「アリス」のテーマでの最終回です。この中では、戦後間もない頃の様子、少女たちの華やかな印象と、それとは逆に戦後没落して行った旧華族や、経営難になったホテルといった相対する世界が描かれています。それが60年近くを経て、その子孫に複雑な影を落とすことになり、永沢元子爵の孫の公彦、つまり遠野弘明が先祖の財産を狙う目的になっています。しかしその時、杉下右京はこういいはなちます。
「財産税は、永沢家だけに掛けられた物ではありませんよ」
皆大変な思いをして来たのですよという意味を込めているわけで、遠野はそういわれて返す言葉がなくなります。、朋子の友人で、やはり子爵家の娘である瑠璃子が、女学生ながらそのことに対して毅然としていたのとは対照的といえます。もちろん瑠璃子も悩みを抱えていました。無垢な年頃というのもあるのでしょうが、むしろ彼女は、自分の家が財宝を隠していたことに憤って家族と対立します。
実はその日は朋子は風邪で寝ていて、冬休みで早蕨ホテルに滞在中の、しかも朋子と同室の瑠璃子は、屋根裏で宝探しをするといって部屋を出て行ったのですが、実はその家族の秘密を知るために二百郷家に向かっていてました。朋子の元に戻った後、どこかふさぎ込んだようにしていていたのはそのためでした。しかも自分は家がそのような立場にあるとも知らず、貧しい人々に施しをしていたわけで、瑠璃子がそのことで家族を非難する声を、朋子は耳にしてしまいました。その翌日の瑠璃子の失踪の後、朋子は屋根裏に行けば何か見つかると思い、ロウソクの火を片手に電源のない屋根裏を探し回った末、火災の原因を作ってしまったわけです。
この一連の事件には、様々な人生が絡んでいました。最終的にそのすべてがわかったものの、茜はそれまで通り、養蜂を続ける生活を選びます。また、蓮華畑に埋められていた瑠璃子の遺体を、富士山の見える丘に埋葬し直し、これでこの事件はやっと終わります。ちなみに、茜が杉下を見て見覚えがあるような顔をしたのは、アルバムに残されていたホテルのピアニストの顔と、瓜二つだったからです。(水谷さんの一人二役です)
しかし捜査一課の面々が、作業着姿でやって来るというのも奇妙なものです(笑)。小さな集落で、よそから人が来るとすぐ話題になるということで、わざわざこのようないでたちで現れたわけですが、恐らく杉下からの情報もあったでしょう。しかしこれに限りませんが、この杉下右京の着ているコートがなかなかいいです。そしてこのアリス、特に『鏡の国のアリス』では、舞台がチェス盤に設定されていて、登場人物はいずれもチェスの駒の役割を与えられています。特命課のテーブルにもチェス盤がありますね。
あと個人的願望として、ミッションスクールに通う少女2人が、クリスマス前に出かけるという設定ですから、讃美歌を歌ってほしかったなあ…『きよしこの夜』のような有名なのでなく、学校の礼拝の時の讃美歌でもよかったかなと思います。著作権の問題もあったのかもしれませんが。
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