久々に『応天の門』です。多美子の入内が目前で、藤原良房が何か企んでいるようです。しかしそれとは別に、思わぬところから邪魔が入るのですが、多美子は無事に父の屋敷に行くことが出来るのでしょうか。
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多美子の入内に伴い、藤原良房が民に粥を振舞う。しかし常行はそれを訝しく思う。実はこれは基経の策で、炊き出しによって入内の話を広げ、さらに多くの人が集まることで、怪しい者を紛れ込ませやすくしたのである。多美子の警護をどうすべきかで、在原業平は道真に相談する。道真は、多美子の食事に毒を盛った深雪と、藁人形を打ち付けた者が別人なら、他にも多美子を狙う者がいると考えていいと忠告する。
白梅は女房頭の吉野に協力してもらうことを提案する。吉野は、白梅が高子の命を受けて多美子に接近したことを知り驚くが、多美子が藤原の家に生まれながら、恐ろしさや醜さと無縁に育って来たことを話し、白梅に多美子のことを一任する。多美子は写経も完成し、皆の幸せや白梅の幸せを願う。そんな多美子に白梅は、かつて仕えていた玉虫姫を思い出す。
その頃伴善男は、昭姫の店に押し掛けて狼藉を働いた豊城を叱りつけていた。好き勝手に暴れ回ることで、痛くもない腹を探られることになると善男は言い、さらに、魂鎮めの祭りで矢を放ったのは豊城であると断言する。そしていよいよ、多美子の入内の日が近づき、母親の実家から父良相の屋敷に移ることになった。
白梅はしきたりであると言って、牛車の中から鬼のいる外を見てはならないと多美子に言う。入内の前に、もう一目街中を見ておきたい多美子は不満げだったが、白梅の言葉に従う。そして多美子の経文、そして寄進の品を載せた牛車が動き出した。一方多美子の牛車の方は、業平自ら警護につくというものものしさで、周囲からは何やら噂話が聞こえてくる。経文を乗せた牛車はそのまま阿弥陀堂へと進んだ。
一方多美子の牛車の方は、業平が常行に、入内前の姫の車が他の車とすれ違うのは、縁起が悪いから夜間にと出発するよう説得していた。常行は百鬼夜行を案じていた。しかしそこで業平が手の内を晒し、常行もそれに納得する。無論これは、敵を欺くための罠であった。炊き出しを行うこと人気のない町に、敢えて入内前の姫を乗せた牛車を夜中に走らせる方法を採ったのである。
そして多美子の牛車は奇妙な黒衣の集団と鉢合わせする。しかし百鬼夜行ではないことを道真から聞かされていた業平、さらに常行も相手とにらみ合う。その時屋根の上から奇妙な臭いの液が降って来た。それは屋根の上にいた豊城がまき散らした、腐った酒と油だった。さらに豊城は火を放ち、一同は混乱して牛車が勝手に走り出してしまう。
牛車はしばらく走って横転した。豊城はそれに近づき、中の人物を引っ張り出そうとする。豊城はなおも乱暴に、多美子と思われるその人物を引きずり出そうとするが、その時大きな声が聞こえる。
「人違いです!」
牛車に乗っていたのは多美子ではなく、どういうわけか、以前昭姫の店で出会った紀長谷雄だった。
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粥を振舞うことを思いついたのは、やはりというか藤原基経でした。業平は多美子の異母兄常行に、自分の策を明かします。何せ基経といえば、かつて百鬼夜行と偽って、黒衣の集団を使ってあるものを運ばせた人物であり、それを常行も知っていたことが、この場合幸いしたといえます。それとは別に、昭姫の店で小藤に絡み、叔父の善男から叱られた豊城ですが、性懲りもなく悪さをしているようです。
そして玉虫姫については、こちらにリンクを貼っておきます。
白梅がかつて仕えていた謎の姫君玉虫姫は、実は幼くして亡くなっていました。そして白梅がかつての自分の主を重ね合わせた多美子は、無事に入内の運びとなります。
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