前回の続きで、ドラマの中の細かい部分を書いて行きます。まず、杉下と右京が査問を受ける時に、例の「ピルイーター」、大河内が登場します。この人は、特に「相棒」が神戸尊になってからはかなり出番が増えますが、この何とも独自性がある、しかも特命に一定の理解を示すキャラはなかなか存在感があります。しかし、薬による殺人が話題になる回に初めての登場とは、制作側も結構意識していたのでしょうか。
それから、警察庁の長官官房室長の小野田です。元々殺された3人が名を連ねる親睦団体の七日会に、小野田自身も名を連ねており、杉下と亀山の前では知らないふりをしていたものの、実はこの人も、小暮ひとみと一緒に食事をする仲でした。どこかとらえどころがない、一筋縄では行かない一方で、自分に馴染みがない部分は決定的に疎いところがあり、この中でも、杉下や亀山と回転寿司で寿司を食べた後、皿をレーンに戻してしまって、注意されるひとこまがあります。
それから、小暮ひとみが自殺を図った際、なぜベラドンナでなくドクニンジン(コニイン)を使ったのか。それは、ベラドンナほどの即効性がないため、家に来ていた杉下や亀山がすぐに自分を発見し、119番通報をすると踏んだためでした。とはいえ、このドクニンジンもかなり毒性が強く、危険であることに変わりはないのですが。ちなみにこのドラマでは、コニインはソクラテスの処刑に使われた毒ですねと、杉下が博識ぶりを披露します。そして回復した小暮は、今度は態度を一変させ、自分には罪はない、杉下と亀山に脅されたといって、2人が今後、刑事として生き残れるかどうかを左右することになります。
また杉下は、小暮がベラドンナの前に自分を案内したことと犯罪の関わりを指摘します。ナス科でアトロピンを含む毒性植物といえば、他にチョウセンアサガオがあり、もちろん東亜薬科大の薬草園でも栽培されていたのですが、なぜかその前ではありませんでした。ところでベラドンナは、用法を守れば薬としても使え、身近なところでは鼻炎薬に配合されています。
しかし、この中で一番インパクトが強い人物といえば、やはり浅倉でしょう。要は、自分の仇を晴らしてくれと杉下と亀山に頼んだようなものですが、その連絡を取るためにあのような手段を取る辺り、よくも悪くも只者ではないと思わせる所以です。時に狂人と紙一重のような表情を見せる浅倉は、結局投身自殺を疑われたものの死んでおらず、しかもかなり惨憺たる余生を送ることになります。『みんなが好きな相棒 特命研究ファイル』によれば、彼はまさに、トマス・ハリスが生み出した
レクター博士 (『羊たちの沈黙』などに登場)の後継者といえます。先日、彼はロック・ホーム=間久部緑郎と、字こそ違えど同じ名前だと書きましたが、このレクター博士は多指症であり、ブラック・ジャックにやはり多指症の手術をしてもらった間久部とも酷似しています。ちなみにこの指を切り取り、アルコール漬けにするという展開の作品は、問題ありとみなされて、現在はオリジナル版は「封印」に描きかえられています。
詳しくはこちらで。
http://u777u.info/npp5
間久部緑郎の項
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