先日の続きになります。『新選組!』の場合は徳川幕府の終焉の時期でもあり、京都守護職であり松平容保のもとで活躍した新選組も、歳月と共に綻びが見え始めます。しかも鳥羽伏見の戦いをはじめ、様々な理由で隊士が次々といなくなり、最終的に近藤勇は捕らえられて処刑されます。沖田総司もその後を追うように亡くなりました。『真田丸』の場合も、関ヶ原後昌幸と信繁、その家族は九度山へ行かされますが、徳川に付いた信之は真田家の当主であり、少なくとも家が消滅することはありませんでした。
それぞれの作品への三谷さんの思いが異なって見えるのは、幕府方に取っての幕府終焉と、石田三成に加担した側に取っての江戸初期における豊臣滅亡の、背景の違いもあるように思えます。あと新選組は一組織であり、それが散り散りばらばらにならざるを得なくなったことにも、悲哀さが感じ取れます。さらに『新選組!』が初大河で、『真田丸』が2度目というのも関係しているでしょう。ちょっと本筋から逸れましたが、織豊政権が終わって徳川の天下になるのと、徳川幕府から明治維新、明治時代に至るのとでは、時代的に近いせいもあり、後者の方が重く感じられます。
元々幕末大河は、戦国大河に比べると視聴率は取れないとされています。この時代的に近いというのがその大きな原因と考えられますし、特に西国雄藩が活躍する作品は、関東での数字はよくないともいわれています。但し西日本ではそれより高めに出ることもあります。ただ先日も書きましたが、幕末はドラマの舞台となる土地が限られている上に、戦国大河ほどにはアレンジできないということもあり、フィクションとしての部分に制約が入るというのもまた否定できません。
無論アレンジされていることも結構あるのですが、しかしそれをしたらしたで、史実との比較を持ち出されるということもあるのでしょう。あと土佐や薩摩などは特に、方言がわからないという人もいます。結局ドラマの部分を膨らませられ、言葉も比較的馴染みやすい戦国大河で、数字を稼ごうとするのもわからなくはありません。しかし戦国だからといって、必ずしも著名な人物ばかりでもないし、同じ人物でも描き方によって変わって来るなど、主人公設定や描写によって数字が変動することもあります。
そのリスクを避けるための手段としては、やはり大河の大前提になっている「一年物」を再検討することでしょう。でなければPPVにする、このどちらかになるかと思います。この両方に共通するのは、視聴者目線であるということです。別にマイナーな人物でも女性主人公でも、その人物の知名度と功績に合わせて放送回数を決めるのであれば、視聴者はまだ納得します。PPVに至っては、観たくなければ解約して、視聴料を払わなければいいだけの話です。できれば一部を除いてNHKすべてをPPV化するのが理想ですが、NHKに取っては嫌な話ではあるでしょう。
話が戻りますが、大河がすべて一年物である必要はないのです。これも先日書いていますが、2クールでもいいですし、主人公によっては5回から6回程度でいい場合もあるはずです。無論この5回程度の放送であれば、最初から大河化する必要もないわけですが、ともかく初めに一年物ありきになるから、主人公によっては創作を増やす必要も出て来るわけです。この部分をまず見直し、さらに合戦シーンをどのくらい入れるかなども再検討する必要ありかと思います。とりわけ戦国大河の場合、やたらに合戦シーンを入れるのもどうかと思いますが、殆どないのも何だかわびしいものです。
この当時は合戦そのものが外交であり、領地の確保には欠かせなかったわけですから、それをショートカットしまくるのも考えものです。これは幕末でもそうでしょう。いずれの場合も、少なくとも主人公本人が参加した合戦は、わすかでも出すべきだろうなと思います。無論これも描き方によって違って来ますから、一概にどうということは言えませんが、その意味でも女性主人公の大河というのはやはり難しいのではないかと思います。
今時代劇専門チャンネルで、『国盗り物語』をやっています。但しこれは大河ではなく、テレビ東京の新春ワイド時代劇として制作された分です。斎藤道三を北大路欣也さん、織田信長を伊藤英明さん、明智光秀を渡部篤郎さんが演じています。実はこの作品は、放送時間が45分で全10回なのですが、実際のところこの位の放送回数でもいいのではとさえ思います。戦国大河と幕末大河の違いからいささか離れて申し訳ないのですが、大河の舞台や描写もさることながら、とにかくまず一年という枠を取り払ってみてはどうかと思うのですが。
スポンサーサイト