前回の記事 ではあらすじが中心でしたので、この中の描写で目についた部分、面白いと感じた部分を拾ってみます。
まずワトソンの遺品が開封される場面ですが、彼が使っていた聴診器はいわゆるトラウベでなく、双耳形であったようです。トラウベについてはこちらを参照してください。
幕末医学事情 さらに
ワトソンはキャビアを食べると蕁麻疹が出る ちなみに「ガリレオ」湯川学は子供と話すと蕁麻疹が出ますね。
老婆が空家でカナリアを飼育している カナリアをはじめとする小鳥の毒ガス検知能力を活かしたものですが、我が国でもそんな事件が過去にあったので、ご存知の方も多いでしょう。
マイクロフトとの対面 『ギリシャ語通訳』以来ということなので、あの事件の後という設定なのでしょう。ちなみに、ホームズが例のライヘンバッハの後、しばらく姿を隠していて、その間雪男探しをしていたという点にも言及されています。しかしマイクロフトは、改めて策士であると実感です。彼の方がモリアーティに近いかも。
「3つの箱」が収められたスコットランドの墓地 には、流石に
ケルト十字 のお墓があります。
バラドン氏の遺体の指輪が変色していたことから、塩素ガスが彼の死に絡んでいる ことをホームズが見抜きます。また、子供たちが墓地にやって来ますが、彼らは子供でなく小人の軽業師でした。ホームズ、ワトソンそしてバラドン夫人は、塩素ガス発生を伴う何かの実験に彼らが利用されていたことを知ります。
ワトソンが「ネッシー」を発見しますが、もちろんこれは単なる恐竜ではなく、潜水艦 でした。しかもその潜水艦のお披露目にビクトリア女王の臨席を賜るわけですが、女王は潜水艦など卑怯な兵器はとんでもないと早々に立ち去ってしまいます。「
『ハートの7』あらすじ 」で書いていますが、19世紀から20世紀にかけて潜水艦の開発が各国で相次ぎ、実は日本も
第一型潜水艦 というのを作っています。
ちなみに、バラドン氏が仕事をしていたとされるヨナ商会は、旧約聖書のヨナ書にちなんでいます。この中でヨナは大魚に呑み込まれ、3日3晩その中で過ごすわけで、正に潜水艦中の生活と呼応するものがあります。また、バラドン夫人は実はドイツのスパイ、イルザ・フォン・ホフマンスタールで、途中何度かパラソルを開閉することで、仲間である例の修道士に信号を送っていたわけです。ちなみにホームズが「イルザ・ホフマンスタール」と口にして、彼女が「フォン・ホフマンスタール」と訂正していますね。フォンがつくと一応は名家なわけですから。
そのイルザは、日本行きを蹴ってまでこの仕事を引き受けたわけですが、その後結局日本に潜入したがスパイであることがばれ、銃殺刑に処されたということになっています。どのような任務かは無論不明ですが、この作品の舞台が1887年であることを考えると、恐らくは日清戦争を前にした、東アジアを巡る列強の動きに噛んでいたのでしょう。
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