またも『ガリレオ』関連です。ガリレオには多分に和製ホームズ的なところがあると前にも書きました。ちなみに最初のシリーズは2007年に放送されて、湯川の変人ぶりがかなりの反響を呼んだようです。2011年にNHKでBBC『シャーロック』が放送された時、イメージがいくらかだぶった人もいるでしょう。また、その前に放送されたグラナダ版にも、奇人と呼ぶにふさわしい振る舞いが登場します。この「系譜」は少年向けに多少アレンジされているとはいえ、パペット版にも確実に受け継がれています。
ただしガリレオは、あくまでも日本向けにローカライズされたホームズ的存在であるため、もちろん本家ホームズのような奇人変人ぶりは見られません。元々彼は『緋色の研究』でいう「諮問探偵」(延原謙訳)ではないし、もちろんワトソン的な人物と同居しているわけでもありません。従って、彼のどこか扱いにくい部分が出やすい同居空間(221B)や、ワトソンまたはマイクロフトのとのプライベートな関係の中でなされるやり取り、及びそれに関連した変人ぶりは見られません。
ドラマで見る湯川学の行動は、すべて研究室であるとか警察であるとか、あるいは被害者や容疑者と関わっている時間や空間でなされるものに限られています。従って、私的空間での彼の行動、あるいは変人ぶりについてはこちらは窺い知ることは出来ません。そうはいっても普段の無愛想かつ理屈っぽい物言いに加え、研究室で料理してみたり、あるいは警察の許可なしに被害者宅を捜査してみたり、いささか常軌を逸した人物であることも確かです。また、剥げかけたマグカップに薄めのインスタントコーヒーを作って飲む有様は、身だしなみには多少気を使っているように見えるにもかかわらず、こういった点に如何にも無頓着な人物であることを窺わせます。
原作では草薙俊平とホームズ-ワトソン的なラインを形成していますが、ドラマでは女性刑事が絡むため、これも本来のホームズ物とは趣が異なります。とはいえ、彼女との微妙な距離が、また独特の雰囲気を添えていることもまた否定は出来ません。探偵ではなく、探偵的行動を取る科学者と警察の組み合わせというのもまた、日本的で気に入っています。また、第1シリーズの監察医の城ノ内先生も面白いのですが、彼女については別に書きたいと思います。
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