またも『麒麟がくる』の衣裳関連です。何日か前に、谷原章介さん演じる三淵藤英の衣裳(公式サイト「衣裳の世界」)について、この柄は確か安土桃山時代以後の物であることに触れ、また青海波についても書いています。今回は公式サイトでは、その1つ前に当たる、向井理さん演じる足利義輝の直垂に関してです。
この義輝の直垂、サイトではこのようになっています。
実はこの袴の足元の部分、生地の説明のために赤丸がつけられていますが、その少し下に白の括り紐があります。
(直垂関係の2点はNHK ONLINE『麒麟がくる』サイトより)
実はこの括り紐なのですが、装束関係に詳しい人物によると、室町後期の直垂の袴は切袴であり、括り紐はありませんでした。元々直垂のように垂首(今の着物の打ち合わせのようなVネック式の襟)の衣服は庶民の物であり、動きやすさを重視されたため、袖口や袴の裾には括るための紐が付けられていましたが、それも鎌倉時代の頃まででした。その後武士の礼服となるにつれて、裾の括り紐は付けられなくなります。その意味で、これはちょっと奇妙に感じられます。また足袋を履いていますが、これも直垂着用時は裸足であったとも言われています。
無論室町、戦国時代でも括り紐が裾についた直垂はあります。それは鎧直垂です。 これは読んで字の如く、鎧の下に着るわけですから活動的でなくてはいけません。そのため袖口の括り紐は言うに及ばず、袴の裾も括り紐が付いています。しかしこの義輝の直垂は、特に鎧直垂ではなさそうです。スケッチのところにある走り書き風のメモを見ても、特にそう書かれてはいません。また、大相撲の行司が来ている直垂で、裾に紐がついたのがありますが、行司装束は鎧直垂に近いと、確か以前高砂部屋のホームページで見たことがあり、それだと納得できます。実際幕下以下の取組の場合、行司さんが裾を括って裁いていることもありますね。
それにしてもこのページ、「禁色」などといきなり出て来ますが、こういうのは説明をきちんとすべきでしょう。 すべての人がこれを知っているとは必ずしも言えないでしょうし、外国の人も見ているかもしれません。一定の地位のある人、官位を持つ人にのみ許された色のことです。時代によって様々ですが、所謂
黄櫨染
黄丹
は皇族方のみの色で、それ以外の人物が使うことはできません。昨年の即位の礼で、天皇陛下が黄櫨染の方を着用しておられたのを、見たことのある人も多いでしょう。なお黄丹は皇太子の色で、昨年は秋篠宮殿下がこの色の袍を着ておられました。
それから装束関係ではありませんが、以前大河ドラマでの風間俊介さんの衣裳、すなわち『麒麟がくる』の松平元康と、『西郷どん』の橋本左内の画像を比較して、橋本左内が着ている寒色の衣裳の方が似合っていると書いたことがあります。
無論大河ではなく、現代ドラマでも同じことが言えるかと思います。こちらは『陸王』で、銀行員(後に東京キャピタルに転職)の坂本太郎を演じる風間さんです。ニューイヤー駅伝で、ダイワ食品の茂木裕人が陸王を履いて完走したことを記念し、恐らくは新年会を兼ねた飲み会で、乾杯の音頭を取っています。
(『陸王』DVDシリーズより)
チェックのシャツに白っぽいニット、グレーのジャケットですが、こういうコーディネーションがこの人には似合いますね。
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