信長は、秀吉は大気者よ、そちのような陰気者ではないと言いますが、光秀はこれが癇に障ります。
「上様、それがしには筑前守の大気の真似はできませぬ。真似をすればとほうもない踏み外しをしないともかぎりませぬ」
光秀は泣くように言いますが、信長にしてみれば、光秀にはっぱをかけることで、競争意識を盛り上げたいだけでした。
光秀はその後坂本城に戻り、妻のお槇に日向守の任官、丹波を切り取るように命じられたことなどを話すと、お槇は涙をこぼします。何のこれしきと言う光秀は、妻に対しては大気であるようです。
その後お槇と閨にいるうちに、光秀の自身への評価は次第に大きくなって行きます。自分は常に天下のことを考えており、織田家でもそれを考えているのは自分しかいないと語り、お槇は逆らわずに光秀の話に付き合います。恐らく外で様々なストレスを抱えており、家でこのような大言壮語を吐くことで、心の平静を保とうとしているようです。
光秀はさらに、秀吉が5、6年で中国十国を平らげると信長に言ったこと、信長がそれをほめたこと、ならば自分も秀吉と同じ方法で…とまで言いかけた時、お槇は流石にそれを制し、生まれついた性分で芸をして行くしかないと言い、光秀もうなずきます。
実際この丹波は攻めづらい土地でした。地形が複雑で小豪族が多く、しらみつぶしにしていては長期戦になると思い、間者を送り込んで彼ら小豪族の性格や能力、利害関係などを調べさせます。その間に光秀は、武田勝頼の軍や三好勢、本願寺との戦いにも加わり、また京の市政を担当するなど、体がいくつあっても足りないような忙しさでした。
尤も織田家にあっては、総大将の信長自身が神出鬼没であり、これには何事にも自分でてをくだすという性格が大きく関わっていました。また体力、知力共に一番優れていたのも、当の信長自身でした。一方で優れた者を酷使し、特に秀吉、次いで光秀を様々な場で用いていました。
信長が河内で陣を張っていた時、光秀の丹波攻略の計画が定まり、信長にこのことを説明します。信長はそれに満足し、そして言います。
「兵部大輔(細川藤孝)を連れてゆけ」
無論光秀もそれは考えていました。
細川氏はかつて丹波の守護大名でしたが、その後波多野氏の台頭によりこの地との縁が切れます。厳密にはこの細川氏と、藤孝の細川氏とは異なるものの、同じ家号であり、かつてのお館様である細川氏が来ることで、政治工作がしやすくなると踏んだのです。
しかし信長がそのことを知っていたという点に、光秀は驚きます。
(油断のならぬお人だ)
元々足利家と縁の深い藤孝を連れて行くことで、旧幕臣同志徒党を組むように思わせるふしがあり、光秀はそれが気になっていたのです。尤も既にこの時、藤孝は織田家の家臣となっており、信長はこの2人に姻戚になるよう命じます。すなわち、藤孝の子忠興と、光秀の娘玉の婚姻を意味していました。
光秀は丹波攻めを言い渡されるものの、彼が丹波一国に費やす年月と、秀吉が中国一円を切り取るのに費やす年月がほぼ同じであることに気分を害します。その後坂本城に戻り、お槇に今までのことを打ち明けるうちに、次第に自己評価を高めて行き、織田家中で天下国家を考えているのは自分のみであるとまで言い出します。
お槇はこの夫が、外で色々苦労しており、自分にこう言うことで、何とかバランスを取っていることを理解していました。但し、秀吉と同じやり方でとまで言い出すに及び、光秀の自制を促すに至ります。
どうも光秀自身、些細なことを気にしすぎるように見えます。秀吉は秀吉、俺は俺と割り切って考えればいいのですが、なまじ放浪時代があり、天下国家のあるべき姿を考えていた以上、秀吉に「負ける」ことが面白くないようです。光秀のこのプライドが、後々の本能寺につながるとも考えられます。
さてその光秀、様々な戦に駆り出される一方で、丹波攻めの考えがまとまり、信長からは、かつて丹波の領主であった細川氏と同じ家号の、細川藤孝を連れて行くように命じ、さらに両家が姻戚同志になるように勧めます。
≪ 復活祭 | TOP | 『青天を衝け』第7回に関して ≫
≪ 復活祭 | TOP | 『青天を衝け』第7回に関して ≫
Author:aK
まず、一部の記事関連でレイアウトが崩れるようですので修復していますが、何かおかしな点があれば指摘していただけると幸いです。それから当ブログでは、相互リンクは受け付けておりませんので悪しからずご了承ください。
『西郷どん』復習の投稿をアップしている一方で、『青天を衝け』の感想も書いています。またBSで再放送中の『黄金の日日』の再放送も観ています。そしてパペットホームズの続編ですが、これは是非とも来年の大河が始まる前に、三谷氏にお願いしたいところです。
他にも国内外の文化や歴史、『相棒』をはじめとする刑事ドラマについても、時々思い出したように書いています。ラグビー関連も週1またはそれ以上でアップしています。2019年、日本でのワールドカップで代表は見事ベスト8に進出し、2021年には北半球最強であるブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズとの試合も組まれています。このチームにいい試合をし、今後さらに上を目指してほしいものです。国内のラグビーも、2022年からはいよいよ新リーグがスタートです。