第10回の放送の中で、手塚良仙は伊武谷万二郎にこう言います。
「だからお前は、惚れた女を幸せにしてやれないんだ」
万二郎が、まず最初に想った女性は、寺の娘おせきでした。しかも、良仙が適塾に行き、今度江戸に戻るまで、彼女には手を出さないという約束を律義に破り、良仙に、だからお前は堅物なんだといわれてしまいます。良仙にしてみれば、自分が戻ってきたらいつの間にか2人は夫婦になっていた、がっかりするものも、お前もなかなかやるなと万二郎を誘って、一杯やるつもりだったのでしょう。しかし、あまりにも予想通り過ぎて、かえって面白くないわけです。
もっとも万二郎にしてみれば、約束を守って何が悪いといいたいところなのでしょうが。その後万二郎は、おせきに告白をするものの、相変わらず段取りが悪く、良仙に仲介してもらうことになります。しかしその後、万二郎が警護を務めるヒュースケンから、手籠めにされかけたおせきは尼寺に入り、万二郎の手の届かない存在となります。
次にお品です。安政地震の折に芝浜に誘導した万二郎は、土地のならず者が避難して来た町人を脅しているのを知り、彼らを斬ってしまいます。そのうちの一人が、商家の娘お品で、助けてもらったお礼にと着物を縫って持って来ます。どうやら万二郎に気があるようですが、商家の娘と結婚させるわけには行かないと、母のおとねに言われます。
お品は武士の身分になるべく、ある侍を頼って家系図を手に入れるわけですが、その侍とは、万二郎の仇敵である陶兵衛でした。陶兵衛に乱暴されたお品は、子供と共に長屋で貧乏暮らしを強いられ、しかも夫の陶兵衛は、思い出したように母子の元に戻る程度でした。ある日子供に種痘を受けさせたのをきっかけに、万二郎に再会することになります。しかし、万二郎は陶兵衛の妻としてのみ接しており、彼女があのお品だとわかるのは、陶兵衛を斬った後でした。
その次に綾です。彼女は眞忠組頭領の楠音次郎の妹で、当初は万二郎を兄の仇と憎んでいました。しかし、兄が残した借金のかたに岡場所に遊女として売り飛ばされ、それを知った万二郎は、綾を他の男に渡したくないという一心から、慣れない遊郭通いを続けます。身請けには100両必要である、しかしどう工面するか迷っていた矢先、取引先の異人を救ってくれた万二郎の元に、材木問屋井筒屋が金を持って来ますが、万二郎は受け取りません。
そこで出て来たのが、良仙の前出のセリフです。万二郎と違って立ち回りのうまい良仙は、薬代の前払いということでその金子をもらい、これで身請けをしろと万二郎に渡します。おせき、お品と違って、綾をやっと自分の手で幸せにしてやれそうになった矢先、綾は頭部強打で寝たきりの状態になってしまいます。
しかも綾は、世間一般では楠音次郎の妹で、幕府から見れば敵であり、賊ともいうべき存在です。そんな彼女を家にかくまい、世話を続ける万二郎に、世間はどう反応するのでしょうか。また、夫の仇の妹でもある綾に、おとねはどう接するのでしょうか。
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