この「内海薫最後の事件」はスピンオフ作品で、内海薫が主人公となって、上念研一の悪行を暴く展開になっています。湯川学も内海にヒントを与える程度にしか顔を出しません、つまり「内海薫ワールド」といえ、モノトーン、タイト、真面目、ひたむきといった彼女のイメージが、強く感じられるようになっています。『ガリレオ』は第2シリーズで、女性刑事岸谷美砂が登場し、貝塚北署での内海のポジションを引き継ぐ格好になりますが、この2人はかなり対照的です。
内海に比べ岸谷は派手好き、先輩刑事にタメ口を利く不思議ちゃんといった印象で、ある意味お嬢ちゃま的な刑事でもあります。初回のハイヒール(10センチ近くありますね)での捜査中に、足を傷めてしまう所も、彼女のキャラを物語っているといえます。結局彼女もその後は、黒っぽいパンツスーツに中ヒールの靴というスタイルになるのですが、湯川への接し方や扱う事件もまたかなり異なったものがあります。
たとえば第1シリーズに比べると、第2シリーズの脚色はオカルト的な物が多い印象があります。実際岸谷は署で「オカルトちゃん」などと呼ばれています。内海が研究室を訪れる際は、大なり小なり彼女が関わった事件、つまり仕事に関するものであったのですが、岸谷の場合は、湯川と学生たちの実験を見学しにやって来ている時もあります。また、内海が研究室のインスタントコーヒーを飲んでいたのに対し、岸谷は外でコーヒーをテイクアウトして、研究室に持ち込んで飲んでいるという違いがあります。
バディというのは本来男性同士のものを指しますが、敢えて湯川と内海、あるいは岸谷の関係をもバディと呼ぶのであれば、その言葉がふさわしいのは、湯川と内海のように思えます。湯川と岸谷は、不思議ちゃん的な部分では何かしら似通った感があり、そこがどこか反発を招いているようにも感じられます。無論それぞれのシリーズに、それぞれの持ち味があって面白くはあるのですが、個人的には第1シリーズの方が好きです。しかし『真夏の方程式』では、岸谷が多少内海的な雰囲気を醸し出しているように感じられます。それだけ大人になったということでしょうか。それにしても、本来は彼女たちと先輩刑事が相棒関係にあるべきですが、その先輩たちがお世辞にも有能といえないのが痛し痒しです。
それにしても、この作品の最後の内海の号泣は何だったのでしょう。何かふっ切れたようにも取れますし、まだ自分は未熟だと悟っていたようにも見えます。ともあれ、彼女はこの後オクラホマ研修へ旅立ち、その時湯川に恐竜の模型をお土産として持ち帰るのですが、岸谷が勝手にそれを作ってしまうのが、また彼女らしいともいえます。
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