いよいよ最終回です。
徳川慶喜は寛永寺に籠ったが、かつての幕臣たちにより彰義隊が結成され、新政府軍と対抗するようになる。橘恭太郎は海外留学を勧められていたが、ある日意を決して置手紙をし、彰義隊に身を投じる。勝海舟は、彼らには江戸の治安を任せているだけだと主張していた。
仁は、もし自分が死んだら腑分けして、頭の中の癌を後世の医学に役立ててほしいという。受講者の中で一人それにうなずく咲。しかし咲は、恭太郎が彰義隊に入ったことを知り、自分が連れ戻しに行くという。母の栄はそれを制するが、咲は、兄と2人で戻ってきたら家の門をくぐらせてほしいといい、上野へ向かう。
しかし恭太郎を連れ戻しに行く先の腕に、銃弾が当たる。その頃仁は、彰義隊のために野戦病院を開いていた。そこに医学書の多紀安琢らが現れる。徳川が彰義隊を認めたことになるから、これはまずいと渋る勝に、多紀らは医者は医の道を行くのみと、治療の手伝いを始める。そこへ恭太郎が、咲を背負って現れた。
仁は銃弾を取り出そうとするものの、また例の症状に襲われ、佐分利に代わってもらう。頭の中から聞こえる龍馬の声は、口八丁手八丁ぜよ、手が動かん時は口を動かせといっていた。その後上野戦争は終結し、仁は恭太郎にこう話した。「あなたが守ろうとしているのは徳川の家ではなく、橘の家ではないのでしょうか」
その後恭太郎も野戦病院の手伝いをする。そして咲は、日ごとに回復したが、ある日包帯に緑色の膿がついているのを見た。緑膿菌に感染していたのである。それでも仁の手伝いをしようとするもののかなわず、しかも、咲の本当の病状を知った仁もなすすべがなかった。その当時、緑膿菌に効果のあるホスミシンは作れなかったのである。
仁は、あの夜のことを思い出していた。あの時落ちて来たものは、ホスミシンの小瓶ではなかっただろうか。ならばあの時落ちて来た、あの場所に戻ればあるかもしれない。自然治癒の可能性を信じて療養中の咲に一言告げ、仁は恭太郎と例の場所へ行く。するとその時吸い込まれるような感じで、仁の姿が消えて行った。
仁は、自分が勤務していた病院の病室にいることに気が付いた。ホスミシンを探そうとして、すべてがあの時と同じ状況になって行く。そして、もう1人の仁が自分を追ってきた。そしてあの時と同じようにして、もう1人の仁はタイムスリップしてしまったのである。
自分の手術を執刀した同僚の医師、岸田の話では、自分は和服ではなく普通の洋服姿で、錦糸町公園に倒れていたこと、腫瘍は胎児様ではなく、普通の腫瘍だったこと、そして、あの時と似ていながら何もかも少しずつ変化していることに気付いた。もちろん友永未来も存在していなかった。仁は研修医の野口と相談し、これを元に小説を書こうとする。
そして仁は、図書館で百科事典を調べたところ、ペニシリンが江戸時代の日本にも存在していたこと、それを作ったのは仁友堂であることに気付く。しかし自分と咲の名はそこに記されていなかった。また、かつての橘家は橘醫院となっていて、そこに友永未来そっくりな女性が入って行くのを仁は目にした。
その女性は橘未来といい、咲が預かった野風の子の安寿の子孫だった。未来は様々な写真を仁に見せたが、仁には見覚えのある人々ばかりだった。そして未来は、咲の手紙を仁に渡す。それは間違いなく、あの咲の手によって書かれたものだった。
後日、未来が脳腫瘍で倒れて搬送されてくる。仁は迷うことなくその執刀医に名乗りを上げた。
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