先日ご紹介した大友信彦氏の『Number Web』の記事、色々と書かせていただきましたが、この中で1つ触れておきたいものがあります。それは、ボーモント会長も明言した「ネーションズ選手権」です。これに関しては、当該記事のコメントにも書かれていますが、6か国対抗はこのまま継続することになるでしょう。
ルーマニアがボーモント氏支持でなくなったのは、もっと試合をという気持ちもあったのかも知れませんが、こういう(時差のない)6か国以外のヨーロッパ勢の扱いはどうなるのかと思います。一方で、現行の(時差のある)南半球4か国をどう再編成するかも考えられるべきでしょう。
これは
以前ご紹介した藤井雄一郎氏のコメント にもありましたが、それぞれ時差のない相手同士で試合を組むのがいいかと思われます。その場合南アフリカはヨーロッパ、オセアニアはアイランダー勢(フィジー、サモア、トンガ)や日本となりますが、アルゼンチンなどは北米相手になります。ただこの両者は若干差が開いているため、他にティア1の国と試合をして、しかる後に北米相手となるのでしょうか。
いずれにしてもラグビーの場合、元々の強豪国同士で正式なテストマッチを行って来たため、国によって力の差がかなり大きくなっています。記事中にはこうあります。
ピチョットは4月に発表したマニフェストで、意思決定システム、つまり理事枠の平準化、「ティア1」以外の国(日本やフィジーなど)が上位国と対戦できるカレンダーの再編成などとともに「ブラジルやチュニジアなど」と例を出して「新興国の強化をサポートしよう」と訴えた。
伝統国側としては、ちょっと待て、というのが本音だったろう。改革は進めてる。門戸も開き始めた。今までだってチャンスは与えてきた。だからアルゼンチンも日本もこんなに強くなったんだろ。フィジーやサモアやウルグアイも理事に入れた。強くなったら伝統国とも試合を組んであげる。そもそも、いろんな国が強化できるように分配するお金を作っているのは我々伝統国だぞ……そんな本音が、いつもは水と油だった英仏大連立さえ実現させた。
理事枠の平準化、新興国が上位と試合ができるシステム、確かにどちらも理想的ではあります。しかしそれをすることで、強豪国同士の試合が少なくなることもまた、当該国に取って不本意なことではあるでしょう。
さらにラグビーは、ご存知のように得点方法が4つあります。そのため他競技に比べるとスコアが大きくなる傾向が見られます。下位チームとやって100点ゲームが増えることもあるでしょう。高校大会で、シード校とノーシード校がぶつかって大差がつくような感じです。それ以外にも、試合そのものにお客が入らなくて不採算になりかねないとか、またこれも記事のコメントにあるように、逆にケガのリスクが大きくなることもあります。 それを考えると、なかなかおいそれと行かないのも事実でしょう。
この大差試合で思い出すのが、1999年大会の前の予選です。元々ラグビーの場合、ワールドカップ予選はそう行われず、上位8位は無条件で次大会出場となっていました。今は、予選はリーグ戦4位以下のチーム限定になっています。
ただ例外として1999年大会の前は、ベスト8レベルでも予選が行われたことがあります。しかし結果としては、常連国が大差をつけて勝ったことから、それほど意味があったとは言えませんでした。裾野を広げるには確かに多くの試合数が必要となりますが、それがミスマッチを生み出すこともまた不可避と言えます。なかなかそう急に何もかにもとは行かないでしょうし、ならば正式のテストマッチでなく、選抜チーム的なメンバーを派遣して、腕試しという方法もあるのです。
またピチョット氏は「努力した国を引き上げる仕組みを作ろうとしていた」ということですが、この「努力」の基準が何によるものなのかは、この記事でははっきりしていません。もしこの方針を今後持ち込むとしても、単にこれはチームのグラウンド上の結果だけではなく、より総合的に判断されるべきかと思われます。
たとえばワールドカップに出るための強化をどの位行っているか、国内にどれだけラグビーを普及させようとしているか、 それもまた評価する上での大きなポイントとするべきでしょう。
ところでコメントの中に、サンザーがサンウルブズをいじめたから(日本がボーモント氏に入れた)と言うのもありましたが、それはともかく。このサンザー、SANZAARによって南半球ティア1が固まっているふしもありますし、世界規模の平準化を目指すのであれば、こういうシステムの見直しをもまたやるべきではないかと思えて来ます。
南半球は恵まれないと記事中にあります。確かにそれぞれの意向が会長選という場で反映されにくくはありますが、強化の面ではSANZAARという、南半球のティア1グループで行われるスーパーラグビーの恩恵を受けて来たのもまた事実です。それがこのネーションズ選手権と両立できるのかどうか、再編成、または発展的解消という方法もあるのではないか、そういう点もまた今後議論されてしかるべきではあるでしょう。
いささかとりとめのない書き方になったかも知れませんが、実際テストマッチの見直しは行われてしかるべきでしょう。しかしだからと言って、強豪国と新興国をいきなり戦わせても、リスクが大きく、またビジネス的に成功するか否かは疑問です。
また世界のラグビー界をすべて見直すのなら、今あるすべてのティア1のトーナメントやリーグもまた見直すべきです。とはいえ、現実的には6か国はこのまま継続されると思われます。スーパーラグビーは今後どうなるかはまだわからないと思いますが。
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