この回では、まず仁と龍馬の記念写真の裏に書かれた狂歌が登場します。
「長いもの中より出でたる虫たちの江戸の芋にもすくいたるかな」
この「すくいたる」が「巣食いたる」なのか、それとも「救いたる」なのかで、意味が大きく異なって来ます。当初は「巣食う」方、つまり長州をはじめとした勢力が、江戸をも席巻するという意味かと仁は思うのですが、龍馬は本当に、江戸を武力制圧することを望んでいるのでしょうか?彼の船中八策には、そのようなことが書かれているのでしょうか。
そして、野風からの手紙には、ルロンと結婚するので招待したい旨が記されています。仁と咲は、礼装用の着物を持参して横浜まで足を運びます。この時仁が、出されたコーヒーやワインを、如何にもおいしそうに口をつけるところが、やはり未来から来た人物であることを窺わせます。恐らく、タイムスリップして以来何年振りかで口にしたわけですから。ルロンが、以前どこかでコーヒーやワインを飲んだのかと訊くのもむべなるかなです。
その後野風は、仁に癌の再発を打ち明けます。既にかなりの部位に転移しているようで、あの時もう少し患部を切っていたらと悔やむ仁。しかし野風の心配は別の所にありました。それは、既に妊娠している自分が無事に出産ができて、子供を抱けるまで生きることができるかというものでした。仁は、今後2年間の生存率は5割だといいます。野風はそれを聞いて安心したような表情を浮かべ、翌日の結婚式に臨みます。
野風はウエディングドレスに身を包み、ヘッドドレスにはオレンジの花があしらわれていました。ちなみにオレンジの花の花言葉は「花嫁の喜び」なので、特に花嫁のヘッドドレスに用いられます。バージンロードを歩く2人を見る仁と咲、招待客の中には、鈴屋の主人もいましたが、野風にとって、この人物は正に親代わりといっていい存在でした。そして野風はブーケトスをします。というか、明らかに咲を狙ったものだったようです。この意味について教えられる咲。前日、彼女がまだ結婚していないことを知った野風からの贈り物だったのかもしれません。
ところで、ルロン邸で出されたコーヒーは、この少し前に、咸臨丸でアメリカを訪れた使節も口にしていたといわれます。その感想は、咲と同じで「苦い」というものでした。この使節団の代表である木村摂津守喜毅(芥舟)は、当時の軍艦奉行で、提督として咸臨丸に乗り込みました。一行は船酔いがひどい者が多く、太平洋を越えるのにかなり苦労したようです。また、アメリカに着けば着いたで、日本とは全く異なる文化に驚いてもいます。ダンスパーティーにあきれ果てたり、シャンパンの音に驚いたり、またフィンガーボールの水を飲んだりといったハプニングもあったようです。
それ以外にもナイフとフォーク、ベッド、洋式風呂などなど、日常生活からして驚きの連続でした。そしてハワイ訪問しています。この当時ハワイは、まだアメリカに組み込まれておらず、独立した王国で、国王夫妻に拝謁もしていますし、それ以外に大統領にも招待されています。しかしこの時代、船で海を越えて異国へ行くのは、相当の覚悟が必要だったのは事実でしょう。なおこの時、同行した勝海舟と福沢諭吉との間に確執がありましたが。これは勝が官費で渡航したのに対し、福沢は私費で、いわば従者的に同行したためといわれています。
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