、後は義時に委ねられた。非を詫びる義仲に義時が、人質の件を切り出す。行家では人質にはならないと義時も義村も考えていたが、義仲は如何なる男でも、自分を頼って来た人物を追い出すことはしたくないと言う。そして嫡男義高を差し出すことに決め、男には守らねばならぬものがあるとも言い、引き換えに何を望むこともなかった。
巴は竹筒を組み合わせ、ヤツメウナギを捕らえる罠を作っていた。おめかしすれば相当いい女子だなと減らず口を叩く義村だが、義時は木曾殿は鎌倉殿とは違い、素晴らしい方だと巴に言う。巴と義仲は幼馴染だった。そこへ義村がまた茶々を入れたため、巴は切り捨てられたいかと、義村に持っていた小刀を向ける。女にちょっかいを出したがる男だと義時が弁明してやるが、巴は既に色恋は捨てており、義仲に終生尽くすつもりだった。
義高は鎌倉に行くことを承諾し、父のためならどんな苦労もいとわぬと決意する。源氏同士で争わない限り、必ず信濃に戻れると義時。そして義仲も、息子に自分を信じるように言う。そして鎌倉では、頼朝が鹿狩りの帰りに密かに亀の詫び住まいを訪ねていた。しかしそこに政子がいるのを見つけ、一旦はその場を離れるものの諦めきれない様子だった。
家まで焼き払ってまだ足りないかと訊く亀に、手を引くように政子は言うが、亀は歌を一首披露する。
「黒髪のみだれも知らずうちふせば まづかきやりし人ぞ恋しき」
この男女の逢瀬を詠んだ歌に、政子が怪訝な表情をしていると、亀は和泉式部の作だと言い、さらにりくから渡された和泉式部の日記は読んだかと尋ねる。ざっと読んだと答える政子に嘘だと亀は言い、伊豆の小さな豪族の家で育った行き遅れが、急に御台所になり、勘違いしても仕方ないけど、自分が本当に鎌倉殿の妻としてふさわしいのか考えろと説教する。
亀はさらに、坂東の女の憧れの的である御台所、その御台所と呼ばれて恥ずかしくない女になるように諭し、そのように考えたことがあるかとも尋ねる。政子は正直に考えたことはなかったと言い、今後のことを頼みますと慇懃な口調の亀に、何を詠んだらいいのかと教えを乞う。そして江間では八重も書物を広げていた。そこへ頼朝がまた現れる。
尚も八重を口説こうとする頼朝だが、指をかまれてしまう。仕方なく頼朝と盛長は引き上げるが、その様子を陰で窺っていた男がいた。義時だった。義時は館に入り、干したヤツメウナギやヒコウ(イナゴ)、リンキン(リンゴの一種)などを広げる。そんな義時に八重は、もし慕っているのなら、なぜ鎌倉殿とのことを訊かないのかと詰め寄る。結局八重自ら何もなかったことを伝え、義時は安心したかのように、今度はキノコを差し出す。
それでも不満そうな八重に、キノコはお嫌いだったかと義時は言い、そして、鎌倉殿とどのような関係になろうが、私のあなたへの思いは変わらない、貴女にはやはり伊豆の景色が似合う、ずっとここにいてくれと言って帰ろうとする。八重はそんな義時に初めてねぎらいの言葉をかけ、お帰りなさいませと挨拶をして笑顔を見せた。ただいま帰りましたと言う義時は嬉しそうだった。
木曽義仲のシーンはわりと好きです。義時のセリフではありませんが、義仲と頼朝の違いが描かれます。生まれ育った環境の違いもあるのでしょう。この信濃の素朴な暮らしは、どこか『真田丸』をダブらせているようにも見えます。
その義仲の酒宴、魚の生焼けにあたったのか、範頼が厠に立ってしまいます。そこで義時が人質の話題を切り出すのですが、第1回でも、厠に行くというシーンがありましたね。しかし川魚の場合、顎口虫なる寄生虫がよくいるらしい。川魚も生食しないようにと言われますしね。ちなみにこの寄生虫を倒すのは、『はたらく細胞』にも出て来る好酸球との由。
一方頼朝ですが、性懲りもなく亀の家、そして八重が住む館を訪れます。幸い前者では政子と遭遇し、後者では八重に指をかまれてしまったことで、退散せざるを得なくなるのですが。しかし頼朝の描かれ方は、都育ちということもあるのですが、いくらかチャラい印象も受けます。これ、例えば大江広元役の栗原英雄さんが演じていたらまた違ったでしょうか。
義高初登場、如何にも凛々しげな若武者です。演じているのは市川染五郎さんですが、『真田丸』で2度目の助左衛門を演じた松本幸四郎(現・白鷗)さんのお孫さんですね。そして鎌倉で、この人は大姫と出会うことになります。
このサブタイの「幼なじみ」、義仲と巴、義時と八重がそれぞれ描かれました。しかしやはり八重のシーンは、義時と関係があるとはいえちょっと多くないかと思います。その尺で平家を描いて貰えないでしょうか。あと、亀がやけに政子にマウントを取っているように見えますが、彼女はどこで文筆を習ったのでしょう。この人、政子の家庭教師も務まりそうですね。
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