『黄金の日日』第34回です。この当時は年末ぎりぎりまで放送が行われていたのですが、それでも、もう3分の2ほどが終わったことになります。いささか気が早いのですが、来年はどうなるのでしょう。大河の時代に合わせるのなら源平物(恐らく『義経』か『平清盛』)となりそうです。鎌倉時代という視点から見れば、『北条時宗』もありでしょうか。
さて、助左衛門は五島に漂着します。天正13(1585)年7月、お盆の時期です。ここで堺までの旅費を調達するため、例の海賊船にあった書物を長崎で売ろうとしますが、あまりいい値はつきません。一方で、長崎にはイスパニアの船が来ていることに助左衛門は驚きます。
こうして何とか堺に戻った助左衛門ですが、何せ船も積み荷も失い、船員たちも行方知れずになったことから、一からやり直すことになり、人足として働くことになります。それを見た桔梗は、今井の館へ行って美緒に借金を申し出ます。そして彼女は今井家で暮らすことになります。
助左衛門は借金の返済もあって、米を商うことになり、また千宗易から譲られた納屋を抵当に、小西行長に船を借りたいと頼み込みます。行長は快く承諾し、美緒からの五十貫文を助左衛門に渡します。同じ頃秀吉は関白となり、東国の米と堺の銭を大坂に入れるべく、堺の濠を埋めることを計画していました。その目的のためにまず、三成を堺の奉行に任命します。
今井家の主宗薫は、徳川との関係を強めていました。そして美緒に、自分の名代として大坂に行くように言います。しかしこれは、美緒を、豊臣を名乗るようになった秀吉に、差し出すことに他なりませんでした。宗薫の真意を行長から聞かされた美緒は、東国へ行くという宗薫と別れることを決意し、単身大坂へ行くことになります。
大坂行きの日は雨が土砂降りでした。その日助左衛門は久々に三成に出会い、長崎にイスパニア船がいたことを伝えて注意を促します。その後積み荷を下ろすものの、淀川が氾濫しそうだとの知らせに、米俵を土嚢の代わりに積み上げることになります。そこへ奉行の三成がやって来て、この大胆とも取れるやり方に感心し、京橋口の米蔵から米俵をすべて持ち出して、川の氾濫をせき止めようとします。
その夜堺では、またも五右衛門がやって来ます。桔梗から、美緒が大坂に向かったと聞かされた五右衛門は、即座に馬を借りると雨の中に飛び出します。そして、雨の中動けないでいた美緒の輿の列を見つけ、彼女を馬に乗せると、どこへともなく走り去って行くのでした。
大体こんな感じですが、秀吉関連以外の大部分が創作と思われます。無論それはそれでいいのですが、秀吉の政策に関してあまり描かれていないのは、ちょっと物足りない気もします。やはり武士でない人物、記録がはっきりしない人物を主人公にすると、このような描き方にならざるを得ないのでしょう。
ところで秀吉が御伽衆に一代記を書かせるシーンですが、実際この人は、萩中納言なる人物の落胤が自分であると言っていたようです。しかしこれ、どう見ても捏造ですね。『軍師官兵衛』でも、秀吉が公家たちに、萩中納言がどうのこうのというシーンがありました。
あと、南蛮渡来の物を扱うという設定上もあってか、助左衛門と桔梗、銭丸がテーブルと椅子で食事をしていますが、ここだけホームドラマといった感じです。
それにしても銭丸、桔梗が今井に行くとなって妙にすねた態度を取ります。しかしこの桔梗、五右衛門が来た時は店にいたことから、やはり今井の家は出て行ったのでしょう。その今井の当主宗薫。家康は負けないなどと言っていますが、この時点ではまだ今後どうなるかわかったものでもなく、かなりのギャンブルともいえます。息子の小太郎は堺に置いて行くようなので、「親権」は美緒にあるということなのでしょうか。
それにしても五右衛門、流石に盗賊というべきか、美緒たちがどこにいるかの勘はかなり働くようです。
あと三谷幸喜氏が、この『黄金の日日』が好きだったこと、そして創作部分が互いに似通っていることなどは、前にもちょっと書いています。やはり好きな作品の影響は大きいです。ただ三谷さん、大河は本当に歴史が好きな作家じゃないと書けない、本当にこの人物が好きなのか、過去に疑問に思うような大河もあったなどと発言(2014年当時)してもいますが、これはさてどうかなと思います。
この場合、何をもって「歴史が好き/嫌い」を定めるかもはっきりしないし、『真田丸』の九度山編とか最終回などは、ご本人が本当に歴史が好きであるのなら、もう少し書きようがあったのではないでしょうか。また「疑問に思うような大河」、これは『おんな城主 直虎』の森下佳子さんが、ちょっと似たようなことを言っていました。ただし森下さんの場合は「史実に縛られ過ぎ」と語っていて、その辺が三谷さんとやや違ったところではあります。その疑問に思うような大河とは、『天地人』あるいは『江』だったのでしょうか。
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