『応天の門』、久々に舞台が大学寮に戻ります。紀長谷雄が暦の写しを手に入れたと喜びますが、道真はそれを読んで何かおかしいと感じます。しかしずぶ濡れの道真、暦より何より風邪を引かない心配をすべきかと思うのですが。
************************
その暦はさる高名な陰陽師が作ったもので、今日は何を着ろとかどこへ行けとか、色々細かい指示があった。長谷雄はその通りにして素敵な帯を見つけ、思う女性にそれを贈って喜ばれたと嬉しがる。しかし道真は、本来暦は帝の公務や、祭の日程を決めるものであり、それも陰陽寮の技術者が作ったものであって、ここまでうるさく指示する物ではないはずだと訝しむ。
そこへ橘広相が来て、道真は父からの預かり物を渡す。道真は大学寮は久々だったが、都言道(良香)から良家の子息は気まぐれに来るだけで、ちやほやされていいのうと嫌味を言われる。道真は長谷雄が、ある人物に暦の写しを貰ったと言っていた件で、その人物に合わせた暦ならお前には何の関係もないと言いながらくしゃみをする。
その頃在原業平は、さる中納言の妻を訪れて逢瀬を楽しんでいた。しかしその女の髪飾りが盗まれたことがわかり、暦に寺で祈れと言われていたのに、それをやらなかったせいだと自分を責める。左近衛権少将で検非違使を束ねる業平は、最近急に盗難が増えたことに驚く。しかも高価そうな物ばかりなくなっており、さらに出頭して来た者たちは皆善人だった。
業平は中納言家の事情も話そうとするが、密会が公文書に記されてはまずいと思って適当に言葉を濁す。部下の検非違使たちは、何か訳ありであることを悟る。その後業平は牛車で菅原家に向かう途中、長谷雄を見かける。長谷雄は車に同乗し、付き合っている女性の家で、壺と高価そうな物だけが盗まれていたこと、そのことを道真に相談に行く途中であると話す。
失せ物なら、検非違使に届けるように業平は長谷雄に言うが、その時あることを思い出し、そのまま内裏へ引き返す。そして盗難に遭った者たちを再度出頭させ、暦を持っている者は持参するように言う。皆は不思議に思いつつ暦を見せる。結局長谷雄は徒歩で菅原邸へ向かい、風邪で伏せている道真に驚きつつも暦を渡す。道真も業平も、暦がどこか怪しいと睨んでいた。
************************
都で新しい暦が流行り始めますが、それには何をしろこれはいけないと、やけに事細かな指示が書かれていました。それと呼応するかのように、盗難が頻発するようになります。久々に大学寮にやって来た道真は、都言道に嫌味を言われつつも、長谷雄が見せた暦に違和感を覚え、暦にすっかり嵌ってしまている長谷雄を諫めます。一方業平は、密会中の家で盗みが起きた件に関しては、遠回しな言い方をするものの、部下たちはそれに感づいていました。
一連の盗難事件では、犯人は高価な物ばかりを狙っていました。しかも盗まれたのは善良な人々であり、業平が密会していた中納言の妻もそのような人物でした。しかし逢瀬にかけては、流石に業平は慣れたものです。ともあれ、ずぶ濡れになったせいで風邪を引いた道真も業平も、この暦と盗難に関係ありと感づいたようです。それにしてもこの2つは、結局のところどのような関係があったのでしょうか。
(2019年4月28日一部修正)
スポンサーサイト