第6巻の続きです。一応これを持って本編の紹介は終わりですが、色々と思うことがあるため、これとは別にシリーズ全体を振り返っての投稿をしたいと思います。あと先日投稿分、一部修正しています。
<特別編 乾癬>
赤血球は表皮に来ていた。表皮付近は道が複雑であるため、またしても白血球1146が案内をしてくれることになる。ここはトラブルも多く、樹状細胞とヘルパーT細胞も常駐していた。そんな赤血球の顔に、表皮細胞増殖計画書なる紙が貼りつく。これが何のことやらわからないまま、ビキニ姿で関西弁を使う表皮細胞に酸素を届ける赤血球だが、彼女たち彼らは上へ行く計画を立てていた。
表皮細胞は古いものほど上へ行く決まりがあり、ヘルパーT細胞などからの指示で順に上がって行っていくのである。しかしその日は空が荒れそうで、こんな日は危ないから早く帰った方がいいと2人は言われてしまう。見た目ちょっと軽めなのとは裏腹に悲しそうな目つきは、そういうトラブルに晒される彼らの日常を物語っていた。
その後表皮付近で雷が発生し、のんびりしていた樹状細胞とヘルパーTも仕事に戻るが、この雷のせいで、樹状細胞はプロスタグランジン4の数値が上がって活性化し、サイトカイン=ヘルパーT細胞の昔の写真をばらまいてしまった。これによってヘルパーTも活性化してしまい、その結果増殖計画書が大量に届いて、表皮細胞が過剰に分裂増殖してしまう。増殖し過ぎた表皮細胞たちが上がって行く順番は大いに混乱し、家(皮膚)がぼろぼろに崩れて行った。
<新型コロナウイルス>
赤血球が酸素を届けた先の細胞が、やけに神経質になっていた。この細胞は分裂したてで、コピー元の細胞から、まだ色々なことを教えて貰っている最中だったのである。その時細菌が侵入し、白血球1146がやって来て撃退したが、ウイルスについて白血球から教えて貰った新人細胞は、ウイルス感染細胞は細胞もろとも殺すと知り、彼らを追い出してしまう。その頃記憶細胞やB細胞は、今まで見たことのないウイルスを相手にしていた。
このウイルスたちは、スパイク状の突起がついた帽子をかぶっていた。すぐにはダメージが出ない場合でも、他者に感染させるリスクをはらんでいた。その後味覚神経と聴覚神経がダメージを受けてしまう。そのためサイトカインIL-6が放出され、免疫細胞が活性化されて、キラーT細胞や白血球たちがウイルス撃退に乗り出す。しかしサイトカインの放出量が多すぎてサイトカインストームが起こり、キラーT細胞が正常な細胞をも攻撃し始める。
また血管が傷ついて血栓ができてしまう。さらにサイトカインストームがもとで、肺胞組織が破壊され始め、赤血球は急いで酸素を運び、多臓器不全を防ぐべく努力する。惨憺たる状況のもと、免疫細胞も普通の細胞もひどく荒れていたが、その後抑制性サイトカインが放出され、免疫細胞たちは我に返った。そして細胞たちと、この未知のウイルスとの戦いは終わりを告げたのである。
まず乾癬の方ですが、特別編とあり、恐らくは当初計画になかったものが追加されたと考えられます。また、皮膚の構造を紹介するという狙いもあったのでしょう。乾癬そのものは、外用薬を使って治すことになりますが、それ以外にも内服薬を使ったり、紫外線によって治療をすることもあります。尚この特別編は、製薬企業であるセルジーン株式会社の提供です。
ところで表皮のヘルパーT細胞といえば、『はたらく細胞フレンド』で、困りものの免疫細胞たちを表皮の保養所に連れて来てのんびりしようとしたものの、彼らがその表皮でまたひと騒動やらかすなどというのがありました。結局この時は、免疫細胞たちが花火を上げ、一般細胞たちを楽しませた後、ヘルパーT細胞に感謝のケーキを渡してめでたしめでたし…となるはずだったのですが、ケーキを渡す役の好酸球が緊張して自爆してしまい、新たなトラブルを引き起こしてしまいます。
樹状細胞も、フレンドでは相当な乳酸菌オタクです。そのため乳酸菌グッズと一緒にいない本編の樹状細胞は、何やら不思議な存在に見えます。両方ともキャラデザインはかなり似通っていますので。
それから新型コロナウイルス。正直言って、これは時期尚早な感じもしました。この作品が発表されたのが、2021年の1月下旬ですが、その頃は医療関係者のワクチン接種が行われる一方で、デルタ株が問題になっていて、何となく新たな不安が形成されつつある時期でもあり、単行本化された時期もなお、この描かれ方にあまり共感できなかったせいもあります。
話題性ということもあったのでしょう。しかしまだ治療方法が確立されていない、特効薬も一般に出回っていない病気である以上、予防策も改めて取り入れ(既に他の関連本で紹介されているため)、これだけ別冊にして出すといった方法もあったかとは思います。
そしてサイトカイン、このシリーズでは「過去の恥ずかしい写真」をばらまくのが通例となっていますが、この回でも何やら励ましの言葉とか、お茶しましょうなどといったビラが降って来る設定です。しかしこの乗りの軽さと、その後のサイトカインストームが与える深刻さが、どうも噛み合わないような気がするのですが…。
その後例によってというべきなのか、赤血球無双の展開になり、その後また白血球と一緒にハッピーエンドとなるのですが、これもどうもワンパターンだなと思います。確かに、サイトカインストームの中で仕事を続けた勇気は買いますが、私としては、やはり『はたらく細胞BLACK』の、抗がん剤で体中が爆撃される中、自らもダメージを受けながら酸素を運ぶ赤血球たちの姿の方に、より真摯なものを感じます。
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