真に勝手ながら4か月ほどお休みしており、今年もあと3か月半ほどなので、駆け足&圧縮版で行きたいと思います。吉之助は祖父と両親を相次いで失い、妻の須賀とも離縁します。この大河は主人公の西郷吉之助と家族を比較的重視した描かれ方ですが、家族が去った後でに江戸へ行き、今度はまた別の様々な縁で結ばれる、新たな出会いがあるという展開になっています。ただその江戸行きも自腹であり、須賀は最初は家には金子がないと突っぱねます。この彼女の強さは、正助に対しても物おじせず、言うべきことをきっぱり言うという行為にもつながっています。
家族に送られて江戸へ発つ吉之助(鈴木亮平)
しかし、後で家族や友人が協力して金を調達し、最終的には須賀が手切れ金を渡すことで、辛うじて吉之助の江戸行きが叶います。ちなみに須賀が離縁したのは、吉之助は江戸に行かせるべきなのに、彼の優しさに頼ってしまって、それを果たせなくなるからというのが理由でした。江戸に行った吉之助は、有村俊斎や大山格之助と再会を果たします。しかし初めての江戸で、いきなり彼らに品川宿の磯田屋に連れて行かれ、しかも要領が悪いため、門限を破ったところを見られてしまいます。罰として庭掃除を命じられるものの、これがきっかけとなって、斉彬のお庭方となって脇差を拝領します。何やらジョン万次郎の時と同じで、斉彬が最初から目をつけていたと取れなくもありません。
そして徳川斉昭への使いを命じられた吉之助ですが、どこかで見た顔に出くわします。それは磯田屋の遊女およしが、ヒー様と呼んでいた遊び人風の人物でした。このヒー様は実はこの斉昭の息子で、一橋家の養子となっていた慶喜でした。無論慶喜自身はそれを否定します。将軍家定に子がいないため、紀州家の慶福か、それとも慶喜かという後継争いが密かに起こっていたものの、この人物はそれに巻き込まれるのをかなり嫌っていました。しかも斉彬の養女篤姫は、子のない家定への輿入れが決まるわけですが、それはお世継ぎを産むのではなく、慶喜を将軍にするための根回しを期待されてのことでした。それまでひたすら忠誠を尽くすだけだった吉之助に、物事の様々な裏の面が見えて来るようになります。
斉彬(渡辺謙、右)はお庭番を命じた吉之助のあごをひねる
この大河では所謂精忠組(その当時そう呼ばれてはいなかったようです)の活躍というよりは、吉之助の身内や糸、ひいては篤姫との出会いが多く描かれています。そのため人によっては物足りないこともあったようですが、この描き方もまた一つの方法ではあります。その手法が後の島編、またその後の糸との再婚にもつながるといえます。無論女性だけではなく、ヒー様との出会いもまたその後を左右するものでした。およしという名でここの遊女となっていたふきと出会うのみならず、遊び人の姿で磯田屋に出入りし、将軍に推挙されることを殊の外嫌う彼と知り合ったことで、吉之助はこの人物の素性を少なからず知ることになります。この磯田屋はいわば基地の役目も果たしており、吉之助はさらに橋本左内とも昵懇になりますし、後に長野主膳の手下が彼らを襲うのもここでした。
この作品では、一貫して民の為を思う吉之助という視点で描かれ、それ故斉彬の思想にも感銘を受け、主君と家臣というよりは、師とその弟子といった姿が顕著になって行きます。またそれ故に、斉彬の父斉興に食ってかかったり、まだ若さがかなり残る吉之助の姿も描かれます。この最初の江戸行きの時点では未熟で、政治的才覚もなく、周囲からの影響を受けっぱなしの吉之助ですが、後に篤姫と接することで世間の厳しさを学ぶことになります。さらに京での近衛忠煕や月照との出会いによって、その後の進むべき方向があらかた決定されるわけですが、それは一度断ち切られることになります。
ヒー様こと一橋慶喜(松田翔太、左)と磯田屋で会った吉之助
スポンサーサイト