先日の投稿の続きです。「ワールドラグビー会長選に関する2つの記事」の中で、今度は日経新聞に言及している部分です。この時日経の谷口記者は、このように書いています。(少し長めです)
一連の流れからすると「昇格」は自然の流れでもある。選挙中、ピチョット氏の側も日本を「ティア1入り」させる意向を伝えてきたと関係者は明かす。だとすれば、重要なのは選挙の行く末を見定め、新たなリーダーからの確約を得ることだったのだろう。
「今回は日本のラグビー界にとって極めて大事な選挙だった」と協会幹部は言う。「大一番」への準備は1年近く前から進めてきた。W杯中には開催国の利を生かして多くの関係者と面談。投票の締め切り間際まで両陣営をはじめ、様々なルートで情報収集に努めている。
(ピチョット氏は)ティア1とティア2の対戦機会の増加などの改革を訴え、各国のメディアやSNS(交流サイト)に大量に露出。昨年のW杯中には日本協会のスタッフの連絡先まで尋ねるほどの熱心さで周囲を驚かせた。
終盤には両陣営に痛手が発覚する。ボーモント氏を支持するフィジー協会の会長に同性愛への差別行為の疑いが発覚し、突然の辞任。ピチョット氏にも、設立した企業がWRとの利益相反にあたるという批判が出た。
「寝返り」も相次いだ。ボーモント陣営に立つと公にしていたルーマニアが反対派閥に移った。逆に、アフリカ協会は地元の大国、南アフリカなどの意思に反してボーモント氏に2票を投じている。
選挙中にはピチョット氏が勝ちそうな局面もあったというが、最終的な票数はほぼ日本の分析通りだった。刻々と変わる潮目を読み、適切な時期に適切な交渉をすることで、次期会長から言質を取ることに成功した。
選挙結果は日本の処遇以外にも様々な影響を及ぼす。例えば代表選手の資格。現在、選手は3年間住んだ国の代表になれるが、来年からは期間が5年に延びる。ピチョット氏が勝てば、資格はさらに厳格になる見通しだった。日本代表は多くの海外出身選手を抱えるだけに「ボーモントでよかった」と代表関係者は胸をなで下ろす。
この記事からは以下のような点が読み取れ、寧ろこちらの方が会長選挙の全体像もわかりますし、なぜ日本がボーモント氏に入れたかも納得できます。
ピチョット氏も日本のティア1入りには賛成であった 但し日本としては、新しい会長の確約がほしかった ピチョット氏は特に選挙活動には熱心だった 終盤でそれぞれの候補に痛手と言っていい事態となり、また寝返りも相次ぐ 両候補は日本のティア1入りに賛成だったが、ピチョット氏だとより外国出身選手の代表資格が厳格になる可能性もあり、最終的にボーモント氏に落ち着いて関係者は一安心した
大友氏の記事は、ピチョット氏への思い入れはわかるのですが、両候補がどのような選挙活動を行い、「日本に取って」どのようなメリットがあったのかが書かれていませんし、ボーモント氏や彼を支持した勢力が、何やらヒールのようにも見え、それに立ち向かうピチョット氏が正義の味方といった印象がなきにしもあらずでした。 正直これは如何かとも思ったものです。一方この日経の記事の場合、別にピチョット氏を悪く書いているわけでもなく、また日本が投票したボーモント氏はこのような人物で、日本が彼に投票したことでどのようなメリットがあるのか、そういった部分がよく理解できる文章になっています。
先日も書きましたが、『ナンバー』の記事も会社が同じというだけで、週刊文春化せざるを得ないのでしょうか。大友氏の記事が本来持っている中立性が、どこか薄れたように見えたのはやはり残念でした。
それとやはり南米2か国が、大友氏に取って「推し」の存在であるのはわかりますが、悪い点、デメリットをあまり書かず、いい部分のみを殊更に書くのはフェアではないでしょう。 確かに彼ら、特にアルゼンチンは地力はあるのになかなか勝てなかった、それが1999年になってベスト8まで行ったというのは、ある意味喜ばしいことではあります。しかし彼らの様子をありのままに書くのと、彼らを持ち上げるのとはやはり違うのです。持ち上げるという書き方はあれですが、高評価もあまりに頻度が高いと、やはりそのように見えてしまいます。
ところでこの99年大会に関しては、このブログでも何度か書いており、「ラグビー メディア 1999」で検索してみると以下のようになります。
https://bakerhouse221b.blog.fc2.com/?q=%E3%83%A9%E3%82%B0%E3%83%93%E3%83%BC%E3%80%
80%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%80%80
1999&page=0
このリンク中の「ラグビー代表と平尾氏番外-1999ワールドカップとメディア その2」(https://bakerhouse221b.blog.fc2.com/blog-entry-1945.html)という投稿では、私はこのように書いています。
このワールドカップでもう一つ気になったことがありました。その前の大会でも見られたのですが、外国の代表チームの姿勢を殊更に持ち出し、見習えといわんばかりの論調が目についたことです。これは一つ前のでも書いていますが、大会前にデスクの要求もあったとはいえ、あれだけ代表をもてはやしたあとで、リーグ戦敗退となれば手の平を返したように、よそのチームを云々する姿勢には、どうも節操というものが窺えません。ラグビー記者諸氏も不満があるのでしょうが、それを記事にするのもどうかと思います。
実際これはおかしなものでした。平尾氏への不満なのか、チームの敗退への不満なのか、ラグビー協会そのものへの不満なのか、そのすべてなのか。理由は色々あるのでしょうが、何か、この報道態勢の不自然さを感じさせもしました。
(この項続く)
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