『若い人』に関しての投稿第4弾目。視学官から授業を褒められ、一方で多少批判された間崎ですが、その日は上機嫌で帰宅し、下宿の小母さんに女性のお客が来ることを伝えます。そのお客は実は橋本なのですが、江波とその母親が先にやって来て、日頃世話を焼かせるお礼として、間崎に靴をプレゼントします。その後母親は帰り、江波だけが残って、友人の田代ユキ子について長々と喋り、間崎を辟易させます。そうしているうちに、本当の女性のお客である橋本が現れ、江波は押し入れの中に隠れます。
この橋本との話も、なかなか込み入ったものであると同時に、橋本が社会主義に傾倒しているのを多分に窺わせるものでもあるのですが、ともあれその最中に、押し入れの中で物音がします。間崎は江波がこのまま出て来るのではないかと、気になって仕方ないのですが、橋本はねずみであると思い込み、幸い江波も出て来る気配はありませんでした。また玄関には、江波がまだ帰宅していないこともあり、如何にも若い娘の物といった下駄が並んでいるわけですが、橋本はそれにもさほど気を留めていない様子です。
間崎は橋本を送りついでに、喫茶店でコーヒーを飲むことを提案します。その店には2人がよく知っている、1年生の増井アヤ子が警察署長の父親と一緒にいて、父親にこの2人の教師を紹介します。この辺りは、後の部分の伏線となっています。そして間崎は帰途につきますが、不在の間に下宿では、小母さんが押し入れから寝息がするのを聞き、開けてみると江波が中で眠っていて、しかも寝ぼけているようです。結局江波はそのまま帰ってしまい、間崎はことの次第を説明する破目になります。
ここまで読む限り、江波のターンが続いているように見えます。もう一人の女性キャラである橋本は教師という立場もあり、江波ほどには目立つわけでもなく、さらに言えばこれ見よがしな行動を取るわけでもないのですが、橋本は橋本なりに、間崎と向かい合って自らの意見を述べるわけで、間崎もただ黙っているわけではないのですが、2人の異なるタイプの女性に、いささかたじたじになっている感は否定できません。そしてこの次はいよいよ修学旅行となります。
しかし『河童』もそうですが、昭和のこの時期の文章は読むのに多少の煩わしさが伴います。その時代ならではの味と言いますか。無論小説そのものの在り方が、この時代と今とでは大きく異なるせいもありますが。
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