前回「『相棒』シーズン11第11回「アリス」-横溝正史とイギリスミステリー1」の続きです。まずこの中で起こった事件を整理しておきます。
昭和30年(1955年)の事件
1. 橘瑠璃子失踪
2. 早蕨ホテル焼失
平成24年(2012年)の事件
3. 二百郷家に空き巣
4. 養蜂箱が荒らされる
5. 山岸昭和記念文化館の職員殺害、及び展示品盗難
6. 遠野による茜への恐喝
その他にも遠野がロンドンまで出向いて、朋子からスクラップブックを受け取ったとか、茶に毒物?が混入されていたとか、あるいは「出店」が絡んでいたなどなど、様々な伏線があります。
まず1の事件ですが、元ポーターで、二百郷家の使用人である柴田が、ホテル経営者の二百郷洋蔵、そして橘瑠璃子が、華族の財宝を隠していた場所に行ったのを目撃し、そのため、ホテル経営を助けるためにそのありかを訊きだそうとします。無論彼は瑠璃子には手を触れておらず、財宝を盗んだり、売り払ったりもしていないわけですが、瑠璃子の死体遺棄ということで、時効になるものの一応取り調べを受けます。しかしこの件が迷宮入りになったことから、後に様々な疑惑が浮上します。
そして2の事件、これは実は、電源のない屋根裏を探していた朋子の、ロウソクの火によるものでした。しかしこれで二百郷夫妻が焼死します。そして早蕨ホテルも焼失し、財宝のありかもわからなくなってしまいます。
そして57年が経過し、杉下と甲斐が二百郷家に向かった時に3の事件が起こります。何かを二百郷家で物色していたようですが、この時点ではまだそれが何であるかがわかりませんでした。それからさほど経たないうちに、今度は4の事件が起こります。どうも、犯人は茜を狙っているふしがあります。
その後、二百郷家に一泊した杉下と甲斐は、今度は茜と共に、永沢元子爵の備忘録を確かめようとしますが、それが盗まれており、しかも職員が殺害されていました。これが5の事件です。犯人の目的は、どうやら閲覧記録にあったようですが、それは館長が、休暇中にデータをPCに取り込むため持って帰っており、また備忘録もデータをPCでチェックすることができました。その備忘録には、警察官僚の国枝にそっくりな男を見た旨が書かれていました。国枝は、警察庁関連の内部告発書を発表していました。この5で、警視庁捜査一課が介入します。
そして6の事件、これにより謎解きが行われます。平成24年に起こった事件は、遠野弘明、実は永沢元子爵の孫である公彦のしわざでした。ここでスクラップブックの情報により、財宝のありかがわかります。しかしそこには国枝文書もあり、それは「出店」が二百郷家に出入りする人物の会話を傍受して、ありかを突き止めます。しかしそこに捜査一課が乗り込み、国枝文書ももはや読むことが不可能なほどぼろぼろになっていました。なぜスクラップブックが謎解きとなったのかは、また次の機会に書きたいと思います。
しかし、なぜ華族が資産を隠したのか。それは戦後GHQの命令による資産凍結が行われ、そして9割を国に納めなければならなくなったからで、これが旧華族の没落を招くことになりました。そのため常連であった早蕨ホテルの経営者、二百郷に依頼して、密かに預けておいたという設定になっています。また「出店」(でみせ)とは、警察庁に存在するであろうといわれる、情報工作関連の部署です。警視庁内でもこの言葉はタブーとなっているようで、鑑識の米沢守も、電話で出店を口にする際、わざわざ部屋の外に出て話すほど慎重を極めたやりとりをしています。「チヨダ」などとも呼ばれるようですが、詳しいことは私も無論わかりません。
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