先日ご紹介したイザドラ・クラインには手下がいます。それがアロイシャス・ガルシアとヘンダーソンなのですが、どこかで見たことがある名前だと思う方もいるでしょう。実は
ゴードン・レストレードと「生真面目な証人の冒険」 で、レストレードを部屋に招待して眠らせ、アリバイを作ろうとしたあの2人です。この時はパンを厨房からこっそり盗み出し、野良犬(多分シャーマンが後で飼うことになりソフィ)にあげていました。しかし穴に落ち、戻れなくなってしまったことから、ホームズが動き出すことになります。その2人はイザドラの忠実な子分でもあり、彼女を「姫」と呼んで、こきつかわれていました。「青い白クマの冒険」では、この2人が血相を変えて、ぬいぐるみを持っていたジェイベズ・ウィルソンを追いかけ、221Bに逃げて来たウィルソンはホームズとワトソンに匿われます。この辺り原作の1つ『三破風館』の冒頭そっくりですが、しかしなぜこの2人は、血眼になってぬいぐるみの持ち主を探していたのでしょうか。
アロイシャス・ガルシア
このぬいぐるみの最初の持ち主は、美術のノートン先生でした。ノートン先生に会ったホームズとワトソンは、イザドラが、寮のある部屋にお手製のぬいぐるみを置こうとしていたところ、それを不審に思った先生が声を掛けたことを知ります。イザドラはぬいぐるみをぶつけて逃げ出します。ノートン先生は恋人のアドラー先生の誕生日が間近ということもあり、テンプルちゃんと名付けたそのぬいぐるみをプレゼントするものの、突き返されてしまいます。そもそも生徒から没収したぬいぐるみを、そのままプレゼントにするとは如何なものかと思いますが…。ちなみに元々このぬいぐるみには長いしっぽがあったものの、それが「微妙だから」切ったと先生は話します。またイザドラがこれを置こうとしていたのは、実は221Bの前でした。テンプルちゃんは結局学校のバザーに出され、新しい持ち主のアブドラはアクメット君と名付けるものの、今度はそれが屋根から落ちて来ます。それを拾ったウィルソンは、前出のようにガルシアとヘンダーソンに追われることになります。
ヘンダーソン
(いずれもシャーロックホームズメモリアルブックより)
ウィルソンがスティーブと呼んでいるこのぬいぐるみを持って、ホームズたちはイザドラの部屋へと乗り込みます。イザドラは以前の万引きの件に懲りず、また同じことを繰り返し、ホームズとは反発し合っています。そのイザドラがぬいぐるみを執拗に探していたわけ、それはこれが白クマではなくカンガルーで、中には他人に知られたくない、大事な物が入っていたからなのです。実際ぬいぐるみのお腹にはポケットがあり、中には手紙、それもワトソンへのラブレターが入っていました。イザドラは以前、自分を恐れずに帽子を拾ってくれたワトソンに好意を抱いていたのです。ホームズは反発し合うイザドラに当てつけるかのように、手紙を声に出して読もうとするものの、イザドラは泣き出し、ワトソンはやめるように声を荒げます。その後ウィルソンはスティーブの代わりに、トマトのぬいぐるみをハドソン夫人に作ってもらいます。ワトソンは、ホームズは謎は解けても女心がわからないのが君に足りない部分だと言い、ホームズはいささかすねた態度を取ります。
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