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ベイカー寮221B/Baker House 221B

パペットホームズ、大河ドラマなどの好きなテレビ番組やラグビーについて書いています。アフィリエイトはやっていません。/Welcome to my blog. I write about some Japanese TV programmes including NHK puppetry and Taiga Drama, Sherlock Holmes and rugby. I don't do affiliate marketing.
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『若い人』その2

先日書いた『若い人』について、今少し。そもそもの出だしは例の江波恵子の作文で、これを見た国語の教諭の間崎が、その奔放さに心打たれるところから始まります。

間崎はこの学校に赴任した時、この江波のこと、その態度がかなりマイペースであることを聞き、さらに本人がどのような少女であるかを知ってからも、さほど関心は持っていませんでした。しかし、作文を読んでから少し経った夏のある日、時間が空いたので裏山へ行った間崎は、そこで頭痛がするという理由で(多分仮病)一人のんびりしている江波と出会い、江波はかなり哲学的な話題を持ち出します。間崎はこういう場所での、如何にも素直でいい雰囲気の江波が、なぜ時々妙にとっぴな行動に出るのかを尋ねます。江波はこう答えます。

「いつかミス・ケート(̪私注・女学校の外国人校長)が倫理のお話の中でお互いに喰い合う二匹の蛇はしまいにはどうなるかってお尋ねになりましたけど、私自分のことを考えると、その無気味な喩え話が思い出されてなりません。人間にすると、それは自分が生きて行くために自分の命を少しずつ食べて行くっていうことになるんでしょう」

2人はその後も会話を交わし、間崎が、江波はどうも女学生に見えないと持ち掛けると、江波は今度は先生たちの人気投票を無記名でやったと話題を変えます。この時江波は、間崎が1位になることはわかっていたから、自分は敢えて橋本の名を書いたこと、先生は橋本先生を好きなんでしょうと言い、そういう噂があるとも口にして間崎は少々たじろぎます。

この結果、1位が間崎、2位が橋本、3位がミス・ケートという結果になるのですが、橋本というのは地理歴史の先生で、寮の舎監をしており(ちなみに江波は寮生)、所謂進歩的な考えを持った人物でもありました。ある日、間崎が宿直の時に、この先生宛に社会主義関係の秘密出版物らしき物が届いていて、しかも雨のせいで中身が見えていたため、新聞紙で厳重にくるんで本人宛に届けさせます。この辺り、終盤の伏線となっている感があります。

出だしはこういう感じで、今後も『河童』同様、折に触れて、ごくざっとした形でご紹介することになりそうです。しかしこの時代の文章にありがちな、修飾表現が多く抒情的とも取れる表現が、今時の散文的表現に慣れた目には、少々疲れるようにも感じられます。戦前というか、昭和に入って間もない頃の、女学校という空間を舞台にしたこの話は、この時期ならではの時代背景と、それに対抗するかのような、しかも後の時代では封印されてしまうであろう自由奔放さを、ヒロインである江波に託した作品と取れなくもありません。実際彼女のキャラがかなり立っていることからも、それが感じ取れます。

なお先日の、間崎先生を演じた俳優さんたちは、実際の映像作品で見たわけではありません。それぞれが出演した同じ頃、あるいはその少し後の作品を観て、これならこの役を振られるのもむべなるかなと思った次第です。と言うより、この小説の映像化作品については、1952年と1962年の映画作品以外は、DVDは出ていないようです。観てみたいのですけどね。

本といえば、有栖川有栖氏の作品をはじめ、ミステリー関係を紹介したいと思ってはいるのですが、これは、休眠中の本関係ブログを活かすことになりそうです。

飲み物-ローズヒップティー
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[ 2020/08/16 23:45 ] | TB(-) | CM(0)
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『西郷どん』復習の投稿をアップしている一方で、『鎌倉殿の13人』の感想も書いています。そしてパペットホームズの続編ですが、これも『鎌倉殿の13人』終了後に三谷氏にお願いしたいところです。

他にも国内外の文化や歴史、刑事ドラマについても、時々思い出したように書いています。ラグビー関連も週1またはそれ以上でアップしています。2019年、日本でのワールドカップで代表は見事ベスト8に進出し、2022年秋には強豪フランス代表、そしてイングランド代表との試合も予定されています。そして2023年は次のワールドカップ、今後さらに上を目指してほしいものです。

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