西軍の立てこもる大垣城の近く赤坂に、東軍が布陣します。慶長5(1600)年8月25日、敵の出方に焦る石田三成は毛利の到着を待てず、総大将の身でありながら自ら佐和山に向かいます。場合によっては秀頼に出馬を依頼するつもりでした。そして27日、江戸に岐阜城陥落の知らせが届き、家康は9月1日に出立することになります。留守居役は武田信吉と、まだ幼い松平忠輝でした。また家康の側室お梶は、大殿にお供して上方に上りたい、口を利いてもらえないかとお江に頼みます。しかしお江は、ならば自分は正室である、秀忠の供をしたいと言い、自らを年増と言ったお梶が23歳と知るや、そなたが年増ならこの江は何とすると言い返します。そして三成は佐和山に戻ったら戻ったで、あれこれと策をめぐらせ、重家に大坂へ退くように命じます。それは、佐和山城が戦場になるのを考えてのことでした。
その時伊勢路を平定した知らせが三成に入り、これに喜んだ三成は、この勝利を手土産に小早川秀秋を引きずり出そうとします。しかし秀秋がいる彦根の高宮本陣では、家臣の平岡頼勝と稲葉正成が、主は病と繰り返すのみでらちがあきません。どうやら秀秋は家康に内通しているようです。一方で家康は、9月1日に3万の軍勢(実質的な戦力は6000ほど)を引き連れて江戸を発ちます。そして去就が注目される京極高次ですが、家康に付くことを決め、大津市街に火を放って籠城します。さらに同じ頃、中山道を西へ進む秀忠は、上田城主真田昌幸の策にはまり、苦戦を強いられていました。結局9日に秀忠は小諸へ退き、軍律に背いた者たちへの処分が下されます。そして大雨で遅れていた江戸からの知らせがやっと届きますが、それには1日に家康出立とありました。秀忠は何とか西へとあせります。
一方家康は東海道を通り、9月11日には清洲城に入ります。既にその前に、小早川秀秋からの内応の起請文は届いていました。しかし秀忠がまだ信州でもたついていることに、家康は腹を立てます。家康は赤坂への布陣を当面延期し、片や三成は佐和山へ戻って、家康がなかなか到着しないのに苛立っていました。しかも三成はこの戦に財産を投げ出しており、島左近から乾坤一擲の勝負をと諭されます。そして京極高次が立てこもる大津城は西軍の攻撃を受け、淀殿は妹初の身を案じて、秀頼の名で高次の名で降伏させようとするも、片桐且元からこれは家臣同士の争いと諫められます。13日、秀秋参陣の知らせが三成に届き、松尾山に布陣となります。その頃秀忠はまだ木曽路を進んでいました。そして14日、家康の馬印の金扇が赤坂に見え、吉川広家の内応が確認されます。しかしこの時、島左近は杭瀬川を渡って奇襲を仕掛け、これで東軍の兵30人の首が三成にもたらされています。
まず待っていてもらちがあかないというシーンが、2回出て来ます。1つは毛利を待ちあぐねる三成、そしてもう1つは秀忠を待つ家康です。しかしこの2人は、同じ軍を束ねる立場でありながら、取り巻く状況がまるで違います。三成は毛利の援軍頼みです。一方家康は一族郎党を率いており、しかも小早川の内応はほぼ決定済です。さらに浅井三姉妹がそれぞれの立場で登場します。お江は自分も秀忠について行きたいといい、初は自分は京極高次の妻ゆえ、危険であっても城から出ないと言います。そして淀殿は、妹のことを思って秀頼の名で高次を降伏させるように言い、且元に断られます。この場合はっきり言って、一番状況を読んでいないのは淀殿と思われます。妹可愛さの情が優先し、秀頼の名で降伏させようものなら、即座に家康に敵視されることになるのですが…無論淀殿らしいとはいえます。
それにしてもこの浅井三姉妹の様子、これがベテランの女優さんたちが演じていて、合間合間に挟まれていて、しかもそれぞれの立ち位置が明確になっているからいいのですが、これがメインだとやはりしんどいですね。あと京極高次の妻初がいい。三姉妹の中では一番マイナーな印象がありますが、この人物は結構重要な役割を果たしています。そして戦闘シーンはあまり描かれないものの、第二次上田合戦で、秀忠が真田昌幸に振り回されることになります。これに手こずったのと大雨とが、結局関ヶ原に遅れる最大の理由となってしまいました。この大河では敢えて昌幸を出していませんし、それはそれでいいのですが、常に第三者である三成や秀忠のセリフによって、昌幸という人物が語られているため、やや物足りないと感じる部分もあります。あと本多忠勝が「仁王胴」をつけています。
それから留守居役を任された武田信吉と、松平忠輝です。忠輝の方は留守居も何も、まだ子供ですから必然的に江戸に残らざるを得ず、しかも父家康からは寝小便を治せといわれる始末です。またこの回でも、狂言回しである光圀が様々なシーンで登場します。しかもアバンで、いきなり三成がやって来て、徳川家の人間にのみ敬称をつけるのはけしからんと言うのは、如何にもお遊び的な部分が多いジェームズ三木氏らしい脚本ではあります。ちなみに三成を演じている江守徹さんは、同じジェームズ三木氏脚本の『八代将軍吉宗』で、進行役の近松門左衛門を演じています。つまり同じ脚本家の大河の、新旧の進行役対決というわけです。そして秀忠役の西田さん、こちらでは吉宗役です。
スポンサーサイト