最終回の番外編から少し時間が経ちましたが、とりあえずエピローグです。このドラマの年代は、丸々幕末の時期にかかるといっていいかもしれません。ペリー来航後も幕府の上層部はともかく、万二郎のような平侍は、まだ藩主に仕え、武士としての研鑽を積むことが目的でした。そして手塚良庵、後の良仙もまた蘭方医である父を継ぐことを志していました。そして2人共、善福寺の娘のおせきに好意を持っていました。しかしこの2人が藤田東湖に会い、江戸幕府が危機に瀕していることを知るようになります。
万二郎は、陽だまりの樹、しかし中には虫が巣食っている状態の幕府を支えようとします。一方良庵は、その当時の奥医師をはじめとする漢方と蘭方の対立を苦々しく思い、そして父良仙が、蘭方医仲間と実現しようとして、しかし奥医師の横槍でなかなか実現できずにいる、種痘所の設立を目指します。最終的に万二郎は幕府陸軍の役職につくものの、おせきは、自分が初めて会った、しかも懇意のアメリカ人であるヒュースケンのせいで尼寺に入り、また地震の際に芝浜に誘導し、ならず者から守ったお品は、丑久保陶兵衛に手籠めにされてしまいます。如何にも武士らしく一途な万二郎に、遊び上手で要領のいい良庵は何らかの助言をするのですが、なかなか思うようには行きません。
そして良庵も適塾で学び、コレラで母親を亡くし、ついには父の良仙も世を去ります。父の名を継ぎ、家計のやりくりに追われる中で、果ては軍医の仕事を務める良仙。そして万二郎が心に決めた綾が頭部を強打し、しかも万二郎の母おとねがつらく当たるのを知って、おとねを咎めます。いよいよ朽ち果てようかとする「陽だまりの樹」に最後の奉公をしたいと、彰義隊に入る万二郎。もはや良仙は、この友人の気持ちを尊重するようになっていました。良仙は、上野戦争で万二郎は死んだものと決めてかかっていましたが、山を下りて行く彼の姿を見たという者がおり、また、おとねと綾も万二郎の帰りを何年も待ち続けます。そして新政府軍の軍医となった良仙も、ある時ふと、万二郎の声を聞いたような気がして、その方向に目をやります。
しかし日本の幕末期、おおまかにいえばペリーが来てから大政奉還、戊辰戦争までの15年余りですが、世界史の中でも特に独自性が強い時代といえるかもしれません。非西欧文明圏が、徐々に西欧の技術を採り入れて行くという点、しかも一部の藩が主導権を握り、時の政府である幕府を倒す点、そして医学史的にみれば、漢方と蘭方が対立する一方で、コレラや動乱に巻き込まれたことにより、医療の需要が高まった点などです。また、清帝国がアヘン戦争で列強の侵略を許したのを目の当たりにしており、植民地化は避けるべきであること、しかし武器などは西洋から買い付ける必要があることなどで、こういった様々な要素も、幕末の混沌とした、ある意味ユニークな状況を作り出したといえます。
恐らく幕末でなければ、それぞれ当たり前に武士あるいは医師としての生涯を全うしたであろう2人は、幕末という時代に生まれ合わせ、様々な人物と関わりを持たされたために、普通に武士、あるいは医師として生きることの難しさを、身を持って感じたかもしれません。だからこそ良仙の、名もなくして世を去った、いわば普通の人々への言及は重いでしょう。ちなみにこのドラマと原作とは、また違った部分もありますし、原作に登場する人物が出て来なかったりもします。アニメの方はどうなっているのかわかりませんが、機会があれば観てみたいと思います。しかし、市原隼人さんの侍姿は、なかなか板についていましたね。
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