ある日、神部尊はパスポートの更新で半休を取っており、特命室に1人でいた杉下右京の元に、大学時代の友人の加藤誠から会いたいと電話がかかって来た。加藤はかつて大学の研究室にいたが、現在は財団法人の植物遺伝子工学研究所に勤務していた。そこにはローズマリーを始め多くの植物が、再生エネルギー用植物として栽培され、納品間近になっていた。しかしそこで杉下は、架空の研究で研究費を横領した者がいることを知らされ、力になってほしいと頼まれる。
その後出勤してきた神戸が電話を取るが一旦切れる。電話をしたのは女子高校生の加藤美咲、加藤誠の娘であることがわかった。自分の父親が、共同研究者の倉田真理の自殺に関わっているのかどうか知りたいという美咲。かつて美咲の母恵子も、父誠の共同研究者を務めていたが、出かけた南米で食中毒となり、そのまま絶命した。卵料理の中毒とされていたが、美咲は、母は卵が苦手だったという。しかもそれぞれが亡くなった後、加藤は自分の名義で論文を発表していた。神戸は美咲に、父親に直接問うべきと諭すが、アメリカ留学絡みで対立し、口を利く機会がないと美咲は答える。
杉下は民間企業の社員を装い、所長の桑原に会って、それとなく様子を探る。しかし加藤から、所長は企業の人間を軽んじるから、警察であることを表に出すべきと助言される。傍ら杉下は、自殺した倉田の部屋を見に行った。倉田の死因は、自室のドアノブに掃除機のコードを引っかけて首を吊ったことによるものだった。しかし、彼女の部屋には延長コードがあり、何が何でも掃除機のコードを使う必要はなかった。しかも、クローゼットの中にはクリーニング済みの白衣が何着もあったのに、1着だけクリーニングのタグがない物があった。杉下はこれらの点に不審を抱く。
一方神戸は、加藤家で見つけたファイルについて正面から話を切り出し、倉田の本来の所属先である帝都燃料で、彼女の私物を見せてもらうところまで漕ぎつける。そんな矢先、桑原がヘッドハンティングで突然辞任したが、実際はどうやら不正絡みのようだった。杉下は、自分は加藤の友人だからいいが、確たる証拠もなしに取り調べをしてはいけない、軽率な行動は慎むように神戸に伝える。神戸は、杉下さんの言葉とも思えないと反論する。そしてこの2人は、またも研究所で顔を合わせ、神戸は、さらなる警告を発する杉下を殴ってしまう。君は警察官でなく犯罪者であると110に電話をする杉下。そして証拠物件として、栽培されている植物を持ち出すことになる。
その持ち出された植物の一部に、次亜塩素酸ナトリウムを掛けようとしている男がいた。それは研究員の竹山で、サボテンについた血を拭き取ろうとしていたのだった。竹山は、自分との結婚を行け入れてない倉田を殺し、自殺のように偽装していた。また殺害時に倉田がサボテンの棘で指を刺したのを、彼女が掃除機のコードをカッターで切断した際、自分で指を傷つけたように見せかけてもいた。倉田の私物の中には開封されていない指輪があり、クレジットカードのレシートから、竹山が購入したものであること、そして研究費の不正に絡んでいたことがわかった。間もなく竹山の身柄は、捜一の3人によって警視庁に護送された。
この杉下と神戸の対立は、植物を運び出すために一芝居打ったものだった。加藤は呆れながらも、自分も所長追い出しのために警察を利用したことを認める。そして杉下は、ローズマリーの花をかざし、この花は燃料は無理だが、ある薬効があると伝える。実は、加藤の妻恵子は成人T細胞白血病 (ATL)のウイルスであるHTLV-1のキャリアで、南米で急死したのはそのためだった。母子感染を恐れた加藤は、そのために美咲のアメリカ留学に反対し、抗癌作用のあるローズマリーから薬を作ろうと研究していたのだった。杉下は加藤に、「ロレンツォのオイル(*)」だと伝えて、神戸とその場を去って行く。その後加藤は、娘に本当のことを話す決意を固める。
(*)ロレンツォのオイル-ある銀行家が難病の息子を助けるため、独学で息子の病気について学び、食事療法でオイルを摂らせ、いくらかの回復を見た実話に基づく映画。
ウィキ記事 も参照。ちなみに右下の花はローズマリーです。
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