「1ファンの視点から見た」その2です。『ノーサイド・ゲーム』は池井戸ドラマらしく、ラグビーをテーマをすると同時に、ビジネスをテーマにしたドラマでもあります。そのためラグビーチームのみを描くのではなく、主人公の職場に於ける立場とか、家庭なども勢いドラマの中に盛り込まれて来ます。そのため純粋なラグビードラマとはなっていません。『陸王』が陸上一辺倒のドラマでなかったように、ドラマの中の人間関係にラグビーが絡んで来たという見方の方が正しいかと思います。無論ラグビーはラグビーで、選手の苦悩や選択はしっかり描かれています。
そういういきさつもあってか、ラグビーのシーンはシンプルに、プラチナリーグのみにとどまっています。代表とかスーパーラグビーをモデルにした国際リーグ、大学などは登場しません。君嶋はアストロズのGMであり、アストロズを軸に展開するべきものである以上、他に様々なカテゴリーのラグビーを描くことで焦点がぼやけるリスクを避けるためでしょう。この場合あくまでも、ビジネスあってのラグビーという視点であり、そのため現状の企業アマが抱える問題点、会社の方針に翻弄されるチームの悩みがクローズアップされてもいます。
一方で元選手たちの演技は光っていて、ラグビーの描写、あるいは選手と子供たちが絡むシーンなどはかなり楽しめるものでした。特に浜畑、里村や佐々など何名かの選手はかなりキャラが立っていて、ラグビーファン、あるいはラグビー観戦の初心者を魅了するのには役立ったと思われます。
それから青野とか滝川のような人物が、実はラグビーを身近に経験していたというのは興味深いものがあります。青野は実際経験者であり、滝川も自分では経験していないものの、父親が元選手で花園へ行っていたという設定です。この部分にのみ、高校ラグビーという他のカテゴリーの存在が窺えます。大学も登場するにはしますが、どちらかといえばラグビーそのものよりは、なぜ君嶋が柴門をよく思わなかったか、その描写のためのものという印象を受けます。
しかし先日も書きましたが、蹴球協会の方針がどうなったのか、それがプラチナリーグの今後を左右するものであるからこそ、描いてほしかったなとは思います。無論富永会長が解任され、君嶋に賛同するGMがあれだけいたことを思えば、大体察しはつきますが。あとやはり、ビールとラグビーの関わりも描いてほしくはありました。ところで君嶋の息子博人を演じた市川右近君と、父親の市川右團次さんは、味スタに開幕試合を観に行くとのことです。関係者は言うに及ばず、一般のスタンドにも意外と有名人がいるかもしれません。
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