久々に『応天の門』です。試に落ちた道真は、書倉で貪るように本を読みまくります。
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道真が書庫に籠るようになって五日目、白梅は食事を摂るように懇願していた。彼女が書倉の外に置いた食事は時々手を付けた跡があり、父是善はならば心配ないと言う。是善は試験官に、少しでも至らぬところがあれば遠慮なく落とせと口添えしており、あとは息子に、自分が何が足りないかを自身で探求させるつもりだった。
その一方で、内教坊(宮中で舞姫のための楽舞を教えた場所)に大師と呼ばれる伎女が、舞の指導のために来ていた。この大師の美しさは有名で、仙女の娘であるとか、天女であるともささやかれており、かの業平も振られたことを告白する。またこの大師を、夜の伽の相手として、大枚はたいて買った大納言が、二日で寝込んでしまったなどという噂もあった。
業平は鷹狩をしようと考えていた。そこで菅原家の別荘を借りようと菅原邸を訪れ、是善直々に書庫の道真を呼び出してもらった。業平はそろそろ外へ出たくなったのではないかと言い、道真を誘おうとする。また是善も、書倉で少々調べ物があるので、そなたの出入りはしばらく禁ずると言い、道真は長岡の別荘へ、業平と向かわざるを得なくなる。しかしこの是善は、以前鷹狩はならぬと道真に忠告してもいた。
かつて都があった長岡も今は荒れ果てており、別荘など名ばかりだと道真は道中口にする。そんな折、行き倒れか病人と思しき者を道真は見つける。田畑は荒れ、水しか口にできないというその男の側に尼がいて、御仏はお見捨てにならないと、手から何かを出し、持って行かせた。その男も仲間の農民たちも驚き、奇跡であると叫ぶ。
業平は一見米のようにも見えるそれが、何であるのかを知りたがる。青海尼と呼ばれる、農民たちを救ったその尼は、まだ若く美しかった。
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のっけから国師なる伎女が登場します。舞を教えるのみならず売春もやっているようですが、その美しさはこの世のものとも思えぬと官人たちは一様に口にします。
片や道真は試に落ちた後書庫に籠りきりでしたが、業平が鷹狩のために菅原家の別荘を使いたいとやって来ます。また父是善も、自分が書庫を使うからと、道真を業平に同行させてしまいます。鷹狩はいけないと言っていたはずなのですが、どうにかして息子を外に出したいようです。別荘など名ばかりと言う道真は、荒れ果てた長岡に業平とやって来ますが、そこは作物ができず、青海尼なる尼僧が農民を救おうと「奇跡」を起こすのを目の当たりにします。
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