まずこの『応天の門』は、「漫画・アニメ」カテゴリではなく、今まで通り独自カテゴリになっています。さて大師=青海尼の件が一段落したものの、今度はとある美少年を巡って別の事件が持ち上がります。
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ある日、ある場所で少年が乱暴そうな男に押し倒されていた。そこへ通りがかった別の男が、その少年を助ける。容貌の美しさのため、女と間違えられていたのだった。
使いに出て戻るところだったその少年は、姉と使用人とに出迎えられる。少年を救った男、藤原常行は挨拶をするが、実はその姉に見覚えがあった。そこへ武市丸という名のその少年が
「またです」
と言って割り入って来る。
宮中。在原業平が長岡へ足を伸ばしていたことを知った貴族たちは、女を探しに行ったのかと噂する。その業平は、常行から呼び出された。常行は
「お前を稀代の色男と見込んで、相談があるんだが…こういうことは得意だろうと思ってな…」
と切り出す。そしてあろうことか
「モテない秘訣を教えて欲しいのだ」
と言う。しかもある屋敷へ行くことになっているのだが、目立たない格好で来いと念を押される。
業平はわけがわからないながら、常行が通い続ける姫のことであろうと思い、
「人の恋路を垣間見るのもまた一興」
と思い、常行からとある屋敷の前に連れて行かれる。そこは、武市丸という例の少年の住居だった。実は常行は、この武市丸のことで相談したかったのである。
業平は、この見目の美しさなら、常行が通っているであろう、姉の姫も美しかろうと思う。しかしそれに関しては、常行から
「何が会っても姫を口説くな」
と釘を刺されていた。
元服前の武市丸は、何名かの貴族から、稚児として行儀見習いをしないかと文を貰っていた。武市丸も、勉強と思って返事をよこしていたが、しかしその貴族たちの身に次々と不幸が起こり、武市丸は自分が元凶なのではと案ずる。彼は出家も考えていたが、常行は、このような子をむくつけき男だらけの寺に放り込むのはよしとしなかった。常行は仕官の世話も考えており、お前は小雪姫の弟だから身内同然と言うが、武市丸は姉に頼ることなく、立派な役人になりたいと言う。
常行の口添えがあれば大丈夫だと業平は言うが、あくまでもまともなところならという前提であった。実際武市丸への手紙を出したのは、常行曰く稚児狂いのヒヒジジイであり、尼寺からもなぜか文が来ていた。
常行の言う「モテない秘訣」とは、武市丸がモテなくなるようにする秘訣のことだった。彼は長男ではなく、両親は地方に赴いており、稚児とは身にあまる話だが、自分が元凶なら最早死ぬべきかとまで口にする。
そんな武市丸に業平は、物事には裏があると言い、背後を調べることになる。常行は、多美子の入内前夜、百鬼夜行に遭ってもお前はビビらなかった、肝が据わっているのか、あいつらが何であるのか知っていたのかと言いかけるが、そこへ姫が現れる。
その姫は、業平が予想していたのとはまるで違う女性だった。常行は彼女が愛おしいらしく、業平は空気を読んで帰ることにする。車の中で業平は、確かに武市丸は美しいと洩らす。姉に関しては、あの常行が通うのだから、よほどいい女に違いないと独り言をつぶやくのだった。
やがて業平は検非違使を連れ、貴族たちに事情を聞いて回る。最初に訪れた左中便元亮(もとあき)は落馬をして臥せていたが、武市丸に入れあげたため妻に出て行かれてしまっていた。さらに屋敷が不審火に見舞われた日野唯兼は、その元亮に罪をかぶせていた。2人とも武市丸に並々ならぬ愛情を抱いているののは間違いなかった。そして病にかかった橘治臣は亡くなっていた。
これらの事件と武市丸が無関係であることを、業平は証明しなければならず、その時ふと人の気配を感じるものの気に留めなかった。従者の是則は、道真の力を借りないのかと言うが、あの唐変木にわかるはずもないと業平は見くびるが、その時業平の牛車から出火する。牛追童は牛に飼い葉をやっていて、車の方がおろそかになっていた。業平は自分が狙われたことを知り、やはり道真に相談することにした。
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「またです」とは、たて続けに3人の身に不幸が起こったことのようですが、かなり事件性があると考えていいでしょう。業平は当初自分だけで解決するつもりでしたが、自分の牛車にまで火がつけられたため、道真の力を借りることになります。ところで従者の是則さん、久々の登場です。
常行が足しげく通う小雪姫、姉弟である以上、凛々しげで色気も漂う武市丸とそっくりと思いきや、それとはかなり違っており、おかめのような顔とでも言うべきでしょうか。尤も平安時代の一時期は、こういう顔が美女とされていた頃もあったようなのですが…。
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